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お文とかぶと、恋心
諍い
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「ああ、そうみてぇだな。まだ正式に決まったわけじゃねぇが、かくぜんの旦那がここのところ徳次を連れ歩いてるんで、ほぼ決まりみてぇなもんだろう」
その日の夜、朔太郎が寝た後遅く帰ってきた晃之進にのぶは徳次の話をした。
夕餉の味噌かぶに彼は満足そうに「うめぇ」と唸って酒を飲む。
「いい話ですよね。わたし、徳次さんの今までの苦労が報われるんだって思ったら嬉しくて……。徳次さんは、少し自信がないようでしたけど。自分は店を任される器じゃないとか言って」
「まぁ、あいつならそう言いそうだな。だがその謙虚なところも旦那に必要だとおれは思う。奉公人あがりの旦那の中には急にえらくなって威張り散らすやつがいて、店がうまくいかなくなるもんだが、あいつならそんなことはねえだろう」
「わたしもそう思います。だから自信を持ってねとは言いましたが」
「あいつはのぶを慕ってるから、そう言ってやりゃ安心するだろう。だが、まぁ、あいつがひっかかっているのはそれだけじゃないかもしれねぇが……」
珍しく含みを持たせるような言い回しをする晃之進に、腕に飯をよそいながら、のぶは首を傾げる。
「どうやら養子の話と一緒に主人夫婦の遠縁の娘との縁談の話が来てるらしい」
「縁談? だったら、二重におめでたい話じゃないですか!」
彼ももうそんな年になるのかと、しみじみとする。はじめて店に来た時は十四だった。すでにしっかりしていたけれど、まだ子どもらしい雰囲気もあったのに。
もちろん祝言を挙げるにはまだ少し早いけれど、今から養子になり落ち着いた頃に代替わりをして、と考えるとむしろちょうどいいのではないだろうか。
一方で、晃之進の方は、そののぶの反応に意外そうに瞬きをして、箸を止める。そしてのぶの顔をしげしげと見ている。
そんな彼に、のぶは首を傾げた。
そんなに変なことを言っただろうか?
けれどそういえば、彼は徳次が引っかかっているのは、それだけじゃないと言ったのだ。
だとしたら、縁談が?
「どうかしたんですか?」
「どうかしたかって、そりゃあ……」
けれど晃之進はそこで言葉を切って、のぶの顔をまじまじと見る。いったいなになにが言いたいのかと、負けじとのぶも彼の顔をじーっと見る。が、よくわからなかった。
「おまえさん? なにが言いたいんですか?」
観念して問いかけると、晃之進は「まぁ、照れてるのかもしれねぇな」とどこか歯切れが悪く答えた。
「自信がねぇならなおさら、なにもかも変わるのは不安だろうし」
そう言ってのぶが作ったかぶの味噌和えを口に放り込む。
なにやら誤魔化されたような気がしなくもない、と思い、再び口を開きかけて、のぶはもうひとつ彼に聞こうとしていたことを思い出した。
「そういえば、おまえさん。ここのところお文ちゃんが家に来ないんです。身体でも壊したんじゃないかと心配で……。今日様子を見に行こうと思ってたんですけど、行けなかったんです。おまえさんお文ちゃん見かけたりしますか?」
晃之進は、これといった事件を追いかけていない時は、市中の見回りをしていることもよくある。同じように深川界隈を売り歩いているお文を見かけていないかと思ったのだが。
その問いかけに、晃之進は今度こそ驚いた、というように目を丸くしている。
「どうかしました?」
「……いや、二日前に八幡宮の近くで見たよ。元気そうだった。このところ永代橋の向こうで見かけることもあるくれえだから、忙しくて寄るひまがねえんじゃねえか?」
「そうですか……」
とりあえず元気そうだということにほっとする。けれどそれならば、どうして来てくれないのだろうと気持ちが沈んだ。
商売が忙しくて来られないのはいいことだ。でもそれならば店の前を通りかかる時にでも顔を見せてほしいと思うのは、わがままだろうか。
いきなり顔を見られなくなって寂しい気持ちでいっぱいだ。
徳次と同じで、お文ももう十七だ。
いつまでも子どもみたいにあれこれ食べさせようとするのぶが、うっとおしくなったのだろうか……
晃之進が「のぶは、すげえな」と呟いた。
「……おまえさん?」
「いやなんでもない。まぁ、そのうち顔を見せるだろうよ。お文にしても徳次にしても、のぶは親代わりみてえなもんだろう」
どうも煮え切らない晃之進の態度をやや不思議に思いつつ、のぶはとりあえず頷いた。
そして今夜彼に話そうと思っていた最後の事柄を口にした。
「おまえさん、さくのことで相談があるんです」
深刻な表情になったのぶに、晃之進が眉を寄せた。
「なんでえ?」
「まだいろはも終わっていないんですよ。あの子全然やる気がないみたいで」
「は? いろは? なんだ、そんなことか。いきなり深刻な顔になるからなにかと思えば。脅かすんじゃねぇ」
肩透かしを、くらったようにふっと笑う晃之進に、思い詰めていたのぶはむっとする。
「そんなことじゃありませんよ。松太郎さんはもうとっくに終わってるんですよ」
このままでは差は開く一方だ。又三郎は、それぞれの速さでやればよい言うがそれでも気になるものは気になる。
「だからなんだ。比べるもんでもねぇだろう」
「比べているわけではないですけど、でもやる気になれないのは問題ですよ」
父親と母親の違いだろうか、実に呑気なもんだとのぶは思う。もしかしたらこの遅れが朔太郎にとって取り返しのつかないことになるかもしれないのに。
子どもはおしえられたことを素直になんでも吸収する。さながらかぶのようなものだと思う。
調理次第でそこら辺のありふれた料理にもなるが、すりながしのように料亭で出すような料理になるのだ。
自分がうかうかしていたせいで、朔太郎が学べたことを取りこぼして将来苦労することになったらと思うと、どうしても今のままでいいとは思えない。
「んなもん、そのうちやる気になるだろうよ。それに今だって寺子屋へ行くのは楽しそうにしてるじゃねえか」
「いつまでも、やる気にならなかったらどうします?」
「生まれながらに勉学が合わねえやつもいるからな。こればかりはしかたねえ。でもま、なんとかなるよ」
「そんな無責任な……。おまえさんはそれでいいんですか?」
「いいもなにも、さくの人生はさくのものだ。おれのものじゃねえだろう」
突き放すような晃之進の言葉が、のぶの胸を刺した。
彼の人生は彼のもの。それはそうかもしれないが、親が言っていい言葉なのだろうか?
親は子を幸せにしなくてはならないのに。
のぶは朔太郎の将来が心配でたまらないのに、一緒に育てている晃之進に、この不安をわかってもらえなくてもやもやする。
「なんとかなるって……そういうわけにいかないんじゃないですか? さくは……生まれが生まれだから」
万が一にでも、二階の朔太郎に聞こえないように、のぶは声を落とした。
「わたし、朔太郎がこのまま田楽屋になったらなにやら申し訳ないような気がするんですよ」
「はあ?」
晃之進が眉をあげた。
「おまえさんの子として育ててもいるんですから、安居家とも繋がる子です。それなのに田楽屋になんかなったりしたら……」
もちろん安居家には倉太郎という立派な後継がいる。けれどこれから先のことは誰にもわからない。どうなるかはわからないのに、田楽屋にしかなれないように育ててしまっては、後々朔太郎が苦しむことになるかもしれない。
今日の徳次の姿が、大きくなった朔太郎と重なった。
「旦那さまはそのあたりも考えて、朔太郎の寺子屋に西禅寺ではなく、又三郎先生のところを勧められたんじゃないですか? あそこはお侍の子が多いですし」
むっつりと晃之進が黙り込む。彼がなにを考えているのかはわからないが、言い出したら止まらなくなって、のぶは胸に閉じこめていた思いを口にする。
「先日隣町に、新しい寺子屋ができたんです。しっかり仕込んでくださる厳しい方みたいで評判がいいんです。わたし、さくをそっちへやった方がいいような気がして。又三郎先生は優しいけど、さくに厳しく言わないでしょう? だからさくがいつまでたってもいろはを覚えないんですよ」
「馬鹿なこと言うんじゃねぇ」
晃之進に一喝されて口を閉じた。
「まだ通いだしたばかりで、厳しいもなにもねぇだろう。毎日元気に通ってるんだから、それで十分だ」
「元気に通ってるのはありがたいと、わたしも思いますけど……」
「兄上があそこを勧めたのは又三郎先生が飯田さまの知り合いで評判がいいと聞いたからだ。深い意味はねぇよ。それに、朔太郎の両親が望んでるのはあいつの幸せだけだろう。それともなにか? おめぇはさくがお殿さまにでもなって遠くへ行くのを望んでるのか?」
「まさか、そんな……」
「だったら、余計な心配しねぇで、見守ってやりゃいいんだよ。寺子屋を変えるなんざ、絶対に許さねえからな」
晃之進は飯に湯をかけて、さらさらとかっこんだ。
「……わかりました」
亭主にそう言われては、もうどうすることもできない。
仕方なくのぶは頷くが、全然納得できなかった。
胸の中は、黒い不安がぐるぐると渦巻いていた。
その日の夜、朔太郎が寝た後遅く帰ってきた晃之進にのぶは徳次の話をした。
夕餉の味噌かぶに彼は満足そうに「うめぇ」と唸って酒を飲む。
「いい話ですよね。わたし、徳次さんの今までの苦労が報われるんだって思ったら嬉しくて……。徳次さんは、少し自信がないようでしたけど。自分は店を任される器じゃないとか言って」
「まぁ、あいつならそう言いそうだな。だがその謙虚なところも旦那に必要だとおれは思う。奉公人あがりの旦那の中には急にえらくなって威張り散らすやつがいて、店がうまくいかなくなるもんだが、あいつならそんなことはねえだろう」
「わたしもそう思います。だから自信を持ってねとは言いましたが」
「あいつはのぶを慕ってるから、そう言ってやりゃ安心するだろう。だが、まぁ、あいつがひっかかっているのはそれだけじゃないかもしれねぇが……」
珍しく含みを持たせるような言い回しをする晃之進に、腕に飯をよそいながら、のぶは首を傾げる。
「どうやら養子の話と一緒に主人夫婦の遠縁の娘との縁談の話が来てるらしい」
「縁談? だったら、二重におめでたい話じゃないですか!」
彼ももうそんな年になるのかと、しみじみとする。はじめて店に来た時は十四だった。すでにしっかりしていたけれど、まだ子どもらしい雰囲気もあったのに。
もちろん祝言を挙げるにはまだ少し早いけれど、今から養子になり落ち着いた頃に代替わりをして、と考えるとむしろちょうどいいのではないだろうか。
一方で、晃之進の方は、そののぶの反応に意外そうに瞬きをして、箸を止める。そしてのぶの顔をしげしげと見ている。
そんな彼に、のぶは首を傾げた。
そんなに変なことを言っただろうか?
けれどそういえば、彼は徳次が引っかかっているのは、それだけじゃないと言ったのだ。
だとしたら、縁談が?
「どうかしたんですか?」
「どうかしたかって、そりゃあ……」
けれど晃之進はそこで言葉を切って、のぶの顔をまじまじと見る。いったいなになにが言いたいのかと、負けじとのぶも彼の顔をじーっと見る。が、よくわからなかった。
「おまえさん? なにが言いたいんですか?」
観念して問いかけると、晃之進は「まぁ、照れてるのかもしれねぇな」とどこか歯切れが悪く答えた。
「自信がねぇならなおさら、なにもかも変わるのは不安だろうし」
そう言ってのぶが作ったかぶの味噌和えを口に放り込む。
なにやら誤魔化されたような気がしなくもない、と思い、再び口を開きかけて、のぶはもうひとつ彼に聞こうとしていたことを思い出した。
「そういえば、おまえさん。ここのところお文ちゃんが家に来ないんです。身体でも壊したんじゃないかと心配で……。今日様子を見に行こうと思ってたんですけど、行けなかったんです。おまえさんお文ちゃん見かけたりしますか?」
晃之進は、これといった事件を追いかけていない時は、市中の見回りをしていることもよくある。同じように深川界隈を売り歩いているお文を見かけていないかと思ったのだが。
その問いかけに、晃之進は今度こそ驚いた、というように目を丸くしている。
「どうかしました?」
「……いや、二日前に八幡宮の近くで見たよ。元気そうだった。このところ永代橋の向こうで見かけることもあるくれえだから、忙しくて寄るひまがねえんじゃねえか?」
「そうですか……」
とりあえず元気そうだということにほっとする。けれどそれならば、どうして来てくれないのだろうと気持ちが沈んだ。
商売が忙しくて来られないのはいいことだ。でもそれならば店の前を通りかかる時にでも顔を見せてほしいと思うのは、わがままだろうか。
いきなり顔を見られなくなって寂しい気持ちでいっぱいだ。
徳次と同じで、お文ももう十七だ。
いつまでも子どもみたいにあれこれ食べさせようとするのぶが、うっとおしくなったのだろうか……
晃之進が「のぶは、すげえな」と呟いた。
「……おまえさん?」
「いやなんでもない。まぁ、そのうち顔を見せるだろうよ。お文にしても徳次にしても、のぶは親代わりみてえなもんだろう」
どうも煮え切らない晃之進の態度をやや不思議に思いつつ、のぶはとりあえず頷いた。
そして今夜彼に話そうと思っていた最後の事柄を口にした。
「おまえさん、さくのことで相談があるんです」
深刻な表情になったのぶに、晃之進が眉を寄せた。
「なんでえ?」
「まだいろはも終わっていないんですよ。あの子全然やる気がないみたいで」
「は? いろは? なんだ、そんなことか。いきなり深刻な顔になるからなにかと思えば。脅かすんじゃねぇ」
肩透かしを、くらったようにふっと笑う晃之進に、思い詰めていたのぶはむっとする。
「そんなことじゃありませんよ。松太郎さんはもうとっくに終わってるんですよ」
このままでは差は開く一方だ。又三郎は、それぞれの速さでやればよい言うがそれでも気になるものは気になる。
「だからなんだ。比べるもんでもねぇだろう」
「比べているわけではないですけど、でもやる気になれないのは問題ですよ」
父親と母親の違いだろうか、実に呑気なもんだとのぶは思う。もしかしたらこの遅れが朔太郎にとって取り返しのつかないことになるかもしれないのに。
子どもはおしえられたことを素直になんでも吸収する。さながらかぶのようなものだと思う。
調理次第でそこら辺のありふれた料理にもなるが、すりながしのように料亭で出すような料理になるのだ。
自分がうかうかしていたせいで、朔太郎が学べたことを取りこぼして将来苦労することになったらと思うと、どうしても今のままでいいとは思えない。
「んなもん、そのうちやる気になるだろうよ。それに今だって寺子屋へ行くのは楽しそうにしてるじゃねえか」
「いつまでも、やる気にならなかったらどうします?」
「生まれながらに勉学が合わねえやつもいるからな。こればかりはしかたねえ。でもま、なんとかなるよ」
「そんな無責任な……。おまえさんはそれでいいんですか?」
「いいもなにも、さくの人生はさくのものだ。おれのものじゃねえだろう」
突き放すような晃之進の言葉が、のぶの胸を刺した。
彼の人生は彼のもの。それはそうかもしれないが、親が言っていい言葉なのだろうか?
親は子を幸せにしなくてはならないのに。
のぶは朔太郎の将来が心配でたまらないのに、一緒に育てている晃之進に、この不安をわかってもらえなくてもやもやする。
「なんとかなるって……そういうわけにいかないんじゃないですか? さくは……生まれが生まれだから」
万が一にでも、二階の朔太郎に聞こえないように、のぶは声を落とした。
「わたし、朔太郎がこのまま田楽屋になったらなにやら申し訳ないような気がするんですよ」
「はあ?」
晃之進が眉をあげた。
「おまえさんの子として育ててもいるんですから、安居家とも繋がる子です。それなのに田楽屋になんかなったりしたら……」
もちろん安居家には倉太郎という立派な後継がいる。けれどこれから先のことは誰にもわからない。どうなるかはわからないのに、田楽屋にしかなれないように育ててしまっては、後々朔太郎が苦しむことになるかもしれない。
今日の徳次の姿が、大きくなった朔太郎と重なった。
「旦那さまはそのあたりも考えて、朔太郎の寺子屋に西禅寺ではなく、又三郎先生のところを勧められたんじゃないですか? あそこはお侍の子が多いですし」
むっつりと晃之進が黙り込む。彼がなにを考えているのかはわからないが、言い出したら止まらなくなって、のぶは胸に閉じこめていた思いを口にする。
「先日隣町に、新しい寺子屋ができたんです。しっかり仕込んでくださる厳しい方みたいで評判がいいんです。わたし、さくをそっちへやった方がいいような気がして。又三郎先生は優しいけど、さくに厳しく言わないでしょう? だからさくがいつまでたってもいろはを覚えないんですよ」
「馬鹿なこと言うんじゃねぇ」
晃之進に一喝されて口を閉じた。
「まだ通いだしたばかりで、厳しいもなにもねぇだろう。毎日元気に通ってるんだから、それで十分だ」
「元気に通ってるのはありがたいと、わたしも思いますけど……」
「兄上があそこを勧めたのは又三郎先生が飯田さまの知り合いで評判がいいと聞いたからだ。深い意味はねぇよ。それに、朔太郎の両親が望んでるのはあいつの幸せだけだろう。それともなにか? おめぇはさくがお殿さまにでもなって遠くへ行くのを望んでるのか?」
「まさか、そんな……」
「だったら、余計な心配しねぇで、見守ってやりゃいいんだよ。寺子屋を変えるなんざ、絶対に許さねえからな」
晃之進は飯に湯をかけて、さらさらとかっこんだ。
「……わかりました」
亭主にそう言われては、もうどうすることもできない。
仕方なくのぶは頷くが、全然納得できなかった。
胸の中は、黒い不安がぐるぐると渦巻いていた。
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