対米戦、準備せよ!

湖灯

文字の大きさ
53 / 56
★第2次ノモンハン事件★

【国際社会から見た日本】

しおりを挟む
 陛下が陸海軍部にいかなる書簡をお渡しになったのかははかる由もないが、大本営が発表した事件の報告に対して異を唱える者も居なかった。

 大戦果を上げた陸軍の人たちには気の毒なことをしたとは思うが、これも平和な日本の未来を作るためには仕方がないと思っていたところ、彼らの努力は意外な形で実を結ぶ事となる。

 それは海外の評価。



 事件後数日が経過したころから、植田大将が最前線に送った各国のジャーナリストたちが本国に持ち帰った情報が世界を大きく動かすことになった。

 彼らは、冷静な第三者の視点で、この事件を正確に捉えて記事にしたばかりでなく、彼らの国の政治や世論も大きく動かした。



 国境線を越えて戦争を仕掛けてきたのが、ソビエト軍7万を主力とする総勢8万人にも及ぶ戦力であったという事実。

 更にソビエトとモンゴルが主張するような、偶発的な要因で起こった国境紛争ではなく8万人という動員勢力だけでなく、その装備や投入された戦車や航空機の数からして明らかに計画された侵略行為であることが間違いのない事実であること。



 これに対して日本軍は当初、石原中将率いるノモンハン要塞と第12師団合わせて1万2千の兵で対応するしかなく、翌日に第7師団が到着しても、たった2万の兵で戦わざるを得ない状況で日が経つごとに前線は後退し1週間後にはノモンハン要塞から目と鼻の先までの距離まで押されていたこと。

 最後に日本の最新兵器が間に合い、戦局を逆転することができたが、それが無ければノモンハン一帯がソビエトとモンゴルの軍によって蹂躪されていたであろうこと。



 日本軍は国際法に則ってフェアに戦い、彼らの軍は訓練も行き届き秩序のある行動をした。

 そして新兵器の投入を待ち、敵の全勢力がハルハ河東岸の満州領内に入った所で一気に攻勢に出たことが今回の勝因だったこと。

 日本の工業力は素晴らしく、かつて見たこともない近代的な兵器を投入してソビエトを中心とする越境部隊に大打撃を与えたのち、いままで苦戦していたのが嘘のように地上で応戦していた部隊は勇猛果敢に敵を取り囲み一人も取り逃がすことなく自分たちより多い勢力を瞬く間に降伏させた。



 更に特筆すべきことは、この戦闘において最初から最後まで、日本軍は満州国の防衛に努めて一歩たりともモンゴル領内に侵攻をしなかったこと。

 彼ら日本軍は平和を維持するために戦ったこと、そして日本政府もこの圧倒的な戦果を国威高揚に利用することもなく、国民に平和の尊さを訴えかけるよう報道されたことが伝えられた。



 日清・日露・第1次世界大戦、そして第2次世界大戦を通じて、我が国軍の報道は “自画自賛” 的な物で、海外から高評価を受けたのはバルチック艦隊に勝利した時くらいなものだった。

 ただ、それも戦争に勝利したという事に過ぎない。



 国際社会は当事国である日本よりも機敏に動いた。

 国際連盟では緊急会議が召集され、モンゴルとソビエトに対して非難決議を出し、経済制裁を課すことが採択された。



 ソビエトは一貫して、モンゴルからの要請で軍を派遣したに過ぎないとの主張を繰り返すのみで自らの責任を回避した。

 このためモンゴルには、ソビエト軍の手を借りて越境攻撃を仕掛けたことに対して重大な責任を負うとして同国内からのソビエト軍の排除と、国際連盟平和維持軍の駐屯を受け入れる形となった。

 手を貸しただけと主張した結果、ソビエトはこの決定に異議を唱えることもできなくなりモンゴル国内から全ての軍を撤収させた。



 日本政府からもモンゴル政府ならびにソビエト連邦に対して今回の事件における謝罪と賠償金の要求が行われ、モンゴルはその要求を仕方なく呑んだが、ソビエト政府は謝罪と賠償金に対して難色を示した挙句、盗人猛々しく日本に対して捕虜となった3万人の即時返還を要求してきたが今回の戦闘の被害地域の修復が終わるまで返還には応じかねることとして要求を突っぱね、世界もそれを支持した。



 柏原は嬉しかった。

 前史では完全に満州を我が物顔に占領している悪者としか見られていなかった日本が、このように世界から良心的な目で見守られていること。

 それに石原中将が戦が厳しくなることを承知したうえで、あえて越境攻撃を行わなかったこと。

 そして日本政府も国民も軍部までもが、自分の考えた国威高揚のためではない大本営発表を受け入れてくれたこと。



 日本は少しずつ、良い方向に変わってくれている!
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家
歴史・時代
 榎本艦隊北上せず。  それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。  生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。  また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。  そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。  土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。  そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。 (「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です) 

処理中です...