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彼女が出ていくその前は
シェリーは嘘を一つ、つきました。
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私はこの結婚に夢を抱きすぎていたのかも知れない。
初めて正妻であるユカリナ様と対面した日。なんて綺麗な人だろうと思った。品があり、儚げで、華奢ながらも出るところはでている。同じ女性として憧れざるを得ないご容姿だった。そして内面も、ユカリナ様は侯爵家の妻としてけちの付けようがないほど完璧な方だった。
そして恥ずかしく思った。あぁ侯爵家にはこう言う女性が嫁ぐべきだったのねと。
ただただ、結婚相手を探していた私。一応長女は同じ子爵家の嫡男に嫁いだけれど、私も含めたそれ以降の姉妹には決められた婚約者はいなかった。運よくディランと結ばれたけれど、本来こんなところにいるべき女じゃないんだって事くらいは分かる。
私にはたいした教養はない。下位貴族の三女。家庭教師を付けられるわけもなく、母にはどうせ正妻になる訳ではないのだから、愛嬌があればいいと言われ恋愛のテクニックだけを教えられた。
ユカリナ様はこの屋敷でのルールや、侯爵家の人間としての振舞い方を教えて下さったけど一度ではとても覚えられない程の細かい決まり事だった。そこで私はまた自信をなくした。夜は眠れなくなり、食事もほとんど食べられなくなってしまった。そんな私を支えてくれたのはディランだった。広すぎて落ち着かない屋敷を出て、別邸に住まわせてくれただけではなく、頻繁に会いに来て励ましてくれた。やっぱり、この人と結婚できて良かった。ディランに様を付けなければいけなのは気が付いていたけれど、戦場では呼び捨てにしていたし、ディランとの距離が近くなる気がしてやめられなかった。
別邸ではとても気持ちが落ち着いた。子爵家を思わせる小ぶりな屋敷は侯爵家の敷地内にあり、本邸とは目と鼻の先だけど、間に生える大きな木が互いの屋敷を隠していた。ここにいればユカリナ様とディランがお二人でいるところを見なくて済む。なによりもユカリナ様と比べられなくて済むんだから。
そんな私にディランは近く祝勝会がある事を、そこにユカリナ様と参加されると教えてくれた。戦地ではよかった。ディランを独占できた。ここはあの戦地よりも、私の敵が多いような気がしていた。正妻にしか様々な権限が与えられないのは分かってはいたけれど、ユカリナ様が屋敷のあれこれを仕切っている中、私は何の意見も求められない。
だから祝勝会には無理を言って参加させてもらった。久しぶりに私の味方であろう人たちに会いたかったから。でも、これは貴族として歓迎されない行為だったようで、ひどく顰蹙を買った。それ以降、ディランは、本邸で多くの時間を過ごすようになってしまった。私のわがままを聞いてしまったせいで、立場を危ぶめてしまったのかもしれない。もうあなたにもっと会いたいなんて自分からは言えなかった。そんな時、ユカリナ様は妊娠された。
しばらくして、ある噂が耳に入った。ユカリナ様が、子供が生まれたら私を追い出すつもりでいるのだと。
この幸せな生活を壊したくない。私は必死だった。
「ユカリナ様が妊娠なさってから、私の事はお忘れでしたか?」
私にはあなたしかいないの。
「とても寂しかったです」
あなただけなの。
「私…」
正妻なんて狙ってない。
「ちゃんと理解しました」
正妻の権限なんていらない。
「第2夫人の心構えを」
地位も名誉もいらない。
「正妻を、ユカリナ様をたてる心づもりもあります」
あなたの愛情だけでいい。
「だから…」
どうか私にも…
「私も子供が欲しい」
ディランは望みを叶えようとしてくれた。私の元に来てくれる事多くなった。私もちゃんと努力した。嫌いな勉強もちゃんとしたし、第2夫人として、ユカリナ様をたてているつもりでいた。
でも私は無理がたたったのか体調を崩し倒れてしまった。貧血だった。診てくれた医師に告げられる。
「妊娠しています」
嬉しかった。怖かった。
だから私は嘘をつく。もしかしたら嘘ではないかも知れない嘘。可能性は五分五分
「あなたの子供ができました」
最低だって事は分かってる。でもあなたの心が離れるのが怖かった。
初めて正妻であるユカリナ様と対面した日。なんて綺麗な人だろうと思った。品があり、儚げで、華奢ながらも出るところはでている。同じ女性として憧れざるを得ないご容姿だった。そして内面も、ユカリナ様は侯爵家の妻としてけちの付けようがないほど完璧な方だった。
そして恥ずかしく思った。あぁ侯爵家にはこう言う女性が嫁ぐべきだったのねと。
ただただ、結婚相手を探していた私。一応長女は同じ子爵家の嫡男に嫁いだけれど、私も含めたそれ以降の姉妹には決められた婚約者はいなかった。運よくディランと結ばれたけれど、本来こんなところにいるべき女じゃないんだって事くらいは分かる。
私にはたいした教養はない。下位貴族の三女。家庭教師を付けられるわけもなく、母にはどうせ正妻になる訳ではないのだから、愛嬌があればいいと言われ恋愛のテクニックだけを教えられた。
ユカリナ様はこの屋敷でのルールや、侯爵家の人間としての振舞い方を教えて下さったけど一度ではとても覚えられない程の細かい決まり事だった。そこで私はまた自信をなくした。夜は眠れなくなり、食事もほとんど食べられなくなってしまった。そんな私を支えてくれたのはディランだった。広すぎて落ち着かない屋敷を出て、別邸に住まわせてくれただけではなく、頻繁に会いに来て励ましてくれた。やっぱり、この人と結婚できて良かった。ディランに様を付けなければいけなのは気が付いていたけれど、戦場では呼び捨てにしていたし、ディランとの距離が近くなる気がしてやめられなかった。
別邸ではとても気持ちが落ち着いた。子爵家を思わせる小ぶりな屋敷は侯爵家の敷地内にあり、本邸とは目と鼻の先だけど、間に生える大きな木が互いの屋敷を隠していた。ここにいればユカリナ様とディランがお二人でいるところを見なくて済む。なによりもユカリナ様と比べられなくて済むんだから。
そんな私にディランは近く祝勝会がある事を、そこにユカリナ様と参加されると教えてくれた。戦地ではよかった。ディランを独占できた。ここはあの戦地よりも、私の敵が多いような気がしていた。正妻にしか様々な権限が与えられないのは分かってはいたけれど、ユカリナ様が屋敷のあれこれを仕切っている中、私は何の意見も求められない。
だから祝勝会には無理を言って参加させてもらった。久しぶりに私の味方であろう人たちに会いたかったから。でも、これは貴族として歓迎されない行為だったようで、ひどく顰蹙を買った。それ以降、ディランは、本邸で多くの時間を過ごすようになってしまった。私のわがままを聞いてしまったせいで、立場を危ぶめてしまったのかもしれない。もうあなたにもっと会いたいなんて自分からは言えなかった。そんな時、ユカリナ様は妊娠された。
しばらくして、ある噂が耳に入った。ユカリナ様が、子供が生まれたら私を追い出すつもりでいるのだと。
この幸せな生活を壊したくない。私は必死だった。
「ユカリナ様が妊娠なさってから、私の事はお忘れでしたか?」
私にはあなたしかいないの。
「とても寂しかったです」
あなただけなの。
「私…」
正妻なんて狙ってない。
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「だから…」
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「妊娠しています」
嬉しかった。怖かった。
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