あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第3幕 第23話 船を売って下さい

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「大海の覇王たるタータイルクッガ様並びに永久の伴侶たるキンガダイルラーガ殿の帰還、我ら海の旅人たるクーランタークが喜び申し上げます」
風早が船に梯子を掛け、雄大な碧い鯨のような姿から人型へ変わり船の先で挨拶を交わした。
『きゅ』『ぱしゃ』
「そのお姿は正しくタータイルクッガ様、永き貴方の不在は海を新たな時代へと運び、姿を変えました。我々クーランタークは再び貴方が海を支配し嘗ての静かな海に戻る事を望みます」
『きゅ』『ぱしゃ』
「あ、フラれたわ」
「…そうですが、新しい生の悦び、新たな航路を進むと…」
懐記がきゅうとふーが拒否したのを周囲に伝え、クーランタークの長、切れ長の海底の様な暗い蒼い瞳と腰まである長い髪を貝殻の緻密な細工の髪飾りで束ねた青年が深く息を吐いた。
「永き旅路、挨拶だけとは物寂しいですね。昼の支度を整えています、良ければ如何ですか?」
「おお、《アタラクシア》の救世主の皆さま並びに空の覇王たるドラゴンの皆さまと食事が出来るとは光栄です。ご挨拶が遅れました、私はこの群れの長フユーゲルと申します」
千歳が営業スマイルを浮かべ食事に招けば、長フユーゲルと一族の者達も賛同し恭しい礼を取る。
「ん、食べられない物とかは?」
「特にありません」
「では、こちらへ」
どことなく興奮を隠しきれないクーランタークの一族、プールで子供たちと遊ぶ海精のヒュール達に驚きながら船の中へと足を踏み入れた。

「ヒュールに妖精王や魔王までいるとは…異界からの救世主の皆さまは本当に偉大です」
大食堂の席に着きフユーゲルやその一族達も感嘆としている、テーブルに並んだ食事にも目を輝かせていた。
「さ、どうぞ」
千歳が微笑み食事が始まった、魚ダンジョンのドロップ品の調味料を使った料理、肉ダンジョンのドロップ品のステーキ、柔らかいパンに魚介のスープにチーズの盛り合わせに海藻のサラダとデザートに果物の盛り合わせとアイス。
「長、見たこともない品の数々です」
「す、すごい」
「本当にたべても良いのですか!?」
「ああ、良い香りです」
「折角の厚意だ頂こう」
フユーゲルを始め、一族の者達全員が一斉に食事を開始し所狭しと並んだ料理が次々なくなり崇幸のスキルコンビニからもパンやサンドイッチを出し、懐記達も追加やストックの料理を出し尽くし、果物も畑で散々収穫したカノリや晴海が出したアイスも綺麗に無くなり、途中で詠斗や率、綴と大河にジラやチグリス達が買い出しに向かい、カーク達に連絡し肉ダンジョンの肉を頼み、グローリーとティス、チグリス、ナイルに千華が魚ダンジョンに向かった。

「も、申し訳ない!ここ最近録に食べる事も出来ず」
「いえ、気持ちいい食べっぷりでしたね。事情を聞いても?」
恥ずかしそうに俯くクーランターク一族に千歳が訳を尋ねる、モギのミルクを配り落ち着いたフユーゲルがぽつりぼつりと話を始めた。
「我々は料理…知識はありますが普段は海の魚等を補食しながら海を進む旅人です、ガーランバラーダ…北海の支配者一族の1名が継承戦争に敗北し北海を追われこの海域に潜んでいるようで魚は喰われ住処を追われ、我々の食事もままならず」
「なるほど、それは災難でしたね。後5日程この船旅をこちらは《ホウラク》まで続けます、良ければこの船で休んでいかれますか?食事も出しますよ」
「そ、その事なのですが良ければこの船を我が一族に売っては頂けないでしょうか?図々しい頼みだとは思いますが、私も一族を守る為に手段を選べません。タータイルクッガ様が新たな海の時代をもたらす標とし、我々も新たな生活形態を築いていこうと思います。勿論我々は海の旅人として一族の財宝を差し出すつもりでいます」
「それは出来ません、この船は皆の意見を出し合い造り上げた宝です。僕達にはどんな至宝よりも尊い宝です」
千歳が即答する、厨房で崇幸らラウラスと話を聞いていた懐記は、冷たく突き放すような言葉を千歳が投げても彼らを見捨てたりはしないだろうと踏んでいた。
「差し出がましい真似を…申し訳ない」
「千歳…《アタラクシア号》は渡せないが…船は造ろう…」
「千眼さんならそう言うと思った、船造りハマったみたいだしね。小型船も造る位だからね」
千眼が千歳の隣に立つ、千歳が笑い《アタラクシア号》ではなく彼らの為に船を造る事を提案した。
「ま、魔王が船を…しかも我々の為に?」
「好きに造れる自由に…材料も…ある」
「千眼さん、俺も手伝うよ。楽しかったし」
「それならばヒュール達の意見も取り入れて彼らと生活を共にし海で守ってくれませんか?」
「そ、それは願ってもない。彼らは護りが固い海での幸運の吉兆!だ、だがそれに見合う程の物を我々は用意出来ない」
「俺達の仕事を手伝ったりしてくれたらいいんじゃないか?給料も支払うし、どうかな千歳君?」
「ええ、皆には話しをしておきますね。皆さんだけの船としてではなく、皆さんのように海で困っている生物の避難所として皆さんが先導するのが条件です。どうですか?」
「しょ、承知した!誠意を尽くそう!」
「では…こちらへ…海精も呼ぶ」
「すごい船を造るぞ!」
心無しか嬉しそうな千眼と張り切る崇幸に、フユーゲル達も嬉しげに船造りを早速始めた。
「一段落着いたね、ラジカさん行こうか?」
「忘れてないようですね」
「勿論」
千歳がラジカのお説教を受ける為に、他の場所への移動を提案する、ラジカも同意し千歳の後ろを付いて手頃な部屋に向かった…。
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