あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶

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彼女が出ていったその後は

侯爵夫人は見つけてしまった

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 私がその手紙を見つけたのは偶然だった。


 ユカリナが離婚届を置いて出て行ったと聞いて、王都に駆けつけたその日、ディランは伯爵領に行っていて留守だった。シェリーはまた別邸に閉じこもってしまったらしい。

 屋敷内ではまだユカリナは実家で療養していると認知されている。当然です。妻から離縁を申し出るなんて、侯爵家の恥です。子供が流れてしまったのです。それはショックでしょう。だからと言って離縁だなんて。まだ若いのだからこれから先にも、いくらでも期会はあると言うのに。しっかりとしていた娘だったから安心していたのに、たかだか夫が第2夫人を娶っただけで憔悴するなんて。戦えばいいではありませんか。

 私はエルバート侯爵家の正妻であり、ディランの母でもあります。私は息子を三人産みました。第2夫人は男児一人と娘一人を産みました。関係はいたって良好です。夫の寵愛を争う必要はなかったですからね。夫の心は今も一人の女性に向けられている。夫の弟の妻。戦争で亡くなった義弟の後を追って自ら命をたったその女性。卑怯ですよね。夫の心を奪ったままこの世を去るなんて。夫の記憶の中で美化された世界でのみ生きる、年も取らないあなたが相手では、私は戦いようもなかったのですから…



 今は、客室の一室でディランの帰りを待っている。ここは、シェリーがわずかな間使っていた部屋らしい。きっとディランはまだ数日は帰らないでしょうと、暇つぶしに本を読もうと本棚へ向かう。そして、本の隙間にあったこの手紙を発見した。
 

『シェリー様。
いかがお過ごしでしょうか。私は故郷の村に到着しました。手紙を書くかどうか迷いましたが、屋敷を出る前のシェリー様のご様子で、勘違いをなさっていると思い、やはり私の口からお伝えしなければと思いこうして手紙を書いています。あの事件は私が故意に起こした物ではありません。不運な偶然が重なってしまった事故です。言い訳をするつもりではありません。私が無知だったのがいけないのですから。しかし、いくら私がシェリー様の事を思っていても、さすがにユカリナ様を害そうなどとは思いません。それだけは信じて下さい。ですから、シェリー様が気に病む必要はありません。あの一度の過ちも、私達の胸にしまっておけばよいのです。あなたが、元気な子供を産み、幸せに暮らして下さることを祈ります。』


 手が震える。どういう事…シェリーのお腹の中の子供は、ディランではないかもしれないと言うとこ?

 あぁなんてことでしょう…誰に話したら…ディランはまだ戻らない。執事に話したらもみ消されるかも知れない。彼はシェリーに肩入れしすぎている。


 そう…護衛長がいいわ。兵士時代にその力を夫に認められ、侯爵家の護衛に付いた彼ならば信頼できる。
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