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If…《運命の番》エンドルート 番外編②
EX⑥. 『あの人』の今①
しおりを挟む〈 瑠偉視点 〉
「1ヶ月程前に、彰宏に会った」
「…え……」
「5年前に琳からの手紙を渡しに行って以来だな。温泉街でばったりと」
「……………」
「もう関係ない相手だと無視する事も出来たが、目が合ったし、挨拶して、少し話を…な」
「…元気に…してた…?」
「琳…。ああ、元気そうだったよ」
「…教えて…。『あの人』は今、幸せ…?」
琳が俺の目を真っ直ぐに見て訊いてきたー。
ーーーーーーーーーーーーーーー
約1ヶ月前ー。
俺は恋人の朔夜と、とある温泉街に来ていた。久し振りのお泊りデート。共に40代。賑やかな場所よりも、どうしても落ち着きと趣のある場所を選んでしまう。
一度、宿泊する旅館に寄って荷物を預け、2人で近くを散策している時だった。
通り過ぎようとした土産物屋の前に見慣れた姿。彰宏だった。彰宏もこちらに気付いたらしく、目が合うと頭を下げた。こうなると敢えて無視するのはおかしい気がして、俺も挨拶を返した。
「あっ! 大っきいおじちゃんだぁ!」
彰宏のすぐ横にいた子供が、子供らしく声を上げ、彰宏が制止するよりも早くこっちに駆けてくる。
「おじちゃん、こんにちは!」
「宏斗か?」
「うん! 僕!」
「おじちゃんの事、憶えてるのか?」
前に会ったのは5年前…宏斗が5歳の時だ。
「おぼえてるよ~。抱っこしてもらったの!」
「そうか」
俺は宏斗を抱き上げた。
「わぁっ!」
「重くなったな。何歳になった?」
「10歳!」
「すみません」
声がして宏斗から視線をずらすと、いつの間にか彰宏が近くまで来ていた。彼の少し後ろには祐斗が立ち、彰宏は2歳くらいの幼子を抱いていた。
「ご無沙汰しています」
彰宏が言うと、祐斗は言葉の代わりに軽く会釈する。
「ああ」
返しながら、宏斗を地面に下ろした。
「その子は2人目の子か?」
「はい。晴斗といいます」
「晴斗か」
晴斗の頭を撫でると、晴斗はにぱぁと笑った。
宏斗もそうだったが、晴斗も人見知りしないらしい。
「家族旅行か?」
「あ、はい。瑠偉さんもご旅行ですか?」
「ああ。恋人とな」
俺の斜め後ろに立つ朔夜と、会釈だけの挨拶を交わす彰宏。
実は朔夜と彰宏は面識があり、彰宏は俺と朔夜が私生活では恋人同士だという事を知っている。
ひと通り挨拶を交わした後は、このまま別れる事も出来たが、俺の方から「少し話せるか?」と言った。
思い掛けない場所で偶然再会したが、この先は本当に二度と会う事はないかも知れない(皆無とはいえないが)。だからどうしても、今だからこそ話しておきたいと思った。
少し迷いを見せたが、彰宏は頷いたー。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「琳に、ありがとうと伝えてほしい、と言伝を頼まれた。それと、ごめんなさい、と、俺も君の幸せを祈ってる、だそうだ」
「っ…!」
「今だから言えるが、5年前、琳からの手紙を渡した時の彰宏は後悔のただ中にいた。祐斗とも結婚はしていなかった。あいつなりに傷付き、と同時に罪悪感に苛まれていた。きっと、琳がリオンと番って番契約が強制解除された事による喪失感もあったんだろう。あいつの琳への愛は本物だったから。想いが強ければ強いほど感情に影響するらしいからな。
そんな時に琳から届いた手紙。 彰宏は、琳からの手紙に背中を押してもらったそうだ。このままではいけない。祐斗と向き合い、共に生きると決めた。自分達が犯した過ちを決して忘れる事なく、それでも、前に進もう…と」
『本当は手紙ででも感謝と謝罪の言葉を伝えたかったけれど、君の幸せに、ただの手紙だとしても俺から送られるものは不要だと思うから、瑠偉さんに伝言を頼みます』
「…だそうだ」
俺はありのままの彰宏からの言葉を伝えた。
琳は静かに涙を流していたー。
~~~~~~~~~~~~~~~
☆少し長くなりそうだったので、「『あの人』の今」、2話に分けます。その結果、1話辺りが少し短くなりました…。
②は明後日(11/24)更新予定です(書きながらの投稿なので連日更新出来ず、すみません…)
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