あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶

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彼女が出ていったその後は

侍女は疑問に思う

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 ユカリナ様が屋敷を出て行かれた。

 あれだけディラン様を思っていたユカリナ様が離縁を決意されたのだ。よほど、子供を亡くされたのがショックだったのだろう。私はこの逃走劇に加担している。ユカリナ様が屋敷を出られる夜、使用人用の通路を通るからと言われ、その時間通路に誰も出ないように細工したのだ。でも…本当にこれで良かったのだろうか…


 私はこの屋敷で侍女をしている。ユカリナ様が嫁いで来られてから私はユカリナ様担当になった。ユカリナ様は伯爵家からもお一人侍女をお連れになっていたが、第1夫人という立場と、早く侯爵家に慣れるようにと私と他にも数人がお仕えすることになった。


 ユカリナ様が出て行かれた後、使用人に事実は伏せられている。執事は『療養のためにご実家に戻られました』と言い、私にはディラン様が帰還されるまで黙っているようにと念を押された。主様が戦争に出立された日から、侯爵邸には国から衛兵が数名入れ替わりで在住している。人質にとられると戦況に影響を与えてしまうからだ。きっとその方たちに、正妻が出て行ったなどと話すことなどできないからだと思っていた。

 私は、新たにシェリー様にお仕えするようにと指示を受けた。シェリー様は、あの事件のあとからふさぎ込んだままだ。お腹も少しずつ目立ってくる中、反対に手足は痩せて行った。シェリー様に対しては良い印象は持っていなかったが、さずがに心配になってしまう程、シェリー様は何かに怯えているようだった。

 それがある日から、シェリー様は元気を取り戻された。私があの手紙を届けてからだろうか。あれは誰からの手紙だったのでしょう。男性の字の様でしたが、差出人のお名前はありませんでした。

 ディラン様が帰還されてから、この屋敷ではおかしなことばかりが起こる。どこからともなく双方の奥方に有利、不利となる噂が流れ、ついにはあの事故。

 誰かに相談したかったものの、屋敷中が混乱していて誰に話したらいいのか分からない。逃走の手助けをしていることから咎められる可能性があり、事情を知らない者には言いづらい。

 執事は事情を知っているけど、あの方はシェリー様を分かりやすく贔屓している。贔屓というよりは盲信しているようにも見える。


 そんな時だった。護衛長に声をかけられたのは。

「今からする話は誰にも言わないで下さい」

 なんでしょう…

「私は今、秘密裏にある事を調べています」

 それはもしや

「あの事故の件です」

 あぁやはり。

「その前からいろいろな噂が流れていましたが」

 シェリー様が妊娠されてしばらくしてから流れ出したあの噂。

「その噂の出所についてもです」

 私は確か、ユカリナ様付の侍女から聞いた。

「実は事件後に変更された業者の男が言っていたのですが」

 ミスをしたから変更されたのでしたね。

「前に使っていた業者から」

 あり得ない失態です。

「あの毒草は注文されたと聞いていると」

 !!!!!

「ユカリナ様はまだご実家から帰られませんが、お戻りになる前に不安と成り得るものは取り除いておきたいのでご協力ください」



 だから私は話した。ユカリナ様の逃亡に手を貸したこと。ユカリナ様は療養ではなく、離婚届を置いてでていった事。執事はそれを知っていること。窓から見えたユカリナ様に手を貸した門番が急に退職したこと。


 一体この屋敷はどうなってしまうのでしょう
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