【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade

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《本編》

40. 暴露(彰宏side(15)

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「…先生、俺には愛するつまがいるんですよ。Ωで番のつまが」
「え…?」

  医師が声を上げる。大方、俺が既婚者だとは思わなかったんだろう。俺が既婚者なら、自然、祐斗は浮気…いや、不倫相手という事になるのだから、それは驚くだろう。

「祐斗は愛人です。には」
「……………」

  俺がはっきり言えば、医師は口を噤む。
  この時の俺はそうとうに追い込まれていた。そこに放たれた医師の。それによってたがか外れた俺は、吐露していた。

  約1年半前、祐斗の起こした犯罪…フェロモンレイプにより、半ば強制的に番契約を結ばされた事。フェロモンレイプは犯罪ではあるが、話し合いで折り合いをつけようとしたところ、祐斗はΩ療養施設に入れると祐斗の親が言った事。療養施設に入るという事は家族の縁を切るどころか俗世からの隔離を意味する。望まぬとも。不憫に思い、別に家を用意して面倒を見る事にした事。発情期は必要最低限だけ共に過ごすが、あとは週に1度だけ様子を見に来るだけ、と契約書も交わした。祐斗も同意したのだ。同意した上での道を選んだ。同意しなければ迷わずだったから。祐斗と関わるの最低限、当たり前だが俺の生活はあくまでつま優先。
  それが実際にはどうだ。つまと祐斗の発情期が半分被っていたせいで、誰よりも一緒に過ごしたい発情期のつまに拒絶された。つまに拒絶される発情期を数度繰り返し、気付いたつま優先どころかしている事実。遅過ぎる気付きではあっても、契約自体が既に反故にされている事に気付いた俺は、祐斗の方を放置すると決めた。『発情期は必要最低限を共に過ごす』と契約項目にはあるが、契約書の最後にはとして『尚、なる時もつまを最優先し、その限りではない』と記した。つまり、つまを蔑ろにしてまで俺が契約を履行する必要はない。それにも祐斗は同意した筈だ。ちゃんと契約書を読んでいれば、だが。けれど祐斗は、発情期に行かなかった俺を捜して街中を徘徊し、警察に保護される始末。結局、放置出来ず…。
  それでも俺は、このままではつまと関係が壊れてしまうと、祐斗と話をしなければ…と思ったその矢先の祐斗の妊娠。しかも、知らぬ間に子種をという計画的犯行。

  妊娠の真相を話した下りあたりで医師と看護師を見れば、変わらず驚きの顔をしていた。

  に妊娠した祐斗。堕胎出来ないと言われ、挙句、医師に遠回しにとも言われ、毎日仕事終わりに祐斗の食事を調達して持って行く為に自宅に帰り着くのは深夜。つまとは平日の朝と土日しか一緒にいられない。その上、発情周期になると決まって体調を崩す祐斗の看病の為に、変わらず発情期のつまとは共に過ごせない。
  此処までくればもう、つまとの関係修復をに邪魔されていると思うくらいだ。
  それでもまだ、一縷いちるの望みは持っていた。祐斗が言ったからだ。『子供が生まれたら子供と静かに暮らすから。邪魔はしないから』、と。
  だが、いざ生まれれば、子供の世話もまともに出来ない祐斗。医師は俺にもっと育児に関われと言う。「お父さんなのだから」、とー。

つまとは1年以上、発情期を一緒に過ごせていないんですよ。祐斗とは毎回過ごしているのに。つまは祐斗の存在に気付いてるんです。俺が初めて祐斗と対峙した現場にいましたから。だから、俺が纏う祐斗のフェロモンを感じ取って拒絶するんですよ。夫であり番の俺がいながら、彼は発情期を独りで耐えている。先生、番に放置されたΩがどうなるか、先生なら解りますよね? 俺が祐斗を引き受けたのは、を知ってるからです。たとえ必要最低限であっても…会うだけでも、Ωは安心出来るから。なのに、現状、俺が放置しているのはつまの方です。愛しくて…欲しくて…自分で望んで番になったのに…。一生愛し、守ると誓ったのに…。
  何故ですか? 俺が愛するを放ってまで、祐斗を優先しなければならない理由は何ですか?」

  こんな事、彼らに言っても意味のない事は解っていたけれど、一度溢れ出した言葉は止まらない。
  俺の問い掛けに彼らはきっとこう言うだろう。「知らなかったから…」と。だが、祐斗は知っていた。俺が既婚者である事も、つまを愛している事も。そして、自分が優先されている事も。
  知らなかったら何を言ってもいいのか。知っていても、医師が提案してくれたから…と甘えてもいいのか。祐斗は自分の立場を理解していると思っていた。実際理解はしているのだろうが、理解する、と、わきまえる、は違うという事か。
  患者の私生活に口出しは出来ないと言いながら、俺を無責任だと責める医師。医師に言われるままに俺を縛り付ける事を当然の様に受け入れる祐斗。
  あまりの理不尽さに苛立ちを感じながら、それでも妊娠している祐斗を放っておけなかった俺が悪いのか……。

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