【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)

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26.俺、やっと分かったよ

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 あれから、どれくらい時間が経ったのか分からない。
 
 胸のあたりが微かに温かい気がする。
 少しだけ重みも感じた。

 そうだ。フィンにもらった短剣が懐に入っていたな。
 なぜだかこの短剣から、フィンに抱きしめられているようなぬくもりを感じる。
 俺はそれにひどく安心して、再び眠りについた。




 少しずつ意識が覚めてくる。

 まだぼんやりとした中で、誰かの手の温もりを感じた。
 俺の手をぎゅっと握って、俺がどこかへ行ってしまわないようにという明確な意思が伝わってきた。
 その手があまりにも力強くて、けれど優しくて、俺は涙が出そうになる。

「……どうして、あんな無茶を……」

 低く、掠れた声。
 目を開けなくても分かる。フィンだ。
 俺の指先に、フィンの吐息がかかる。
 俺の手にフィンがほおずりしている。
 俺の手を握るフィンの手は、ずっとかすかに震えていた。

「君がいない未来なんて、私には意味がないんだよ。
 君を守りたいのに……私は君の前ではいつも無力だ。
 ねえ、エリゼオ。ずっと側にいてくれるって、あのバラ園で言ってくれたじゃないか。
 もう、俺を置いていかないで。
 エリゼオ。好きなんだ。君がいれば何もいらない。
 だから。ずっと私のそばで笑っててほしい」

 その声には、普段の余裕なんて微塵もなかった。
 
 ただ、一人の青年が、失いたくない人を前にして泣いている——そんな声だった。

 涙が、俺の頬に落ちた。
 ああ、フィンが泣いてるんだ。
 そんなの、ずるいよ。
 俺まで泣きたくなるじゃないか。

 不意に何かが胸にストンと落ちてくる音がした。

 俺は、突然気づいた。

 フィンは、ちゃんと俺のことが好きだったんだって。
 あの甘い「好きだよ」「ずっと私を見てて」「大切なんだ」という言葉。
 いつだって俺を見て、囁いてた。
 それは、戸惑う俺をからかってるだけだと思ってた。
 フィンはサーラを好きだと思ってた。
 ううん。違う。
 勝手に思い込もうとしてたんだ。

 俺は、いつも自分に自信がなくて。
 勝手に期待して、裏切られるのが怖くて、必死にフィンの思いから目を背けていたんだ。

 ごめん。ごめんな。
 俺が弱いせいで、ずっとフィンの気持ちから逃げて、向き合ってこなかった。

 次に目を覚ました時。
 俺は、ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。
 
 「俺はフィンが大好きだ」って。


『お兄ちゃん、幸せになってね』

 前世の妹が笑顔で俺に語ってた。
 いつ言われたっけな?
 妹はいつも「自分の幸せを一番に考えて」って言ってたっけ。
 ほんと、俺にはもったいないくらい、よくできた妹だったよ。


『お義兄さま! わたくし、推しの騎士様と目があってしまいましたわ!』

 ふいにサーラの声も聞こえてきた。
 そうだ。サーラはフィンが好きなのに。
 俺、サーラになんて伝えたらいいのかな?

 もう、自分の気持ちをなかったことになんかできないよ。
 俺、フィンが好きなんだ。
 きっと、自分の命なんてどうなったっていいくらい。
 フィンが幸せになれるなら、自分の気持ちなんて、いくらでも我慢できた。
 でも、フィンが俺を好きって言ってくれるなら。
 俺はもう、諦めることができないんだ。

 どうしよう。
 俺、サーラを幸せにするって誓ったのに。
 サーラ、ごめんな。
 俺、どうしたらいいんだろうな……。

 その時。

『お兄ちゃん! またこの義妹のサーラって子、私の推し騎士との恋を邪魔するのよ!!』

 再び妹の声が聞こえてきたんだ。


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