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12.文武抗争編
56ミッション・インパルシヴ ③
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***
二階へ降りてきたところで、ミストは一度足を止めた。
「さて、どうしよっか? まずは情報収集だし、図書館にでも行く?」
「えっ」
すると、せつなは意外そうな顔で返した。
「サボらないの?」
「えっ」
今度はミストが驚く番だ。
「逆に、研究しないの?」
「だって、せっかく先生がいないのよ。メインの研究だって道筋見えてるわけだし、焦ることないでしょう。遊びましょうよ」
「確かにメインのほうは順調だけど……っていうか、遊ぶって、何して? また人間界に行くの?」
「ちっちっち」
せつなはもったいぶるように人差し指を振った。
「もっとエキサイティングなことよ」
「何それ」
「ふっふっふ」
またも、じらすように人差し指を右に、左に。
「フィールドワーク先の『光丘中学校の七不思議(笑)』とやらがまことしやかに語られる環境。そしてその謎を解き明かそうと奮闘する雷奈たち。ああいうの見てたら、触発されて、私も暴きたくなっちゃったわけよ――飛壇中央学院の三大ミステリーを!」
「お、おおー……」
口をOの字にして声を漏らしたミストは、「七不思議の一つはあなただったけど……」と心の中で呟いてから、初めて聞く「飛壇中央学院の三大ミステリー(謎)」とやらに首をかしげた。
「わたし、それ聞いたことないんだけど」
「あら、そう? まあ、わたしも食堂かどこかで聞きかじっただけなんだけどさ」
それにしては得意げな顔で、せつなは人差し指を突き出した。
「その一! 実験棟の開かずの間! 誰もそこに何があるのか、何のための部屋なのか知らないまま、関与することを禁じられた部屋があった! けど! 今は開放されてるらしい!」
「解決しちゃってるじゃん。三大ミステリーじゃなくなったじゃん。光丘中七不思議のこと言えないじゃん」
「その二! 謎のワード『フューツ』! いつ、誰が言いだしたのか、何を指すのかもわからないけれど、学院に存在するという『フューツ』という事物! 教授陣に尋ねてみても知らぬ存ぜぬ! 噂によると、それは秘密裏に開発されている人工生命体!」
「聞いたことないワードだけど……それで、三つめは?」
「その三! 学院長の年齢と本当の容姿!」
「個人情報! っていうか、本当の容姿って何!?」
「だって、あのひともう云十年教職員やってるのよ? 声もしわがれてるし。あんな妙齢の女性の成りしてるけど、絶対おばあさんじゃない!?」
「そ、そうなのかな……?」
「だから今日は、今日こそは、その本性を暴く! 学院長の化けの皮を剥いでやるのよ!」
よりによって研究棟で大声で言うことではないが、せつなはそちらに心血を注ぐ気満々だ。
普段、せつなのいたずらやサボりには付き合うミストだが、先ほどの進捗発表を思い返すと、あまり足踏みしてもいられない。
「あの、ユキナ、わたし、それしてる場合じゃないんだけど……」
「え? ……ああ、ホーミング付与のほう?」
「うん……」
ミストを見くびっているわけではないが、彼女の研究の進捗が自分より遅れていることは、せつなも認識していないわけではない。
少し苦笑いしてから、せつなはミストの肩をぱしぱし叩いた。
「だーいじょうぶ。私が手伝うからさ!」
学院長の個人情報を暴くといったそばから? と言いたげなミストの視線に、せつなはサムズアップして答える。
「学院長の情報、調べられる限りはもう調べたんだもの。あと足りないのは聞き込みよ。だから、私はこれから研究仲間をめぐって学院長の噂を集める! その時に、ミストの研究のヒントももらちゃえばいいのよ! 霧にもともと空間的指向性がないから、複雑な動きをさせにくいって話だけど、だったら、ほかの猫種の例が参考になるかもしれないわよ。例えば風なんて、凪もあれば強風もあって、鎌鼬もある。霧と同じ静的特徴と、目指したい動的特徴を併せもってるわよ」
立て板に水のごとく、よどみなく打開案を口にするせつなに、ミストは目を丸くした。自分の研究でもないのに、瞬く間に突破口を見つけ出してしまった。しかも、せつな自身のこれからの行動に沿わせる方法。さすが、娯楽と研究の両立に抜け目がないとささやかれる才女だ。
(やっぱり、敵わないな)
きっとこの劣等感は、ずっとつきまとう。けれど、そんな彼女が唯一のパートナーにと選んでくれたから。
「……うん、乗った!」
ミストはにっこりと笑って、下り階段へ向きかけていた足を相棒に向けた。
***
最初に訪れたのは、音響学研究科の透里麗楽の部屋だ。
音楽学や言語学を扱う音響学は、猫力学とは縁遠く見えるが、麗楽の専門は極めて猫力学に近しいものだ。
音響回法――純猫術の一つである回復術で複雑な怪我や病気を治そうとすると、状態や原因の詳細を知り、治療プロトコルを考える必要があるところを、リズム、メロディ、ハーモニー、転調や繰り返し、歌詞などそのものが術式になった音楽や歌にパッケージングすることで、素人でも扱えるようにしたもの。それが、麗楽の研究対象である。せつなやミストと親しくなったのも、近しい専門領域で話が合ったところが大きい。
かつて、狭山という教授のもとで学んでいた彼女は、恩師の死後、別の教授の研究室に移籍となった。その教授は音響回法に詳しいわけではなかったが、麗楽の意志を汲み、研究室のプロジェクトを共に遂行するかたわら、時々できるかぎりの助言をしているそうだ。
さて、一階の左翼廊にやってきたせつなは、気合を入れるように咳払いをした後、ノックを三回鳴らした。
――が、返事は待たない。
「やっほー、麗楽ー!」
「あら、せつなちゃん、ミストちゃんも」
ばあん、と勢いよくドアを開け放ったせつなに、楕円形のテーブルに楽譜を広げ、椅子に立ってそれをのぞきこむ猫姿の麗楽が応じた。毛並みのシルバーグリーンと瞳のミントグリーンは、いつ見ても心を和ませてくれる。
癒しをもたらすのは本人だけではない。彼女の性格をそのまま反映した、角のない丸みを帯びたテーブルや椅子、キャビネットもさることながら、まるで森林浴をしているかのようなさわやかなアロマが、訪問者から退室という概念を忘れさせる。
座って一服したくなってしまうのを克己心でこらえながら、せつなは麗楽に歩み寄った。
「調子はどう?」
「ちょっと困ってしまっているところです。いくつかの案はあるものの、どれも最善案ではないような気がして……」
せつなとミストにも覚えのある話だ。そこまで詳しいわけではないが、プログラミングと似たような理屈である。いくつかのスクリプトを書けば、プログラムは動く。だが、それをより速く軽く動く、誰にでも実行可能なものにするには工夫が必要だ。
源子への命令にも通ずるところがある。そうやって先人が創意工夫と試行錯誤を重ねて作り上げたのが、現在の術の詠唱や言霊なのだ。
「単純な引き出し不足だと思います……」
「専門書だけじゃなくて、一般資料も見てみた?」
「はい。でも、もう少し斬新な視点が欲しいところで……」
ミストのアイデアはもう検討済みのようで、麗楽は頬に肉球を押し当てて悩ましげに首を傾げた。
そこへ、せつなが提案する。
「人間界の資料は?」
「ええ、調べました。それこそ、人間界学の資料から輸入物の作品まで見ましたが、なかなか……」
「違う違う、生のやつ」
「生?」ときょとんとした麗楽に、せつなは「そりゃそうでしょ!」とテーブルに手をついて詰め寄る。
「せっかくワープフープが開放されているのよ? 行かない手はないじゃない! 人間界のメディアに触れて、図書館で資料あさって、道行く人に人間のふりしてインタビューしたっていいわ。新しい刺激だらけでエウレカ必至よ! コペルニクス的大転回よ! 世界が三六〇度変わるわよ!」
「ユキナ、それ元に戻っちゃってる」
ミストの声は届いていないようで、それどころかせつなのすっとぼけにも気づいていないようで、麗楽はただ感心したように、目を輝かせて鱗をぱらぱら落としていた。
「まあ! 私ったら、そんな方法を見落としていたなんて! まずは図書館に行ってみようかしら」
「光丘なら、私が案内してあげるから、今度一緒に行きましょ!」
「ありがとう、せつなちゃん……! その時は、お茶の一杯でもごちそうさせてください」
「あー……だったら」
せつなは一瞬だけ思案すると、期待のこもった笑顔を咲かせた。
「お茶の代わりでいいからさ、教えてほしいことがあるのよ」
***
リラックス空間の誘惑を振り切って、次に訪れたのは、社会学研究科の湯ノ巻絹の部屋だ。
社会学研究科は、学院でも広範な分野を扱う研究科の一つである。社会学、それに付随する地理学や史学。文化学、それに付随する文学や芸術学。多岐にわたる分、教授陣や研究者の数も比較的多い。
服飾文化を専門とするシルクと、せつなとは、また妙な縁でつながった仲だ。いつもコーディネートに気を遣っているせつなを、構内で通りすがりに見かけたシルクが、「ちょっとインタビューさせて」などと食堂に連れ込んで、ミルクティー一杯と引き換えに、せつなの持っている私服から合わせ方から根掘り葉掘り聞きだして、最終的に何らか意気投合して友達関係になったのである。ミストと知り合ったのは、せつなの紹介だ。
麗楽の部屋とは逆方向、右翼廊にやってきたせつなは、中からわずかに漏れてくるミシンの稼働音を聞きながら、ノックを三回鳴らした。
――が、やはりノックの返事は待たない。
「やっほー、シルクー!」
「おおーう、びっくりしたぁ」
ばあん、と勢いよくドアを開け放ったせつなに、床に座り込んでいたシルクは、いつもけだるげな目を、けだるげなまま丸くするという器用な真似をしながら振り返った。彼女の周りには布地やバイアステープ、定規に裁ちバサミなど、服飾のお供がこれでもかというほど散らばっていた。
彼女は作業を床でしたがる。だから何も置かれていないスペースができるような調度品の配置がなされているし、作業時に床に敷く専用のマットが常備されている。
「びっくりしすぎてミシンに手、巻き込むところだったじゃん」
「ごめんごめーん」
「ごめんじゃ済まないよ、ユキナ!?」
想像してしまい、自分の手を押さえて身震いするミストだが、本人はいたって平然としており、むしろ恐怖心は別のところに向けられていた。
「先生の目を盗んで副職の作業してるからさー。バレたかと思ってビビったじゃん」
「でも、本業だって洋裁はするでしょ? ごまかせるんじゃ?」
「目下の課題は手縫いなんだよ」
「あら、それなら場所を変えた方がいいわよ。外までミシンの音が漏れてたから」
「まじ?」
シルクはそそくさとミシンや材料やらを片付け始めた。片付けながら、お得意の縫製技術で、せつなの口を縫い閉じようとする。
「言わないでよ?」
「言わない、言わない。あ、でも、口止め料ってわけじゃないけど、訊きたいことがあるわ」
「がめついなー。でも、背に腹は代えられない。ご用件は?」
***
研究者友達は他にも何名かいるが、時間の制約もあって訪問数も限られている中、せっかくなので最後は大先輩を訪ねることにした。
寡黙で孤高、そのにべもない態度もさることながら、次期准教授クラスの頭脳と研究能力をもつ彼には、せつなのような一部を除いて、誰もが敬遠して寄り付かない。
そんな一匹狼な時空学研究者を訪ねて、せつなは三階右翼廊の最奥部の扉をノックした。
――あろうことか、大先輩相手でも返事は待たない。
「やっほー、コーパイ!」
「勝手に入るな、天河」
ばあん、と威勢よくドアを開け放ったせつなの蛮行に、幸村ぶりにようやく叱責をくれたのは、書架の前に立ってページをめくっていたこの部屋の主、墨ヶ原紅焔だ。
齢二十四の彼は、いつもシャツにベスト、スラックスのスタイルで、そのすらりとした長身を包んでいる。スレートグレーというべき、青みがかった濃い灰色の髪は長く伸ばされ、後ろで一つに結って肩に流してある。そんな様子も他とは一線を画す彼は、炎猫らしい橙がかった赤い瞳で、せつなを呆れ半分、迷惑半分で見ていた。
「あと、その先輩か後輩かわからない呼び方はやめろ」
「紅焔先輩なんだからコーパイで間違いないじゃん、ねぇ?」
「大間違いだ」
先輩の苦言を意にも介さず、せつなは扉側に置いてあるテーブル席にどかっと座った。
紅焔の研究室は、せつなやミストたちよりも、幸村のそれに似ている。扉から入ってすぐ左手に、パイプ椅子が三つ置かれたテーブル。そこと奥を仕切るようにホワイトボード。奥は紅焔の領域で、彼の使いやすさに合わせて配置された文具類やらパソコン周辺機器やら。
ご多分にもれず本棚に囲まれたデスクだが、ドアから向かって左側の壁際には、五段くらいあるキャビネットが置いてある。堅物らしい彼の部屋にそんな生活感のあるものが置かれているのも意外だが、上に置時計のほか、一枚の写真が飾られているのが驚きだ。友人と思しき人物とツーショットで映っている、少年時代の彼が仏頂面でそこにいた。
「それで、今日は何しに来た」
紅焔は、勝手に座ったせつなと、所在なく同じように座ったミストの前に、液体の入った紙コップを置いた。ちなみに、中身は紅茶でもコーヒーでもない。水道水だ。せつなはこれを「紅焔流のぶぶ漬け」と名付けている。まあ、そういう意味だ。
「私はもうあと五分もすれば教務課へ書類提出に行くのだが」
「まあまあ、そんなに手間はかからないからさ。頼みは二つ。一つ、かわいい後輩の瀧霧ちゃんが、研究で行き詰まってるから、相談に乗ったげて。一つ、学院長の実年齢を教えて」
「前者はともかく、後者は何だ。私の聞き間違いか?」
「だってぇ」
せつなは、人間界のものより安全で新鮮な水道水をちびちび飲みながら、背もたれに深くもたれて紅焔を見上げた。
「あのひと、もう何十年もここに住み着いてるんでしょ? あんな見た目通りのレディなわけないじゃん。マダムかオウナがいいとこよ。麗楽は『とっても身だしなみに気を遣ってるんですよ』って言ってたけど、身だしなみってレベルじゃないし。シルクは『職歴詐称じゃない?』って言ってたけど、幸村先生たち古参者が何も言わないんだから、学院歴は本物のはずなのよ」
「レディとマダムに嫗を並べるな。気になるなら自身の師に訊けばいいだろう」
「教えてくんないからコーパイに訊いてるんでしょー」
「では、答えよう。知らない。さあ、遊んでいる暇があるなら有意義に研究しろ」
「ええー、つれない。そんなこと言って、何か知ってるんじゃないのー?」
「なぜそう思うんだ」
水を半分まで飲んだところで、コップを置いて。
「だって、コーパイ、時空学研究科に来る前は、学院長と同じ……」
その後の彼の動作は、目にも止まらなかった。
それでもわかった事象として、紅焔は素早くせつなの背後に回ると、その襟首をひっつかんで無理のない動きで席から引きずり下ろし、反対の手で開け放ったドアから、ゴミでも投げ捨てるように放り出した。
遅れてミストも、幾分かお手柔らかに退場させられる。
「出てけ。話すことなどない」
バタン。
閉扉の音の響きは、拒絶の強さに比例する。
ミストはぺたんと座り込んだまま、呆然と瞬きを繰り返していた。
「……え? 何が起こったの?」
「コーパイが怒ったねー」
シャレを言いながら、せつなはお尻をはたいて立ち上がる。
「やっぱり禁句なのね、この話。前も放り出されたし」
「二の舞だったの!?」
「二の舞どころか、三の舞四の舞ドンマイよ。よっぽど嫌な辞め方したのかしらね」
「その可能性高いと思う……」
勘づいていたなら口にしなきゃいいのに、とため息をつくミスト。
その目の前に、せつなの手が差し出された。
「ごめんね。私が余計なこと言ったせいで、ミストの研究のヒントまで聞き損ねちゃった」
「……ううん、いいの。麗楽とシルクからはアドバイスもらえたし、これで一度頑張ってみる」
手を取り、立ち上がると、せつなが満面の笑みでその肩を叩いた。
そのまま、二人は寄り添いながら図書館に向かい、ようやく研究にとりかかる運びとなった。
二階へ降りてきたところで、ミストは一度足を止めた。
「さて、どうしよっか? まずは情報収集だし、図書館にでも行く?」
「えっ」
すると、せつなは意外そうな顔で返した。
「サボらないの?」
「えっ」
今度はミストが驚く番だ。
「逆に、研究しないの?」
「だって、せっかく先生がいないのよ。メインの研究だって道筋見えてるわけだし、焦ることないでしょう。遊びましょうよ」
「確かにメインのほうは順調だけど……っていうか、遊ぶって、何して? また人間界に行くの?」
「ちっちっち」
せつなはもったいぶるように人差し指を振った。
「もっとエキサイティングなことよ」
「何それ」
「ふっふっふ」
またも、じらすように人差し指を右に、左に。
「フィールドワーク先の『光丘中学校の七不思議(笑)』とやらがまことしやかに語られる環境。そしてその謎を解き明かそうと奮闘する雷奈たち。ああいうの見てたら、触発されて、私も暴きたくなっちゃったわけよ――飛壇中央学院の三大ミステリーを!」
「お、おおー……」
口をOの字にして声を漏らしたミストは、「七不思議の一つはあなただったけど……」と心の中で呟いてから、初めて聞く「飛壇中央学院の三大ミステリー(謎)」とやらに首をかしげた。
「わたし、それ聞いたことないんだけど」
「あら、そう? まあ、わたしも食堂かどこかで聞きかじっただけなんだけどさ」
それにしては得意げな顔で、せつなは人差し指を突き出した。
「その一! 実験棟の開かずの間! 誰もそこに何があるのか、何のための部屋なのか知らないまま、関与することを禁じられた部屋があった! けど! 今は開放されてるらしい!」
「解決しちゃってるじゃん。三大ミステリーじゃなくなったじゃん。光丘中七不思議のこと言えないじゃん」
「その二! 謎のワード『フューツ』! いつ、誰が言いだしたのか、何を指すのかもわからないけれど、学院に存在するという『フューツ』という事物! 教授陣に尋ねてみても知らぬ存ぜぬ! 噂によると、それは秘密裏に開発されている人工生命体!」
「聞いたことないワードだけど……それで、三つめは?」
「その三! 学院長の年齢と本当の容姿!」
「個人情報! っていうか、本当の容姿って何!?」
「だって、あのひともう云十年教職員やってるのよ? 声もしわがれてるし。あんな妙齢の女性の成りしてるけど、絶対おばあさんじゃない!?」
「そ、そうなのかな……?」
「だから今日は、今日こそは、その本性を暴く! 学院長の化けの皮を剥いでやるのよ!」
よりによって研究棟で大声で言うことではないが、せつなはそちらに心血を注ぐ気満々だ。
普段、せつなのいたずらやサボりには付き合うミストだが、先ほどの進捗発表を思い返すと、あまり足踏みしてもいられない。
「あの、ユキナ、わたし、それしてる場合じゃないんだけど……」
「え? ……ああ、ホーミング付与のほう?」
「うん……」
ミストを見くびっているわけではないが、彼女の研究の進捗が自分より遅れていることは、せつなも認識していないわけではない。
少し苦笑いしてから、せつなはミストの肩をぱしぱし叩いた。
「だーいじょうぶ。私が手伝うからさ!」
学院長の個人情報を暴くといったそばから? と言いたげなミストの視線に、せつなはサムズアップして答える。
「学院長の情報、調べられる限りはもう調べたんだもの。あと足りないのは聞き込みよ。だから、私はこれから研究仲間をめぐって学院長の噂を集める! その時に、ミストの研究のヒントももらちゃえばいいのよ! 霧にもともと空間的指向性がないから、複雑な動きをさせにくいって話だけど、だったら、ほかの猫種の例が参考になるかもしれないわよ。例えば風なんて、凪もあれば強風もあって、鎌鼬もある。霧と同じ静的特徴と、目指したい動的特徴を併せもってるわよ」
立て板に水のごとく、よどみなく打開案を口にするせつなに、ミストは目を丸くした。自分の研究でもないのに、瞬く間に突破口を見つけ出してしまった。しかも、せつな自身のこれからの行動に沿わせる方法。さすが、娯楽と研究の両立に抜け目がないとささやかれる才女だ。
(やっぱり、敵わないな)
きっとこの劣等感は、ずっとつきまとう。けれど、そんな彼女が唯一のパートナーにと選んでくれたから。
「……うん、乗った!」
ミストはにっこりと笑って、下り階段へ向きかけていた足を相棒に向けた。
***
最初に訪れたのは、音響学研究科の透里麗楽の部屋だ。
音楽学や言語学を扱う音響学は、猫力学とは縁遠く見えるが、麗楽の専門は極めて猫力学に近しいものだ。
音響回法――純猫術の一つである回復術で複雑な怪我や病気を治そうとすると、状態や原因の詳細を知り、治療プロトコルを考える必要があるところを、リズム、メロディ、ハーモニー、転調や繰り返し、歌詞などそのものが術式になった音楽や歌にパッケージングすることで、素人でも扱えるようにしたもの。それが、麗楽の研究対象である。せつなやミストと親しくなったのも、近しい専門領域で話が合ったところが大きい。
かつて、狭山という教授のもとで学んでいた彼女は、恩師の死後、別の教授の研究室に移籍となった。その教授は音響回法に詳しいわけではなかったが、麗楽の意志を汲み、研究室のプロジェクトを共に遂行するかたわら、時々できるかぎりの助言をしているそうだ。
さて、一階の左翼廊にやってきたせつなは、気合を入れるように咳払いをした後、ノックを三回鳴らした。
――が、返事は待たない。
「やっほー、麗楽ー!」
「あら、せつなちゃん、ミストちゃんも」
ばあん、と勢いよくドアを開け放ったせつなに、楕円形のテーブルに楽譜を広げ、椅子に立ってそれをのぞきこむ猫姿の麗楽が応じた。毛並みのシルバーグリーンと瞳のミントグリーンは、いつ見ても心を和ませてくれる。
癒しをもたらすのは本人だけではない。彼女の性格をそのまま反映した、角のない丸みを帯びたテーブルや椅子、キャビネットもさることながら、まるで森林浴をしているかのようなさわやかなアロマが、訪問者から退室という概念を忘れさせる。
座って一服したくなってしまうのを克己心でこらえながら、せつなは麗楽に歩み寄った。
「調子はどう?」
「ちょっと困ってしまっているところです。いくつかの案はあるものの、どれも最善案ではないような気がして……」
せつなとミストにも覚えのある話だ。そこまで詳しいわけではないが、プログラミングと似たような理屈である。いくつかのスクリプトを書けば、プログラムは動く。だが、それをより速く軽く動く、誰にでも実行可能なものにするには工夫が必要だ。
源子への命令にも通ずるところがある。そうやって先人が創意工夫と試行錯誤を重ねて作り上げたのが、現在の術の詠唱や言霊なのだ。
「単純な引き出し不足だと思います……」
「専門書だけじゃなくて、一般資料も見てみた?」
「はい。でも、もう少し斬新な視点が欲しいところで……」
ミストのアイデアはもう検討済みのようで、麗楽は頬に肉球を押し当てて悩ましげに首を傾げた。
そこへ、せつなが提案する。
「人間界の資料は?」
「ええ、調べました。それこそ、人間界学の資料から輸入物の作品まで見ましたが、なかなか……」
「違う違う、生のやつ」
「生?」ときょとんとした麗楽に、せつなは「そりゃそうでしょ!」とテーブルに手をついて詰め寄る。
「せっかくワープフープが開放されているのよ? 行かない手はないじゃない! 人間界のメディアに触れて、図書館で資料あさって、道行く人に人間のふりしてインタビューしたっていいわ。新しい刺激だらけでエウレカ必至よ! コペルニクス的大転回よ! 世界が三六〇度変わるわよ!」
「ユキナ、それ元に戻っちゃってる」
ミストの声は届いていないようで、それどころかせつなのすっとぼけにも気づいていないようで、麗楽はただ感心したように、目を輝かせて鱗をぱらぱら落としていた。
「まあ! 私ったら、そんな方法を見落としていたなんて! まずは図書館に行ってみようかしら」
「光丘なら、私が案内してあげるから、今度一緒に行きましょ!」
「ありがとう、せつなちゃん……! その時は、お茶の一杯でもごちそうさせてください」
「あー……だったら」
せつなは一瞬だけ思案すると、期待のこもった笑顔を咲かせた。
「お茶の代わりでいいからさ、教えてほしいことがあるのよ」
***
リラックス空間の誘惑を振り切って、次に訪れたのは、社会学研究科の湯ノ巻絹の部屋だ。
社会学研究科は、学院でも広範な分野を扱う研究科の一つである。社会学、それに付随する地理学や史学。文化学、それに付随する文学や芸術学。多岐にわたる分、教授陣や研究者の数も比較的多い。
服飾文化を専門とするシルクと、せつなとは、また妙な縁でつながった仲だ。いつもコーディネートに気を遣っているせつなを、構内で通りすがりに見かけたシルクが、「ちょっとインタビューさせて」などと食堂に連れ込んで、ミルクティー一杯と引き換えに、せつなの持っている私服から合わせ方から根掘り葉掘り聞きだして、最終的に何らか意気投合して友達関係になったのである。ミストと知り合ったのは、せつなの紹介だ。
麗楽の部屋とは逆方向、右翼廊にやってきたせつなは、中からわずかに漏れてくるミシンの稼働音を聞きながら、ノックを三回鳴らした。
――が、やはりノックの返事は待たない。
「やっほー、シルクー!」
「おおーう、びっくりしたぁ」
ばあん、と勢いよくドアを開け放ったせつなに、床に座り込んでいたシルクは、いつもけだるげな目を、けだるげなまま丸くするという器用な真似をしながら振り返った。彼女の周りには布地やバイアステープ、定規に裁ちバサミなど、服飾のお供がこれでもかというほど散らばっていた。
彼女は作業を床でしたがる。だから何も置かれていないスペースができるような調度品の配置がなされているし、作業時に床に敷く専用のマットが常備されている。
「びっくりしすぎてミシンに手、巻き込むところだったじゃん」
「ごめんごめーん」
「ごめんじゃ済まないよ、ユキナ!?」
想像してしまい、自分の手を押さえて身震いするミストだが、本人はいたって平然としており、むしろ恐怖心は別のところに向けられていた。
「先生の目を盗んで副職の作業してるからさー。バレたかと思ってビビったじゃん」
「でも、本業だって洋裁はするでしょ? ごまかせるんじゃ?」
「目下の課題は手縫いなんだよ」
「あら、それなら場所を変えた方がいいわよ。外までミシンの音が漏れてたから」
「まじ?」
シルクはそそくさとミシンや材料やらを片付け始めた。片付けながら、お得意の縫製技術で、せつなの口を縫い閉じようとする。
「言わないでよ?」
「言わない、言わない。あ、でも、口止め料ってわけじゃないけど、訊きたいことがあるわ」
「がめついなー。でも、背に腹は代えられない。ご用件は?」
***
研究者友達は他にも何名かいるが、時間の制約もあって訪問数も限られている中、せっかくなので最後は大先輩を訪ねることにした。
寡黙で孤高、そのにべもない態度もさることながら、次期准教授クラスの頭脳と研究能力をもつ彼には、せつなのような一部を除いて、誰もが敬遠して寄り付かない。
そんな一匹狼な時空学研究者を訪ねて、せつなは三階右翼廊の最奥部の扉をノックした。
――あろうことか、大先輩相手でも返事は待たない。
「やっほー、コーパイ!」
「勝手に入るな、天河」
ばあん、と威勢よくドアを開け放ったせつなの蛮行に、幸村ぶりにようやく叱責をくれたのは、書架の前に立ってページをめくっていたこの部屋の主、墨ヶ原紅焔だ。
齢二十四の彼は、いつもシャツにベスト、スラックスのスタイルで、そのすらりとした長身を包んでいる。スレートグレーというべき、青みがかった濃い灰色の髪は長く伸ばされ、後ろで一つに結って肩に流してある。そんな様子も他とは一線を画す彼は、炎猫らしい橙がかった赤い瞳で、せつなを呆れ半分、迷惑半分で見ていた。
「あと、その先輩か後輩かわからない呼び方はやめろ」
「紅焔先輩なんだからコーパイで間違いないじゃん、ねぇ?」
「大間違いだ」
先輩の苦言を意にも介さず、せつなは扉側に置いてあるテーブル席にどかっと座った。
紅焔の研究室は、せつなやミストたちよりも、幸村のそれに似ている。扉から入ってすぐ左手に、パイプ椅子が三つ置かれたテーブル。そこと奥を仕切るようにホワイトボード。奥は紅焔の領域で、彼の使いやすさに合わせて配置された文具類やらパソコン周辺機器やら。
ご多分にもれず本棚に囲まれたデスクだが、ドアから向かって左側の壁際には、五段くらいあるキャビネットが置いてある。堅物らしい彼の部屋にそんな生活感のあるものが置かれているのも意外だが、上に置時計のほか、一枚の写真が飾られているのが驚きだ。友人と思しき人物とツーショットで映っている、少年時代の彼が仏頂面でそこにいた。
「それで、今日は何しに来た」
紅焔は、勝手に座ったせつなと、所在なく同じように座ったミストの前に、液体の入った紙コップを置いた。ちなみに、中身は紅茶でもコーヒーでもない。水道水だ。せつなはこれを「紅焔流のぶぶ漬け」と名付けている。まあ、そういう意味だ。
「私はもうあと五分もすれば教務課へ書類提出に行くのだが」
「まあまあ、そんなに手間はかからないからさ。頼みは二つ。一つ、かわいい後輩の瀧霧ちゃんが、研究で行き詰まってるから、相談に乗ったげて。一つ、学院長の実年齢を教えて」
「前者はともかく、後者は何だ。私の聞き間違いか?」
「だってぇ」
せつなは、人間界のものより安全で新鮮な水道水をちびちび飲みながら、背もたれに深くもたれて紅焔を見上げた。
「あのひと、もう何十年もここに住み着いてるんでしょ? あんな見た目通りのレディなわけないじゃん。マダムかオウナがいいとこよ。麗楽は『とっても身だしなみに気を遣ってるんですよ』って言ってたけど、身だしなみってレベルじゃないし。シルクは『職歴詐称じゃない?』って言ってたけど、幸村先生たち古参者が何も言わないんだから、学院歴は本物のはずなのよ」
「レディとマダムに嫗を並べるな。気になるなら自身の師に訊けばいいだろう」
「教えてくんないからコーパイに訊いてるんでしょー」
「では、答えよう。知らない。さあ、遊んでいる暇があるなら有意義に研究しろ」
「ええー、つれない。そんなこと言って、何か知ってるんじゃないのー?」
「なぜそう思うんだ」
水を半分まで飲んだところで、コップを置いて。
「だって、コーパイ、時空学研究科に来る前は、学院長と同じ……」
その後の彼の動作は、目にも止まらなかった。
それでもわかった事象として、紅焔は素早くせつなの背後に回ると、その襟首をひっつかんで無理のない動きで席から引きずり下ろし、反対の手で開け放ったドアから、ゴミでも投げ捨てるように放り出した。
遅れてミストも、幾分かお手柔らかに退場させられる。
「出てけ。話すことなどない」
バタン。
閉扉の音の響きは、拒絶の強さに比例する。
ミストはぺたんと座り込んだまま、呆然と瞬きを繰り返していた。
「……え? 何が起こったの?」
「コーパイが怒ったねー」
シャレを言いながら、せつなはお尻をはたいて立ち上がる。
「やっぱり禁句なのね、この話。前も放り出されたし」
「二の舞だったの!?」
「二の舞どころか、三の舞四の舞ドンマイよ。よっぽど嫌な辞め方したのかしらね」
「その可能性高いと思う……」
勘づいていたなら口にしなきゃいいのに、とため息をつくミスト。
その目の前に、せつなの手が差し出された。
「ごめんね。私が余計なこと言ったせいで、ミストの研究のヒントまで聞き損ねちゃった」
「……ううん、いいの。麗楽とシルクからはアドバイスもらえたし、これで一度頑張ってみる」
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そのまま、二人は寄り添いながら図書館に向かい、ようやく研究にとりかかる運びとなった。
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