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卒業式前日。
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学園へ何時もより遅く着いたセルビィは、馬車を降りると直ぐに第一生徒会室へと向かった。既にアラン達が来ている時間帯だ。
卒業式を明日に控え、授業は何もない。会場の準備で第二生徒会は大わらわだ。卒業生は休みで、明日の卒業の準備とその後の舞踏会の準備に追われている。下級生の二年や一年は各自自習と成っている。
ザワザワとざわめく廊下を渡り、第一生徒会の扉を叩く。
「セルビィです。」
「す、少し待って……。」
中からフローネの声がした。
少しすると髪を直しながらフローネが、扉を開けた。
厭な空気が漂う中、セルビィはソファに向かった。開いた窓からの爽やかな風だけが、厭な空気を流してくれるようだった。
「おはよう御座います、アラン王太子殿下。」
セルビィは恭しく、頭を垂れた。
「今朝は遅かったな、セルビィ。」
「申し訳ありません。」
セルビィは震える体を抱き締めた。
「セルビィさま~? 」
セルビィは数枚の帳簿をアランに差し出した。
「これを……。」
帳簿を持つ手は震えている。
アランは気づいた様に周りの四公子息に目をやった。子息達も静かに頷く。
「遅く成りました、アラン王太子殿下。これをお納め下さい。」
セルビィは目をつぶって、帳簿をアランに差し出した。
「これが、横領の証拠か。」
ゴクリと、アランは唾を飲んだ。
「はい……。」
体を震わせながら消え入りそうな声を出す、セルビィ。
アランが帳簿を受け取るとセルビィはその場に泣き崩れた。
「うわぁぁぁぁ……僕は、僕は、父様を裏切ってしまった。」
「泣かないでセルビィさま~。」
フローネが、セルビィに胸を押し付けて縋り付く。
「裏切りではない、これは正義の行いだ。」
レイモンドが、セルビィに寄り添い肩に手を置いた。
「レイモンド様。」
セルビィは目に涙を溜めて、上目遣いで二人を見る。
「正義の行いに、神は慈悲を掛けて下さるでしょう セルビィ。」
「そうです。横領した金額を返却すれば、罪を軽減することは出来ます。」
「シモン様、エリック様。」
シモンの次にエリックが話す。
「そうよ、セルビィさま。アラン様がきっと、良いように取り繕って下さるわ。」
「フローネ様。」
セルビィは涙をぽろぽろと、こぼしてアランを見詰めた。
「アラン王太子殿下……。」
アランは安心させる様に微笑む。
「安心しろ、セルビィ。セラム殿は私にとっても、義父上となる者。無下にはしない。」
「父上? 」
セルビィは首を傾げた。
「私の側妃となる、セルビアの父親であるのだからな。」
アランは鼻息荒く言った。
「側、妃? 」
セルビィは目を見開いてアランを見る。
「そうよ、セルビィさま。セルビア様はアラン様の側妃と成るのよ。」
「しかし、姉様はフローネ様を虐めて……。」
セルビィは、震えながら俯いた。
「私は気にしてないわ。セルビア様に嫉妬されるのは仕方がない事だもの。」
フローネはセルビィを抱き締めた。
セルビィは、イラッとした。
「セルビア様もアランさまを愛して折られるのだから、フローネもセルビア様の気持ちがよく分かるの。」
フローネはセルビィを胸に抱き締めながらアランを上目遣い見る。
「アランさま。セルビア様も愛してあげてね。」
可愛いらしく、小首を傾げて微笑む。
「もちろんだ、フローネ程は愛せぬが。セルビアも可愛がってやろう。」
アランはセルビアを可愛いがるのを想像して下雛笑い声をあげる。
「そうだな。リリアナは体が『アレ』だが、可愛いからな。」
レイモンドも、下雛笑い声を上げた。
「テレジアにも、愛を注ぐことはやぶさかでもありません。」
シモンも含み笑いをしている。
「子供は望めませんが、アイリーンは正妻と成るので堪能させて貰います。」
エリックは眼鏡を掛け直した。
「もう~。みなさまのえっち~。ちゃんと愛して、あげて下さい。可哀想です~。」
優越感が籠もった声を出すフローネ。
セルビィは俯いたまま、歯を噛みしめた。体が怒りで震える。
(阿呆だとは思ってましたが、ゲスでしたか。)
「大丈夫よ、セルビィさま。棲み分けをすれば良いのよ。私が表向きの事をして、セルビア様が裏の事をすれば。私達、上手くやって行けると思うの。」
セルビィの頬を掴み顔を上げさせる。セルビィの黒い瞳に微笑む。
セルビィは女性の厭らしさを知った。
吐き気がするほどの、厭らしさを。
「それは良い。セルビアには裏の仕事をして貰おう。」
「黒に近い者が、裏の仕事をするのは理に適ってます。」
「神の教えです。」
「俺達を支える仕事だな。」
吐き気がするほどの、王族の血筋の傲慢さ。歪んだ、神の教え。
領地で暮らしていたセルビィが、感じていたもの以上の不快感。
(姉様達は、これに耐えていたんですね。父様も……。)
セルビィは食い込む程、拳を握った。
(でも、明日で終わりです。)
セルビィは本当の涙を流した。自分に対する悔し涙。
(僕が、もっと大人だったら。)
もっと早く、姉を、父を、豪の皆を救えた筈だと。
「有り難う御座います。皆様。」
セルビィは微笑む。上辺だけの微笑み。その瞳の奥に黒い炎をやどして。
卒業式を明日に控え、授業は何もない。会場の準備で第二生徒会は大わらわだ。卒業生は休みで、明日の卒業の準備とその後の舞踏会の準備に追われている。下級生の二年や一年は各自自習と成っている。
ザワザワとざわめく廊下を渡り、第一生徒会の扉を叩く。
「セルビィです。」
「す、少し待って……。」
中からフローネの声がした。
少しすると髪を直しながらフローネが、扉を開けた。
厭な空気が漂う中、セルビィはソファに向かった。開いた窓からの爽やかな風だけが、厭な空気を流してくれるようだった。
「おはよう御座います、アラン王太子殿下。」
セルビィは恭しく、頭を垂れた。
「今朝は遅かったな、セルビィ。」
「申し訳ありません。」
セルビィは震える体を抱き締めた。
「セルビィさま~? 」
セルビィは数枚の帳簿をアランに差し出した。
「これを……。」
帳簿を持つ手は震えている。
アランは気づいた様に周りの四公子息に目をやった。子息達も静かに頷く。
「遅く成りました、アラン王太子殿下。これをお納め下さい。」
セルビィは目をつぶって、帳簿をアランに差し出した。
「これが、横領の証拠か。」
ゴクリと、アランは唾を飲んだ。
「はい……。」
体を震わせながら消え入りそうな声を出す、セルビィ。
アランが帳簿を受け取るとセルビィはその場に泣き崩れた。
「うわぁぁぁぁ……僕は、僕は、父様を裏切ってしまった。」
「泣かないでセルビィさま~。」
フローネが、セルビィに胸を押し付けて縋り付く。
「裏切りではない、これは正義の行いだ。」
レイモンドが、セルビィに寄り添い肩に手を置いた。
「レイモンド様。」
セルビィは目に涙を溜めて、上目遣いで二人を見る。
「正義の行いに、神は慈悲を掛けて下さるでしょう セルビィ。」
「そうです。横領した金額を返却すれば、罪を軽減することは出来ます。」
「シモン様、エリック様。」
シモンの次にエリックが話す。
「そうよ、セルビィさま。アラン様がきっと、良いように取り繕って下さるわ。」
「フローネ様。」
セルビィは涙をぽろぽろと、こぼしてアランを見詰めた。
「アラン王太子殿下……。」
アランは安心させる様に微笑む。
「安心しろ、セルビィ。セラム殿は私にとっても、義父上となる者。無下にはしない。」
「父上? 」
セルビィは首を傾げた。
「私の側妃となる、セルビアの父親であるのだからな。」
アランは鼻息荒く言った。
「側、妃? 」
セルビィは目を見開いてアランを見る。
「そうよ、セルビィさま。セルビア様はアラン様の側妃と成るのよ。」
「しかし、姉様はフローネ様を虐めて……。」
セルビィは、震えながら俯いた。
「私は気にしてないわ。セルビア様に嫉妬されるのは仕方がない事だもの。」
フローネはセルビィを抱き締めた。
セルビィは、イラッとした。
「セルビア様もアランさまを愛して折られるのだから、フローネもセルビア様の気持ちがよく分かるの。」
フローネはセルビィを胸に抱き締めながらアランを上目遣い見る。
「アランさま。セルビア様も愛してあげてね。」
可愛いらしく、小首を傾げて微笑む。
「もちろんだ、フローネ程は愛せぬが。セルビアも可愛がってやろう。」
アランはセルビアを可愛いがるのを想像して下雛笑い声をあげる。
「そうだな。リリアナは体が『アレ』だが、可愛いからな。」
レイモンドも、下雛笑い声を上げた。
「テレジアにも、愛を注ぐことはやぶさかでもありません。」
シモンも含み笑いをしている。
「子供は望めませんが、アイリーンは正妻と成るので堪能させて貰います。」
エリックは眼鏡を掛け直した。
「もう~。みなさまのえっち~。ちゃんと愛して、あげて下さい。可哀想です~。」
優越感が籠もった声を出すフローネ。
セルビィは俯いたまま、歯を噛みしめた。体が怒りで震える。
(阿呆だとは思ってましたが、ゲスでしたか。)
「大丈夫よ、セルビィさま。棲み分けをすれば良いのよ。私が表向きの事をして、セルビア様が裏の事をすれば。私達、上手くやって行けると思うの。」
セルビィの頬を掴み顔を上げさせる。セルビィの黒い瞳に微笑む。
セルビィは女性の厭らしさを知った。
吐き気がするほどの、厭らしさを。
「それは良い。セルビアには裏の仕事をして貰おう。」
「黒に近い者が、裏の仕事をするのは理に適ってます。」
「神の教えです。」
「俺達を支える仕事だな。」
吐き気がするほどの、王族の血筋の傲慢さ。歪んだ、神の教え。
領地で暮らしていたセルビィが、感じていたもの以上の不快感。
(姉様達は、これに耐えていたんですね。父様も……。)
セルビィは食い込む程、拳を握った。
(でも、明日で終わりです。)
セルビィは本当の涙を流した。自分に対する悔し涙。
(僕が、もっと大人だったら。)
もっと早く、姉を、父を、豪の皆を救えた筈だと。
「有り難う御座います。皆様。」
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