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11.七不思議編
54正体ショータイム ③
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***
以前来た時と同じように、佐藤ミルクは犬小屋ではなく屋内住まいのようだった。それなりに立派な一軒家で、しかし地震が来たらちょっと心もとなさそうな、年季の入った物件である。
せつなは表札のかかった石塀から玄関をのぞき込み、「うーん」とうなった。はたから見ると、下見に来た素人泥棒のようでもある。
「そっか、庭で飼っているわけじゃなかったのね……接触したかったのに」
「何でチワワと接触する必要があるんだよ」
「さっき話したでしょ。ミストが……」
「ユキナ、こっちこっち」
氷架璃も一緒になってのぞき込んでいると、ミストが背後、塀の角から手招きしていた。呼ばれるまま、ぐるりと側面に回りこむが、何もない。
「どうしたのよ、ミスト」
「ここからのぞいてみて」
そびえたつ石塀は、一番身長の高い氷架璃が背伸びしても中を見ることを許さない。
のぞき穴でもあるのか、と塀をまじまじ見つめ始めた雷奈たちの隣で、ミストは猫の跳躍力で一メートルほど跳躍した。
「ほら、あそこの窓際」
どれどれ、とせつなも跳ぶ。
「あら、本当。日向ぼっこしてるわ」
「オイお前らぁ! 周りも確認せずに超人的な身体能力を発揮するんじゃないよ!」
「ごめんあそばせー」
この上なく形骸的な謝罪を口にした後、せつなは「で」とミストに向き直る。
「いけそう? ガラス戸越しだけど」
「ちょっと手間取るかもだけど、行ってみる」
ミストは大きくジャンプすると同時に長毛の猫の姿に戻り、塀の上に着地した。
「だから周りも確認せずに超人的な能力を発揮するんじゃないよ!」
「ごっめーん」
中身すっからかんの謝罪を口にすると、ミストはぴょんと庭の中へ飛び降りてしまった。中の様子は、雷奈たちにはわからない。夜の光丘中学校に忍び込んだ時のように、猫力を解放すればミストと同じ芸当ができるが、いつ人が通ってもおかしくない時間帯のうえ、佐藤某さんに通報されては一大事である。
話から推測されるに、家屋のこの方向は、ガラス戸で庭に面しているらしい。その窓際でチワワのミルクが日向ぼっこをしているそうだ。そこに、ミストがガラス戸越しに接触しに行ったということである。
まもなくして、ガラス越しにもかかわらず、激しい吠え声が聞こえてきた。
「キャンキャン言っとるけど」
「寝てるかと思ったら、起きてたのね。ミストを警戒してるんだわ」
「そりゃあ、熊も逃げるフィライン・エデンのにゃんこ様だもんなぁ」
「それより、飼い主さんがやってきたら、追い払われてしまうんじゃないかしら……」
飼い主からすれば、愛犬に野良猫がちょっかいを出してきた、という絵になるのだろう。戸が閉まっているなら、危害を加えられる心配はないことはわかっているだろうが、視線も合わないよう奥に引っ込められてしまうかもしれない。
「やれやれ、ちょっと手助けに行こうかしらね」
せつなも大ジャンプに次いで主体へ変化、塀の上に軽やかに降り立った。
「だから! 周りも確認せずに! 超人的な能りょ……最後まで聞けぇぇ!」
振り返りもせず庭へと消えたせつなに、氷架璃は火を吐かんばかりに怒鳴り散らす。その声が佐藤家の家人に聞こえるほうがやっかいなので、とりあえず雷奈と芽華実はその口をふさいでおいた。
むぐむぐとうなっていた氷架璃だが、やがて「む?」と首をかしげる。
「……おとなしくなったな?」
「氷架璃がっちゃか?」
「違わい。チワワのミルク氏がだよ」
「……本当ね、鳴き声がしなくなった」
けだし、せつなが何かしたのだろう。
内部の様子がわからずやきもきしていると、突然庭の松の木が揺れ、かと思えばそこから塀の上へと白猫が飛び上がってきた。
「せつな」
「やっほー」
「ミルクちゃん、急におとなしくなったっちゃけど……何かしたと?」
「別に。ただ近づいて目を合わせただけよ。そしたら気絶した」
「……昨日の今日で災難ね……」
芽華実が胸に手を当てて同情のため息を漏らしていると、再び松の木が揺れ、今度は薄い茶色のふさふさした猫が戻ってきた。
「ミスト、どうだった?」
塀の外で黒髪の少女の姿になったせつなが、同じく人間姿に変化するミストに尋ねる。ミストは顔にかかった茶髪をかきあげながら笑った。
「いやー、参ったね」
口の端に戦慄を浮かべて。
「……出ちゃった。源子。陽性だったよ」
その言葉が意味するところを察して、一同は言葉を忘れて互いに顔を見合わせた。雷奈は口を半開きにし、氷架璃は緊張に唇を舌で湿らせる。口元に手を当てた芽華実の視線を受け、せつなは「んー」とひきつった笑みで声を漏らした。
「アワとかフーとか、こっちによく来る誰かが、昨日あの犬に何らかの術を……なわけないわよね、あはは」
乾いた笑いが、地面にばらまかれた砂利のように落ちて、小さく跳ねて転がる。
そもそも、猫術に動物の行動を制御するものはないはずだ。それができるとしたら、心当たりは一つだけ。
雷奈たちは直接対峙したわけではない。だが、それは確かに希兵隊の隊長を降した。
強敵が、この光丘の町で再び動き出している。
視界に映らないだけで、すぐそばに潜んでいるかもしれない脅威に、身じろぎすることさえはばかられる緊張が彼女らの体を支配した。
直後。
「うわぁっ!?」
「何だ何だ!?」
突如、低い音程の、ひどく不安をあおるようなメロディが響き渡った。気が張り詰めていたところに出し抜けに鳴ったものだから、腰を抜かしかけた雷奈たちだが、よく聞いてみると、ギターの利いたロックなアレンジがなされているものの、その曲には覚えがあった。シューベルトの「魔王」である。
「「げ」」
同時、研究者二人が顔をひきつらせた。嫌悪とも恐れともとれる形に歪ませた、さながら魔王でも目の当たりにしたかのような表情で、音の発生源を見つめる。せつなのスカートのポケットだ。
「どんな着メロっちゃか」
「ヤバい……この曲は……」
どうやら、特定の相手からかかってきた時に鳴るように設定しているらしい。そして、それはせつなたちにとって恐るべき相手のようで、彼女らはさーっと青ざめたまま、微動だにしない。
低音のギターが原曲より迫力を増すト短調が、スマホの主を取り立て屋のように呼び続ける。
歌唱なしのため、イントロが終わったのかどうかわからない頃、やがてドイツリートはひたと止んだ。
「……出なくてよかったと?」
「……い、いいのよ……」
「だいじょぶ、だいじょぶ……」
「ってか、誰からだよ」
カチコチに凍った状態から、徐々に解凍されていくかのように緊張感を解きつつあった二人。
――を襲う魔王、再び。
「ひいぃっ!?」
「きゃあぁっ!?」
魔王は今度はミストのワンピースのポケットから呼び立てていた。まるで服にゴキブリがしがみついているのを見るように、ミストとせつなは身を震わせてポケットを見つめる。
怯え倒すこと約十五秒、魔王は諦めたように姿を消した。
「やっぱり出たほうがいいんじゃ……」
「つ……次ね、もし万が一、次にかかってきたら出るから……」
「そ、そうそう、たぶん大丈夫だろうけど……」
しびれを切らした魔王が、再びせつなを呼んだ。
「…………」
あの快刀乱麻で不敵なせつなが、顔を手で覆って天を仰いだ。そのまま反対の手でスマホを取り出すと、ブラインドでタップして耳に当てる。
スマホのスピーカーから漏れ聞こえてくる声は、何を言っているかまでは聞き取れないが、少ししわがれた男の声が怒りをあらわにまくし立てていることだけはわかった。
はい。
すぐ戻ります。
すみませんでした。
意気消沈したせつなのかすれた謝罪を最後に、通話は終了した。
青菜に塩を振りかけられたようにうなだれるせつな。なぜか同じようにしおれるミスト。
二人を交互に見やりながら、雷奈が尋ねる。
「だ、誰と?」
「……先生」
「先生?」
「私たちが所属している幸村研究室の幸村教授デス」
生気の抜けた声で答えるせつなの横で、ミストが「はわわぁ……」と顔を両手で覆う。
「コアタイム、サボったのバレたかぁ……」
「ザッツライト」
「コアタイムって何ね?」
せつなとミストによると、研究界におけるコアタイムとは、研究室で研究に従事していなければならない時間のことを指すらしい。人間界でも大学の研究室などで使われる単語のようだが、必ずしも設けられるわけではなく、それは研究室による。
フィライン・エデンの学院でも同様のようで、基本的には設けている研究室はほとんどないようだが――。
「私たちがあまりにもサボったりイタズラしたりふざけたりするものだから、不定期だけど設けられちゃいました」
はあ、とせつなはため息をついて肩をすくめる。
「せっかくバレないように、椅子の上にミスト型のハリボテを座らせておいたのにね」
「それはバレるでしょ……」
「誰かが近づいてきたらセンサーで反応して、わたしの声で『お疲れ様です』って言う仕様になってるのに」
「それしか言わないのかよ。どうせならもっとレパートリー増やせよ」
「ミスト。そのハリボテだけど、先生の熟練の雷術でぶっ壊されたみたい」
「マジ!? 総造学研究科の知り合いに頼んで、お夕飯三日分で作ってもらったのに!」
「何ば頼んどーとか」
学者とは思えないガサツな防衛線をあっさり攻略された二人は、「というわけで、ごめん。学院に戻ります」と敬礼して、来た道を走っていった。
残された雷奈たちの頭には、ほぼ確定事項となりつつある悪い予感と、ロック調の「魔王」だけが、しばらくの間ぐるぐると回っていた。
以前来た時と同じように、佐藤ミルクは犬小屋ではなく屋内住まいのようだった。それなりに立派な一軒家で、しかし地震が来たらちょっと心もとなさそうな、年季の入った物件である。
せつなは表札のかかった石塀から玄関をのぞき込み、「うーん」とうなった。はたから見ると、下見に来た素人泥棒のようでもある。
「そっか、庭で飼っているわけじゃなかったのね……接触したかったのに」
「何でチワワと接触する必要があるんだよ」
「さっき話したでしょ。ミストが……」
「ユキナ、こっちこっち」
氷架璃も一緒になってのぞき込んでいると、ミストが背後、塀の角から手招きしていた。呼ばれるまま、ぐるりと側面に回りこむが、何もない。
「どうしたのよ、ミスト」
「ここからのぞいてみて」
そびえたつ石塀は、一番身長の高い氷架璃が背伸びしても中を見ることを許さない。
のぞき穴でもあるのか、と塀をまじまじ見つめ始めた雷奈たちの隣で、ミストは猫の跳躍力で一メートルほど跳躍した。
「ほら、あそこの窓際」
どれどれ、とせつなも跳ぶ。
「あら、本当。日向ぼっこしてるわ」
「オイお前らぁ! 周りも確認せずに超人的な身体能力を発揮するんじゃないよ!」
「ごめんあそばせー」
この上なく形骸的な謝罪を口にした後、せつなは「で」とミストに向き直る。
「いけそう? ガラス戸越しだけど」
「ちょっと手間取るかもだけど、行ってみる」
ミストは大きくジャンプすると同時に長毛の猫の姿に戻り、塀の上に着地した。
「だから周りも確認せずに超人的な能力を発揮するんじゃないよ!」
「ごっめーん」
中身すっからかんの謝罪を口にすると、ミストはぴょんと庭の中へ飛び降りてしまった。中の様子は、雷奈たちにはわからない。夜の光丘中学校に忍び込んだ時のように、猫力を解放すればミストと同じ芸当ができるが、いつ人が通ってもおかしくない時間帯のうえ、佐藤某さんに通報されては一大事である。
話から推測されるに、家屋のこの方向は、ガラス戸で庭に面しているらしい。その窓際でチワワのミルクが日向ぼっこをしているそうだ。そこに、ミストがガラス戸越しに接触しに行ったということである。
まもなくして、ガラス越しにもかかわらず、激しい吠え声が聞こえてきた。
「キャンキャン言っとるけど」
「寝てるかと思ったら、起きてたのね。ミストを警戒してるんだわ」
「そりゃあ、熊も逃げるフィライン・エデンのにゃんこ様だもんなぁ」
「それより、飼い主さんがやってきたら、追い払われてしまうんじゃないかしら……」
飼い主からすれば、愛犬に野良猫がちょっかいを出してきた、という絵になるのだろう。戸が閉まっているなら、危害を加えられる心配はないことはわかっているだろうが、視線も合わないよう奥に引っ込められてしまうかもしれない。
「やれやれ、ちょっと手助けに行こうかしらね」
せつなも大ジャンプに次いで主体へ変化、塀の上に軽やかに降り立った。
「だから! 周りも確認せずに! 超人的な能りょ……最後まで聞けぇぇ!」
振り返りもせず庭へと消えたせつなに、氷架璃は火を吐かんばかりに怒鳴り散らす。その声が佐藤家の家人に聞こえるほうがやっかいなので、とりあえず雷奈と芽華実はその口をふさいでおいた。
むぐむぐとうなっていた氷架璃だが、やがて「む?」と首をかしげる。
「……おとなしくなったな?」
「氷架璃がっちゃか?」
「違わい。チワワのミルク氏がだよ」
「……本当ね、鳴き声がしなくなった」
けだし、せつなが何かしたのだろう。
内部の様子がわからずやきもきしていると、突然庭の松の木が揺れ、かと思えばそこから塀の上へと白猫が飛び上がってきた。
「せつな」
「やっほー」
「ミルクちゃん、急におとなしくなったっちゃけど……何かしたと?」
「別に。ただ近づいて目を合わせただけよ。そしたら気絶した」
「……昨日の今日で災難ね……」
芽華実が胸に手を当てて同情のため息を漏らしていると、再び松の木が揺れ、今度は薄い茶色のふさふさした猫が戻ってきた。
「ミスト、どうだった?」
塀の外で黒髪の少女の姿になったせつなが、同じく人間姿に変化するミストに尋ねる。ミストは顔にかかった茶髪をかきあげながら笑った。
「いやー、参ったね」
口の端に戦慄を浮かべて。
「……出ちゃった。源子。陽性だったよ」
その言葉が意味するところを察して、一同は言葉を忘れて互いに顔を見合わせた。雷奈は口を半開きにし、氷架璃は緊張に唇を舌で湿らせる。口元に手を当てた芽華実の視線を受け、せつなは「んー」とひきつった笑みで声を漏らした。
「アワとかフーとか、こっちによく来る誰かが、昨日あの犬に何らかの術を……なわけないわよね、あはは」
乾いた笑いが、地面にばらまかれた砂利のように落ちて、小さく跳ねて転がる。
そもそも、猫術に動物の行動を制御するものはないはずだ。それができるとしたら、心当たりは一つだけ。
雷奈たちは直接対峙したわけではない。だが、それは確かに希兵隊の隊長を降した。
強敵が、この光丘の町で再び動き出している。
視界に映らないだけで、すぐそばに潜んでいるかもしれない脅威に、身じろぎすることさえはばかられる緊張が彼女らの体を支配した。
直後。
「うわぁっ!?」
「何だ何だ!?」
突如、低い音程の、ひどく不安をあおるようなメロディが響き渡った。気が張り詰めていたところに出し抜けに鳴ったものだから、腰を抜かしかけた雷奈たちだが、よく聞いてみると、ギターの利いたロックなアレンジがなされているものの、その曲には覚えがあった。シューベルトの「魔王」である。
「「げ」」
同時、研究者二人が顔をひきつらせた。嫌悪とも恐れともとれる形に歪ませた、さながら魔王でも目の当たりにしたかのような表情で、音の発生源を見つめる。せつなのスカートのポケットだ。
「どんな着メロっちゃか」
「ヤバい……この曲は……」
どうやら、特定の相手からかかってきた時に鳴るように設定しているらしい。そして、それはせつなたちにとって恐るべき相手のようで、彼女らはさーっと青ざめたまま、微動だにしない。
低音のギターが原曲より迫力を増すト短調が、スマホの主を取り立て屋のように呼び続ける。
歌唱なしのため、イントロが終わったのかどうかわからない頃、やがてドイツリートはひたと止んだ。
「……出なくてよかったと?」
「……い、いいのよ……」
「だいじょぶ、だいじょぶ……」
「ってか、誰からだよ」
カチコチに凍った状態から、徐々に解凍されていくかのように緊張感を解きつつあった二人。
――を襲う魔王、再び。
「ひいぃっ!?」
「きゃあぁっ!?」
魔王は今度はミストのワンピースのポケットから呼び立てていた。まるで服にゴキブリがしがみついているのを見るように、ミストとせつなは身を震わせてポケットを見つめる。
怯え倒すこと約十五秒、魔王は諦めたように姿を消した。
「やっぱり出たほうがいいんじゃ……」
「つ……次ね、もし万が一、次にかかってきたら出るから……」
「そ、そうそう、たぶん大丈夫だろうけど……」
しびれを切らした魔王が、再びせつなを呼んだ。
「…………」
あの快刀乱麻で不敵なせつなが、顔を手で覆って天を仰いだ。そのまま反対の手でスマホを取り出すと、ブラインドでタップして耳に当てる。
スマホのスピーカーから漏れ聞こえてくる声は、何を言っているかまでは聞き取れないが、少ししわがれた男の声が怒りをあらわにまくし立てていることだけはわかった。
はい。
すぐ戻ります。
すみませんでした。
意気消沈したせつなのかすれた謝罪を最後に、通話は終了した。
青菜に塩を振りかけられたようにうなだれるせつな。なぜか同じようにしおれるミスト。
二人を交互に見やりながら、雷奈が尋ねる。
「だ、誰と?」
「……先生」
「先生?」
「私たちが所属している幸村研究室の幸村教授デス」
生気の抜けた声で答えるせつなの横で、ミストが「はわわぁ……」と顔を両手で覆う。
「コアタイム、サボったのバレたかぁ……」
「ザッツライト」
「コアタイムって何ね?」
せつなとミストによると、研究界におけるコアタイムとは、研究室で研究に従事していなければならない時間のことを指すらしい。人間界でも大学の研究室などで使われる単語のようだが、必ずしも設けられるわけではなく、それは研究室による。
フィライン・エデンの学院でも同様のようで、基本的には設けている研究室はほとんどないようだが――。
「私たちがあまりにもサボったりイタズラしたりふざけたりするものだから、不定期だけど設けられちゃいました」
はあ、とせつなはため息をついて肩をすくめる。
「せっかくバレないように、椅子の上にミスト型のハリボテを座らせておいたのにね」
「それはバレるでしょ……」
「誰かが近づいてきたらセンサーで反応して、わたしの声で『お疲れ様です』って言う仕様になってるのに」
「それしか言わないのかよ。どうせならもっとレパートリー増やせよ」
「ミスト。そのハリボテだけど、先生の熟練の雷術でぶっ壊されたみたい」
「マジ!? 総造学研究科の知り合いに頼んで、お夕飯三日分で作ってもらったのに!」
「何ば頼んどーとか」
学者とは思えないガサツな防衛線をあっさり攻略された二人は、「というわけで、ごめん。学院に戻ります」と敬礼して、来た道を走っていった。
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