王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。

タヌオー

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010 頭痛

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次の日の午前中から、さっそく仕事に取り掛かることにした。
朝食はパンと卵焼き、そして濃いめのコーヒーを一杯飲んで、身支度を済ませる。
鏡の前に立ち頭髪に乱れがないか確認していると後ろから「なにカッコつけてんですか」というレミーの声が聞こえたが、まあ、いい。

まずは大通りの教会の前でマリアたち3姉妹と落ち合った。
やはり昨夜の服装はステージ衣装だったのだろう。
今日は3人とも落ち着いた服装だが、それでもどこか華やかで3人揃っていると人混みの中でもよく目立つ。

「今日はミサがあるみたいなので、とりあえずこの中から探しましょう」

教会に入り、なるべく真ん中あたりの適当な席につく。
教会の中はそこまで広くはない。人数は多いが、充分に射程距離の圏内だろう。

昨夜やった精神感応テレパシーの応用で、「バルガルド」「龍醒香薬ドラグドラッグ」という言葉に記憶の奥底が反応する人物がいないか確認する。

昨夜レミーに言われた通り、この使い方は確かに通常の精神感応テレパシーとは違う。

便宜上ではあるが、記憶の反応を見るだけのことは記憶探知マインドディテクション、特定の記憶を呼び起こすなどして心を動かすことは精神操作マインドオペレーションと呼ぶことにした。
そして、カーライル王国に来るまでの旅路でサイクロプスを殺したものは精神破壊マインドブレイク
俺はどれも精神感応テレパシーの一種だと思うのだけど、「絶対違いますよ」と言い張るレミーの主張に従った形だ。

記憶探知マインドディテクションなら、特定の記憶を呼び起こしたりメッセージを送り込んだりするわけではなく、記憶の反応を見るだけなので、やられているほうは特に何かされたという感覚は持たないはずだ。

5人…10人…と記憶探知マインドディテクションを行っていく。

神父の説教が続いている。

ただし、口では「神様はいつもあなたを見ています。それは戒めでもあり愛でもあり…」などと話しているが、心の中の「あの信者のおっぱいすげえな」という声が記憶探知マインドディテクションのついでに聞こえてしまったのは内緒だ。
ちなみに、「あの信者」とはマリアたち3姉妹の次女、エレン。

俺が神父様の言葉で一番共感できたのはその心の声だったことも内緒だ。

それはともかく、教会にいる全員の記憶探知マインドディテクションが完了した。

小声で「終わったよ」とマリアに伝え、神父の説教に眠りこけていたバーバラを起こし、席を立って教会を出た。…父の仇を探してる中で寝るなよな。

ここには「バルガルド」や「龍醒香薬ドラグドラッグ」というキーワードに反応する人間はいなかった。

その後も教会に続き、洋服屋やレストランなどの各種店舗を探し回り、広場や道すがらでも記憶探知マインドディテクションを行ったが、見つからない。

ただ、裏町の倉庫街まで歩いてきた時だった。

まだ夕暮れには少し早いが背の高い倉庫に日差しが阻まれて薄暗い路地に差し掛かったあたり、突然の頭痛が俺を襲った。

歩みを止めて頭を抱えて膝をつく。頭の中に映像が流れ込む。

男の手。札束。小さな紙袋、白い粉。ニヤニヤ笑うチンピラ風の男たち。神経質そうな顔のギルド職員の男。ギルド職員。俺に「平民のくせに通信魔術なんかで食っていこうとしたのが間違いだよ」と言った男。

「大丈夫ですか!?」

マリアが俺の身体を支える。

「…大丈夫、大丈夫だよ」

頭痛はもう治まっている。一瞬の頭痛だった。

「すいません、ご無理させてしまいましたね。魔力切れですか?」
「…いや、違う。魔力はまだ1/3も消費してない」

確かに使い慣れない記憶探知マインドディテクションを朝からずっと使い続けているが、そんなことで俺の魔力が尽きるわけがない。
ラノアール王国での10年間。毎日14時間以上の過重労働。こんな程度で魔力が尽きるようでは仕事になるはずがない。

「それなら、何かご病気ですかね…」

心配そうに次女のエレンが俺の顔を覗き込む。

「いや、それも違うと思う。たぶん、記憶探知マインドディテクションを発動したまま歩いていたせいで、この場所の残留思念が流れ込んできたんだと思う」

残留思念。この能力もまた記憶探知マインドディテクションとは違う。
残留思念感応サイコメトリーといったところか。

頭痛とともに流れ込んできた映像は、おそらくこの場所で行われた龍醒香薬ドラグドラッグの取引の場面だ。

あのギルド職員め、俺に偉そうなこと言いながらヤク中だったんじゃねーか。
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