【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました

未希かずは(Miki)

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33.話し合いって大切だよね

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 あれから、何とかその場を俺が取りなして、解散した。
 みんなそれぞれおかしかったから、すげえ大変だったよ。

 そして夜。
 フィンは、ずっと俺を離さなかった。

 怪我をした俺に触れるとき、あんなに慎重だったのに、今日の腕はやたら強かった。
 もちろん、まだ治りきってない場所は避けていたけどね。

 俺が動くたびに、びくっと身体を震わせて、俺にぎゅっとしがみついてくるんだ。

「フィン、トイレ行きたい」

 フィンの頭をぽんぽんと叩くと、「よかった……」と心底ほっとした顔をする。
 フィン、そんなに何が不安なんだよ。

 寝る時間になって二人でベッドに入ると、フィンはぽつりと呟いた。

「ねえ、エリゼオ。……私のこと、嫌いになった?」

「え? なんで? 嫌いになんかならないよ」

「だって、私は君の友人にすら嫉妬するんだ。
 あの夜、君は私のプロポーズに応えてくれたのに、どこか寂しげだった。
 何かを諦めたみたいな顔をして。
 カリオにはあんなに笑顔を見せているくせに。
 ……本当は、私を好きなわけではないんだろう?」

 俺、フィンの言葉にびっくりしてフィンの方を見上げる。
 けれど、いつもまっすぐに俺を見つめていた瞳が、なぜか下を向いていて、目が合わない。

「フィン、プロポーズってなんの話?
 いつ?」

 俺の言葉に、フィンは顔を上げる。
 その顔は真っ青だった。

「王都でのデートだよ!
 プロポーズ、受けてくれたじゃないか!
 バラ園で私は『これからは、ずっとそばにいてくれないか』ってプロポーズしたじゃないか。
 そうしたら、君は『大好き』だって。
 『これからもよろしく』って。
 あれはプロポーズの返事だろう!?」

 ……え? ええぇぇぇ!?
 プ、プロポーズ!? あれが!?
 だ、だって。あのとき俺たち付き合ってなかったよね!?
 フィンからのお願いで一度だけ王都デートして。
 俺はあの日、やっとフィンが好きだって気づけたんだ。
 けど、あのときはまだ、フィンはサーラのことが好きだと思ってたから、まさかあれが、プロポーズだなんて思いもしなかった!

「お、覚えてるよ。覚えてるけど!
 あの、俺たち別に付き合ってなかったし、まさかプロポーズだなんて思ってなかったんだよ。
 あの時の言葉は、友人として一緒にいたいってことなんだって思ってて……」

 今度はフィンが固まる番だった。
 目を見開き、口も大きく開けてる。フィンのこんな顔、見たことないかも。

「だって、あの時、プロポーズを受けてくれたと思ったから、私は必死で君を婚約者にしようと、舞踏会の準備を
 ……え? それなのに……
 じゃあ、私の勘違いで……君は私と結婚なんて、考えてもいなかった……そっか、そういうことか」

 フィンの声がどんどん小さくなる。
 俺、どうしたらいいんだろう。

「ご、ごめん。
 でも俺、その時フィンの好きは俺じゃなくてサーラだって思い込んでたんだ」

「なぜそんな勘違いをするんだっ!
 あんなに! ずっと! アプローチしていたのに!
 ずっと好きだって君に言っていたじゃないか!
 確かに、君が押しに弱いことを分かってて、無理やり好きと言わせたのは悪かった。
 だから、君が心から好きと言ってくれるまで、私は待つって決めたんだ。
 でも……君を手放すつもりはなかったんだ。
 せめて結婚だけは決めておきたくて……!」

 いやいやいや、待て待て待て。
 いろいろおかしいって!

 好きだと思われてないのに、婚約だけ進めてたの?
 本人に確認もなく、勝手にあの舞踏会で婚約披露したってこと!?
 待つって言っておきながら、逃がすつもりゼロだよね!?

 俺なんて、フィンにキスしてほしくて結構頑張ってたんだぞ。
 甘い雰囲気になったときに今だ!と思って、目をつぶって見せたりして。
 それでも、ちっともキスしてくれなくて、結構落ち込んでたのに!
 だから、無理やりフィンと俺の好きは違うんだって思い込もうとしてた。
 それなのに、好きって言ってきて、甘い言葉をたくさん降り注いで。
 だから、俺。
 フィンの気持ちがちっともわからなくて、不安だったのに。
 なんだよそれ!
 なんだよ!!

 フィン、めちゃくちゃ俺のこと好きじゃん!!
 ……じゃあ、今度は俺が勇気を出す番だよな。

 俺はフィンの王子の顔を両手でがしっと挟み、下を向いてる王子の顔を無理矢理こっちを向かせた。

「ばぁぁーーーか! ばか!
 俺、ちゃんとフィンのこと好きだから!
 フィン以外と結婚もしないし、付き合う気もない!
 フィン以外の人と幸せになるつもりなんて、ないっ!!」

 フィンの目からぽろぽろ涙が落ちる。
 こんなにきれいな泣き顔、生まれて初めて見た。

「私は……ちゃんと君に愛されていたんだな?
 流されて仕方なく私といてくれているのではなく……?
 嘘では無いんだな?
 後から嘘だって言っても、遅いからね。
 私は重いよ。
 君を一生離せないぞ……?」

 俺は聞かれるたびに何度もうなずいた。
 それなのに、それでも何度も何度も確認してくるから、俺はとうとう唇を尖らせる。

「好きだって言ってるじゃん。
 一生離さないって言われるの、むしろうれしいくらい、フィンのこと大好きなんだよ。
 だからさ……俺たち、ちゃんと両想いで恋人なんだよな?
 なら……き、キスしてほしい。
 手とかほっぺとかじゃなくて……ちゃんと……唇に。
 キスしてよ」

 それを聞いたフィン、すごい笑顔でさ。
 屈託のない、子供みたいな笑顔だった。
 なんだか、この表情、どこかで見たことあるなって思ったその瞬間。
 俺の唇にそっと柔らかいものが触れた。

 やっと。
 やっとだ。

 俺、フィンとキスできた。
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