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疑④
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――動きづらい。
その言葉に識は納得した。確かに好奇の的にしかならないだろう。それと同時に、洋壱の両親が心配にもなって来た。
(洋壱の両親のとこに、好奇でプライベートにまで踏み込むような野次馬が行ってなきゃいいんだが……)
「あぁそうだ、進藤さん。久川さんのご両親については、安全を確保できる場所に一時的に移動して頂いています。特に奥様のご体調が……ね?」
朝倉から洋壱の両親について教えられ、安堵するとともに二人が狙われている可能性も考慮していると言う事なのだとも理解した。それを踏まえた上で識は朝倉に尋ねてみる事にした。
「犯人の目的はなんだと思いますか?」
「そうですねぇ……少なくとも金目当てではないかと。まぁ個人の見解になりますがね?」
「個人……? 捜査本部の方針ではないと?」
「いえ、捜査本部でもその見立てにはなっているのですが……状況が状況なだけに、あらゆる可能性を考慮してしらみつぶしに捜査しているのが現状なのですよ」
「そうですか……納得しました」
朝倉との会話が途絶えた識は、空を見上げた。今日も天気は晴れている。もっとも風が強くて肌寒い事には変わりなく、通りすがるサラリーマンや若者達が寒そうにマフラーの位置を直したり手袋をはめた両手をすり合わせたりしているのが視界に入る。そんな光景を見つめている識に歩き出した朝倉が振り返り声をかけて来た。
「進藤さん、行きましょうか」
「次はどこへ……? 今のところ、俺は貴方に同行しているだけです。正直、何も出来ていないとしか思えません」
「そんな事はありません。貴方でなければ気づけない事がやはりありましたしね?」
「俺でなければ……? どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ。とりあえず、ここを離れましょうか」
朝倉に促され、彼に続く形で識も歩き出した。ビルから少しづつ離れて行くと二人は公園の方へ向かって行った。
しばらく歩いて、公園内に入ると朝倉が口を開いた。
「これから、私の車で現場に向かおうと思っています。進藤さんにはそこにも同行して頂きたいのですよ」
「現場……つまり洋壱の自宅ですか……」
正直、あの現場写真を見た後では見知った洋壱の部屋とは言え、入りづらいと思った。だが、手がかりの乏しい現状では確かに朝倉の言う通り、識も現場を実際に見るべきだろう。
「わかりました。ですが……そもそも民間人の俺が、立ち入らせてもらえるんですか?」
「そこはご安心を。既に手筈は整えてありますので」
「随分と手際がいいですね? ……貴方に踊らされている気分だ……」
「そんな事はありませんよぉ。気にしすぎでは?」
(本当か……?)
朝倉本人に否定されたからこそ、識はその思いを払拭できなかった。そも、出会ったばっかりの人間の言葉をそう簡単に信用できるはずもなく……特に友を喪ったばかりであれば尚更とも言えるかもしれない。
「では、このまま駐車場へ向かいますがよろしいですか?」
「あ、はい。構いません……」
「ありがとうございます。では、車の方へ向かいましょう」
気付けば公園内の駐車場まで着いていたため、そのまま朝倉の案内で彼の車へ向かう。黒いセダン車のキーを朝倉が解錠し、運転席に座る。識は少し悩んだが、朝倉から手招きで指定されたのもあり、助手席へと座った。
シートベルトを二人共着けたのを確認すると、朝倉が車を走らせた。
その言葉に識は納得した。確かに好奇の的にしかならないだろう。それと同時に、洋壱の両親が心配にもなって来た。
(洋壱の両親のとこに、好奇でプライベートにまで踏み込むような野次馬が行ってなきゃいいんだが……)
「あぁそうだ、進藤さん。久川さんのご両親については、安全を確保できる場所に一時的に移動して頂いています。特に奥様のご体調が……ね?」
朝倉から洋壱の両親について教えられ、安堵するとともに二人が狙われている可能性も考慮していると言う事なのだとも理解した。それを踏まえた上で識は朝倉に尋ねてみる事にした。
「犯人の目的はなんだと思いますか?」
「そうですねぇ……少なくとも金目当てではないかと。まぁ個人の見解になりますがね?」
「個人……? 捜査本部の方針ではないと?」
「いえ、捜査本部でもその見立てにはなっているのですが……状況が状況なだけに、あらゆる可能性を考慮してしらみつぶしに捜査しているのが現状なのですよ」
「そうですか……納得しました」
朝倉との会話が途絶えた識は、空を見上げた。今日も天気は晴れている。もっとも風が強くて肌寒い事には変わりなく、通りすがるサラリーマンや若者達が寒そうにマフラーの位置を直したり手袋をはめた両手をすり合わせたりしているのが視界に入る。そんな光景を見つめている識に歩き出した朝倉が振り返り声をかけて来た。
「進藤さん、行きましょうか」
「次はどこへ……? 今のところ、俺は貴方に同行しているだけです。正直、何も出来ていないとしか思えません」
「そんな事はありません。貴方でなければ気づけない事がやはりありましたしね?」
「俺でなければ……? どういう意味ですか?」
「そのままの意味ですよ。とりあえず、ここを離れましょうか」
朝倉に促され、彼に続く形で識も歩き出した。ビルから少しづつ離れて行くと二人は公園の方へ向かって行った。
しばらく歩いて、公園内に入ると朝倉が口を開いた。
「これから、私の車で現場に向かおうと思っています。進藤さんにはそこにも同行して頂きたいのですよ」
「現場……つまり洋壱の自宅ですか……」
正直、あの現場写真を見た後では見知った洋壱の部屋とは言え、入りづらいと思った。だが、手がかりの乏しい現状では確かに朝倉の言う通り、識も現場を実際に見るべきだろう。
「わかりました。ですが……そもそも民間人の俺が、立ち入らせてもらえるんですか?」
「そこはご安心を。既に手筈は整えてありますので」
「随分と手際がいいですね? ……貴方に踊らされている気分だ……」
「そんな事はありませんよぉ。気にしすぎでは?」
(本当か……?)
朝倉本人に否定されたからこそ、識はその思いを払拭できなかった。そも、出会ったばっかりの人間の言葉をそう簡単に信用できるはずもなく……特に友を喪ったばかりであれば尚更とも言えるかもしれない。
「では、このまま駐車場へ向かいますがよろしいですか?」
「あ、はい。構いません……」
「ありがとうございます。では、車の方へ向かいましょう」
気付けば公園内の駐車場まで着いていたため、そのまま朝倉の案内で彼の車へ向かう。黒いセダン車のキーを朝倉が解錠し、運転席に座る。識は少し悩んだが、朝倉から手招きで指定されたのもあり、助手席へと座った。
シートベルトを二人共着けたのを確認すると、朝倉が車を走らせた。
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