悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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自問自答する聖教長、シアン。

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ドドドドッ、心臓の音が頭に響き渡る。緊張のあまり吐き気がする。
砦の中では割と豪華な部屋に入れられ、簡易的に置かれた応接セットのソファーに座り戦の始まる迄閉じ込められていた。

(何故、こうなった? )
彼は自問自答する。

(何がいけなかった? )
鎧の上から膝まであるサーコートの戦支度をして彼は、シアン・アンポータン公爵は自答する。

(今迄総て上手く行っていた。)
王位を狙える公爵の生まれだった、だが王位を求めたことはない。

(王など何時でもすげ替えられる、駒のようなものだ。)
現に彼は今回の幕引きをするために、王の首を差し出すつもりだった。だが、王は逃げた。

(おのれ、今迄散々いい思いをさせてやったのはこんな時の為の王ではないのか。)
近衛騎士を付けて部屋に閉じ込めていたはずなのに、王は逃げ出した。今、何処でどうしているのかは分からない。

(どいつもこいつも役立たずめ。)
ふと、宰相のエリオットの事が頭に浮かんだ。何時も王の散財に頭を抱えて走り回っていた。何度も王とシアンに金がないと文句を言っていた。

(神の神殿を作るのを、王の散財と一緒にしてほしくはない。皆喜んで寄付をするはずだ。)
神殿に奉納された物は総ては教会の物だと、シアンは僅かな資金も出すことはなかった。神の名の下に国が反対することは憚れ、神殿を作るしかない。

(私の言葉は、神の言葉と然りですから。)
苦渋の顔で折れるしかない、宰相エリオット。

(あのような顔をしなくても、資金なら民からまた組み上げればいいのです。)
そこで、レイズの怒りの顔が浮かんだ。勝手に近衛騎士を動かした王に食って掛かった顔を。軍事総長の指揮下にない、王直属の近衛騎士と教会を守る聖騎士。王とシアンはレイズに何も言わずに騎士達を動かしていた。

(布教の為に活動は神の意志です、何が悪いのですか。)
彼らは布教という名の侵略をしていた。意に染まない者達を異教徒として神の名の下に葬っていた。レイズが送った軍隊が遅ければ、神の名の下に虐殺が行われていただろう。

(信者が増え領土が増えれば、民から税金が増えエリオットも楽になるでしょうに。)
だが、経済と治安の平安を保つために、優秀な者を王都から派遣しなくてはならなくなる。そうなれば、王都には名ばかりの騎士や政務者が増える。地位と名誉と金に群がる使えない貴族達、王と聖教長に媚び諂う者達。二人は何時も頭を抱えていた。

(本当に無能で役に立たづが、おまけに直に死んで。その為に私がこんなめに…… )
シアンは総てを人の所為にして、苛つき歯ぎしりをした。

(シモン達もだ、とっとと令嬢を自分の物にしておけばよいものを……… )
息子達の事を考えると余計に苛つきが増す。醜聞が悪いと婚約者として、正妃正妻として迎え入れろと宰相と軍事総長は頑として譲らなかった。

(正妃だろうと側妃だろうと、人質には変わりないであろうに。)
人質として囲われればどんな目に合わされるか、エリオットとレイズはそれを危惧した。其れはある女性を守れなかった、懺悔の意味もあったのかも知れない。

(人質として、私が神の名の下に教育をしていれば。こんなことには、ならなかったに違いない。)
人質を囲って、逃げ出される事など許す筈はなかった。今もなお、公爵の地位と神の恩恵を受けていた筈だとシアンは思っていた。

『僕は、人質にはなりませんよ。』
なんの感情もない瞳と声を向けるセルビィの顔が浮かぶ。

(あの時、あの餓鬼さえ逃さなければ。)
あの時、まだ自分の手の中にあった小鳥。その場で羽をもぎ取り囲ってしまえばよかったと、シアンは後悔するのであった。

今はセルビィが多くの者を盾として、逆にシアン追い込み囲い込んでいる。出たこともない戦に、自分の命を人質に取り行かされかけているのだ。

(帝国との戦に勝てるのか? だが出なければ、王アイアンの変わりに首を取られる。)
自分に利用する価値がなくなれば、命はないだろう。こればかりは神の後ろ盾を持ってもどうにもならない、神が助けを出してくれる事はない。今迄神の意と動かして来たのは自分自身なのだから。

(いったい何処で間違った? )
刻々と時間が流れる中、シアンは震える体を押さえながら自問自答する。自分の命を永らえるためには、価値ある者と示さねばならない。其れにはこの戦に勝つ必要がある。
 
(だが勝てるのか? 相手は帝国だぞ。)
数からしても勝てる見込みは考えられなかった。そしてこの戦に、セラム達はいない。

「クソを!! 何がいけなかったのだ!! 」
目の前にあるテーブルの上に置かれた、お茶のセットを払い除けた。ガシャンガシャンと、カッブやポットが床に落ちて割れる音が響いた。

「おはようございます、シアン様。激励に参りました。」
明るい声を発しながら、セルビィが大きく扉を開けた。もちろん後ろに、ナルト達を従えて。

「今日は戦日和です。ご機嫌は如何ですか? 」
満面の笑顔をセルビィはシアンに向ける。







 





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