63 / 64
62.二人で(後編)**
しおりを挟む
ベッドに横たわり、見つめあう。
フィンの指が、俺の頬をそっとなぞった。
触れられただけで胸の奥がじんと熱くなる。
ずっとこの日を想像してたんだ。
フィンと一つになること。
俺を見つめているフィンの瞳が揺れ、そして——優しく細められた。
「エリゼオ……」
その声は、愛おしさで溢れていた。
「ん……っ」
首筋に吸い付かれ、思わず声が漏れた。
衣擦れの音とともに互いの服が落ち、肌と肌が触れ合うたび、身体の奥で熱が膨らんでゆく。
フィンの指が首筋から肩、背中へとゆっくり滑る。
触れるたび敏感に跳ねる俺を見て、フィンがほほ笑んだ。
「可愛い……どこに触れても、こんなに反応して……。
全部、私だけのものだよ」
「そういうの……恥ずかしいよ……」
「恥ずかしがるエリゼオもたまらない」
耳朶をくすぐる声に、震えが走る。
その指先が俺の身体をなぞるたび、身体の奥がきゅっと締まり、身体が火照る。
「のぼせそう……」
「私もだよ」
フィンが俺の胸を包むように撫で、尖りをそっとつまむ。
「あっ……」
俺の漏れた声にフィンが目を細める。
「……もっと聞かせて」
さらに唇が胸に触れ、吸い上げられた瞬間、身体が跳ね上がった。
「んぅ……っ、フィンっ、そこ……っ」
「嫌?」
「……いや、じゃ……ない……」
「じゃあ、続けるよ」
胸を愛撫しながら、フィンの手が胸板を滑り落ち、腹筋を通り、俺の中心へ近づく。
まだ触れてもいないのに、心臓が暴れた。
そのとき、フィンの右肩に、薄らと傷跡があるのに気づき、つい指で辿る。
「気になる?」
「うん……痛くない?」
「大丈夫。暗殺未遂の時の傷跡だ。
私には、この傷すらエリゼオとの思い出と繋がる。大切なものだ」
あの襲撃の時、フィンは俺を思い、魔法が少しだけ使えたって言ってた。
フィンは、こうやって何でも俺とフィンを結びつけてくれる。
それだけフィンの中で、俺という存在が大きいんだと思うと嬉しかった。だから、そっとフィンの肩にキスをした。
「エリゼオ……」
そして、指がついに俺の屹立に触れた。
柔らかく撫でられただけで、身体が限界みたいに震える。
「あっ......、フィン……っ、だめっ」
「大丈夫。素直に感じて。……もっと気持ちよくなれるから」
ゆっくり上下されるたび、全身がしびれる。
「変に……なっちゃう……っ」
「変になっていい。私の手で君が乱れていくのを見たいんだ」
もう、フィンの声だけでいっちゃいそうだ。
それなのに、フィンは俺の屹立を口に含んだ。
「あっ、だ、だめっ、だめっ。出ちゃうっからぁっ。口っ離してっ、あっ、あっ、だめだってばぁっ――っ」
必死でフィンの頭を掴んだけど、フィンはびくともしなかった。
「いいよ。出して」
フィンは口に含んだまま話すから、俺はたまらない。
「あっ……あぁっ……っ、もうっがまん、できない……っ」
熱が一気に抜け、俺は脱力した。
フィンが俺を抱き寄せ。
俺は、ハッとしてそばにあったタオルをフィンに渡した。
「あっ、ご、ごめん、ここにぺってして」
「何言ってるの? 君のものなんだから、タオルになんか渡さないよ?」
えっ、そ、そそそれって、の、飲んだの!?
俺が顔を青くすると、フィンは笑って額に口づける。
それから、まっすぐに俺を見つめてきた。
「エリゼオ……君が欲しい。全部……欲しいんだ」
……フィンの声が震えている。
大丈夫だよ、俺だっておんなじ気持ちなんだ。
力の入らない腕でフィンを抱きしめ返す。
「フィン……最後まで、いいよ」
フィンは深く息を吐き、俺の後孔にやさしく触れてきた。
それでも、俺の身体は硬直する。
「……痛くないようにするから」
そう言いながら、ゆっくり俺がリラックスするのを待ってくれてるけど、それでもなかなか力が抜けなくて、入らない。
もう無理なのかと不安がこみ上げ、涙がにじむ。
そのとき、フィンは俺から離れていこうとする。
「やだ……っ、行かないで……!」
焦って、フィンの手を掴むと、フィンが苦笑して俺の頭を撫でた。
「大丈夫、クリームを取るだけだよ」
フィンはベッドサイドにある棚の引き出しを開けた。
例の聖水入りクリームを取り出す。
俺がフィンにプレゼントしたクリームだ。
また光が爆ぜないかと不安になる。
それに気づいたのか、フィンは「大丈夫」と言いながら、クリームに魔力を流し込んでいた。
クリームはしばらくパチパチと音を立てていたけれど、やがて何も音がしなくなった。
それを俺の背中に塗る。
ほんのり温かい。
まるでフィンに抱き締められてるみたいだった。
確かに幸福度を上げるという謳い文句は間違っていなかった。
「気持ちいい……」
思わず声に出してしまった。
「私の魔力が流れてるからね。痛い思いはしないよ」
指がゆっくりと入ってくる。
嘘みたいに痛くない。温かい。
二本目が入っても、平気だった。
「……痛くない?」
「うん。平気。ちょっと変な感じはするけど」
「そうか。少し動かすね」
フィンはゆっくりと指を抜き差しした。
おれは、その違和感を息を吐いてやり過ごす。
指がある一点を押すと、腰が勝手に跳ねた。
「い、いまのなに……?」
「ここか。大丈夫。君の気持ちいいところだよ」
フィンはそう言って、その一点を押してきた。
「ひぁっ! あっ、あっ、うんっ、そこばっかりっ、駄目——っ」
そのまま俺は達しそうになる。
俺はフィンの手をつかんで止めた。
「ねえ。フィン。もう大丈夫だから」
「……っ。ああ……っ。エリゼオ。ゆっくりするから。怖かったら俺に抱きついてて」
フィンの熱がそっと俺に触れた。
「いくよ。力抜いてて」
「うん。……きて……」
ゆっくりと押し広げられる。
熱い。
「……っ……!」
やっと、やっとフィンと一つになれた。
涙がこぼれそうになる。
でも、その原因は痛みじゃない。胸の奥が幸せでいっぱいになってきてるから。
フィンは俺の目じりに優しくキスを落とす。
「大丈夫……? 苦しくない……?」
「うん……フィンだから……大丈夫……」
その一言で、フィンの呼吸が乱れた。
ゆっくり、浅く、少しずつ深く。
動くたびに、俺の名前を呼んでくれる。
「エリゼオ……大好きだ……っ」
「フィン……フィン……っ……!」
名前を呼び合うたび、胸の奥が熱くなる。
身体だけじゃない。
心まで、フィンと繋がっている。
視界がにじむ。
涙が溢れて止まらない。
「エリゼオ……泣かないで……っ」
「ちがっ、嬉しいんだ……っ。フィンと、一つに……なれて……っ」
フィンが優しく俺の涙を拭う。
その指先も震えていた。
「俺も……っ。君と繋がれて……こんなに幸せなことは……他にない……っ」
互いの鼓動が混じって、境界が曖昧になっていく。
世界に二人しかいないみたいだった。
まるで魂の奥まで触れられているみたいで。胸の奥が、愛で満たされていく。
俺、生まれ変わって本当によかった。
フィンに出会えて、本当によかった。
この幸せは、俺たちが選び取った未来なんだ。
「好き……好きだよ、フィン……っ」
「俺も……愛してる、エリゼオ……っ」
二人の熱が強く絡まり、世界が白くはじけた瞬間——フィンも俺の中で震えた。
俺は、幸せな気持ちで満たされながら、意識を手放した。
フィンに抱き締められながら。
それはひどく安心できるものだった.
◇◇◇
朝日がレースのカーテン越しに差し込み、部屋を柔らかく照らしていた。
目を開けると、俺はフィンの腕の中にいた。
……ああ。
胸がじんと温かい。
これは夢じゃない。
昨夜のことは、本当にあったんだ。
フィンと、一つになった。
身体も、心も、魂も——すべて。
ふと、フィンの寝顔を見上げる。
いつもは凛々しいのに、今は穏やかで、少しだけ無防備だ。
(……かわいい)
思わず頬がゆるむ。
そっと指を伸ばし、フィンの髪に触れようとした、その時——俺の手をフィンが掴んだ。
「起きてたの? いつから?」
「ずっと。君が起きる瞬間を、見ていたかったから」
そう言って、フィンが微笑む。
その笑顔があまりに優しくて、胸がいっぱいになった。
「おはよう、エリゼオ」
「……おはよう、フィン」
何度も交わした朝の挨拶。
でも、今日のこの言葉は——今までと全然違う。
特別で、愛おしくて。
二度と忘れられない、大切な朝だ。
「かわいい寝顔だったよ。何度もキスしたかったけど、我慢した」
「や、やめて……恥ずかしいから!」
顔が熱くなる。フィンが楽しそうに笑った。
「恥ずかしがる君も愛しい。……ねえ、エリゼオ」
フィンが俺を優しく抱き寄せる。
「昨日、君が言ってくれたこと——『フィンのすべてを選ぶ』って。
あの言葉で、俺はまた救われたよ」
「フィン……」
「今日から、俺たちは本当に一つだ。
どんな未来が来ても——君と一緒なら、怖くない」
その言葉が、胸の奥に染み込んでいく。
「……俺も。
どんなに先の未来でも……フィンと一緒に歩きたい」
フィンはゆっくり俺にキスを落とした。
優しくて、深くて、愛に満ちたキス。
朝日が二人を包む。
これからも、こんな朝が続けばいい。
大好きな人と目覚めて、笑い合って、触れ合って、そんな当たり前の幸せを、ずっと、ずっと。
俺は、フィンの胸に顔を埋めた。
小さく鼓動が聞こえる。
俺を愛したフィンが生きている証。
「フィン、大好き」
「俺も。誰よりも、何よりも——君を愛してる」
窓の外で、光るバラが揺れている。
まるで祝福するみたいに、朝日を浴びて輝いていた。
フィンが俺の髪を撫でながら囁く。
「大丈夫? ……痛くない? 歩ける?
今日は、私が全部抱き上げて移動するから、心配しないで」
「ちょっ、フィン! その優しさは恥ずかしい!」
「別にいいだろう? 君は私の伴侶だ」
……そう言われると、反論できない。
顔を両手で覆っていたら、フィンにそっと手を外されて見つめられた。
「そういうわけで……。歩けなくても平気だからね。
だから今、もう一度抱いてもいいかな」
「えっ、い、今!? む、むりむりむりっ!!」
「冗談だよ?」
でも、その目は冗談に思えないんだけど。
いやいやいや。まさか。
俺は枕に顔を押しつける。
これからも二人でずっと過ごしたい。
一緒に眠り、朝起きると大好きな人が目の前にいて、冗談を言い合う。
こんな幸せな朝が続けばいい。
本気でそう思ったんだ。
フィンの指が、俺の頬をそっとなぞった。
触れられただけで胸の奥がじんと熱くなる。
ずっとこの日を想像してたんだ。
フィンと一つになること。
俺を見つめているフィンの瞳が揺れ、そして——優しく細められた。
「エリゼオ……」
その声は、愛おしさで溢れていた。
「ん……っ」
首筋に吸い付かれ、思わず声が漏れた。
衣擦れの音とともに互いの服が落ち、肌と肌が触れ合うたび、身体の奥で熱が膨らんでゆく。
フィンの指が首筋から肩、背中へとゆっくり滑る。
触れるたび敏感に跳ねる俺を見て、フィンがほほ笑んだ。
「可愛い……どこに触れても、こんなに反応して……。
全部、私だけのものだよ」
「そういうの……恥ずかしいよ……」
「恥ずかしがるエリゼオもたまらない」
耳朶をくすぐる声に、震えが走る。
その指先が俺の身体をなぞるたび、身体の奥がきゅっと締まり、身体が火照る。
「のぼせそう……」
「私もだよ」
フィンが俺の胸を包むように撫で、尖りをそっとつまむ。
「あっ……」
俺の漏れた声にフィンが目を細める。
「……もっと聞かせて」
さらに唇が胸に触れ、吸い上げられた瞬間、身体が跳ね上がった。
「んぅ……っ、フィンっ、そこ……っ」
「嫌?」
「……いや、じゃ……ない……」
「じゃあ、続けるよ」
胸を愛撫しながら、フィンの手が胸板を滑り落ち、腹筋を通り、俺の中心へ近づく。
まだ触れてもいないのに、心臓が暴れた。
そのとき、フィンの右肩に、薄らと傷跡があるのに気づき、つい指で辿る。
「気になる?」
「うん……痛くない?」
「大丈夫。暗殺未遂の時の傷跡だ。
私には、この傷すらエリゼオとの思い出と繋がる。大切なものだ」
あの襲撃の時、フィンは俺を思い、魔法が少しだけ使えたって言ってた。
フィンは、こうやって何でも俺とフィンを結びつけてくれる。
それだけフィンの中で、俺という存在が大きいんだと思うと嬉しかった。だから、そっとフィンの肩にキスをした。
「エリゼオ……」
そして、指がついに俺の屹立に触れた。
柔らかく撫でられただけで、身体が限界みたいに震える。
「あっ......、フィン……っ、だめっ」
「大丈夫。素直に感じて。……もっと気持ちよくなれるから」
ゆっくり上下されるたび、全身がしびれる。
「変に……なっちゃう……っ」
「変になっていい。私の手で君が乱れていくのを見たいんだ」
もう、フィンの声だけでいっちゃいそうだ。
それなのに、フィンは俺の屹立を口に含んだ。
「あっ、だ、だめっ、だめっ。出ちゃうっからぁっ。口っ離してっ、あっ、あっ、だめだってばぁっ――っ」
必死でフィンの頭を掴んだけど、フィンはびくともしなかった。
「いいよ。出して」
フィンは口に含んだまま話すから、俺はたまらない。
「あっ……あぁっ……っ、もうっがまん、できない……っ」
熱が一気に抜け、俺は脱力した。
フィンが俺を抱き寄せ。
俺は、ハッとしてそばにあったタオルをフィンに渡した。
「あっ、ご、ごめん、ここにぺってして」
「何言ってるの? 君のものなんだから、タオルになんか渡さないよ?」
えっ、そ、そそそれって、の、飲んだの!?
俺が顔を青くすると、フィンは笑って額に口づける。
それから、まっすぐに俺を見つめてきた。
「エリゼオ……君が欲しい。全部……欲しいんだ」
……フィンの声が震えている。
大丈夫だよ、俺だっておんなじ気持ちなんだ。
力の入らない腕でフィンを抱きしめ返す。
「フィン……最後まで、いいよ」
フィンは深く息を吐き、俺の後孔にやさしく触れてきた。
それでも、俺の身体は硬直する。
「……痛くないようにするから」
そう言いながら、ゆっくり俺がリラックスするのを待ってくれてるけど、それでもなかなか力が抜けなくて、入らない。
もう無理なのかと不安がこみ上げ、涙がにじむ。
そのとき、フィンは俺から離れていこうとする。
「やだ……っ、行かないで……!」
焦って、フィンの手を掴むと、フィンが苦笑して俺の頭を撫でた。
「大丈夫、クリームを取るだけだよ」
フィンはベッドサイドにある棚の引き出しを開けた。
例の聖水入りクリームを取り出す。
俺がフィンにプレゼントしたクリームだ。
また光が爆ぜないかと不安になる。
それに気づいたのか、フィンは「大丈夫」と言いながら、クリームに魔力を流し込んでいた。
クリームはしばらくパチパチと音を立てていたけれど、やがて何も音がしなくなった。
それを俺の背中に塗る。
ほんのり温かい。
まるでフィンに抱き締められてるみたいだった。
確かに幸福度を上げるという謳い文句は間違っていなかった。
「気持ちいい……」
思わず声に出してしまった。
「私の魔力が流れてるからね。痛い思いはしないよ」
指がゆっくりと入ってくる。
嘘みたいに痛くない。温かい。
二本目が入っても、平気だった。
「……痛くない?」
「うん。平気。ちょっと変な感じはするけど」
「そうか。少し動かすね」
フィンはゆっくりと指を抜き差しした。
おれは、その違和感を息を吐いてやり過ごす。
指がある一点を押すと、腰が勝手に跳ねた。
「い、いまのなに……?」
「ここか。大丈夫。君の気持ちいいところだよ」
フィンはそう言って、その一点を押してきた。
「ひぁっ! あっ、あっ、うんっ、そこばっかりっ、駄目——っ」
そのまま俺は達しそうになる。
俺はフィンの手をつかんで止めた。
「ねえ。フィン。もう大丈夫だから」
「……っ。ああ……っ。エリゼオ。ゆっくりするから。怖かったら俺に抱きついてて」
フィンの熱がそっと俺に触れた。
「いくよ。力抜いてて」
「うん。……きて……」
ゆっくりと押し広げられる。
熱い。
「……っ……!」
やっと、やっとフィンと一つになれた。
涙がこぼれそうになる。
でも、その原因は痛みじゃない。胸の奥が幸せでいっぱいになってきてるから。
フィンは俺の目じりに優しくキスを落とす。
「大丈夫……? 苦しくない……?」
「うん……フィンだから……大丈夫……」
その一言で、フィンの呼吸が乱れた。
ゆっくり、浅く、少しずつ深く。
動くたびに、俺の名前を呼んでくれる。
「エリゼオ……大好きだ……っ」
「フィン……フィン……っ……!」
名前を呼び合うたび、胸の奥が熱くなる。
身体だけじゃない。
心まで、フィンと繋がっている。
視界がにじむ。
涙が溢れて止まらない。
「エリゼオ……泣かないで……っ」
「ちがっ、嬉しいんだ……っ。フィンと、一つに……なれて……っ」
フィンが優しく俺の涙を拭う。
その指先も震えていた。
「俺も……っ。君と繋がれて……こんなに幸せなことは……他にない……っ」
互いの鼓動が混じって、境界が曖昧になっていく。
世界に二人しかいないみたいだった。
まるで魂の奥まで触れられているみたいで。胸の奥が、愛で満たされていく。
俺、生まれ変わって本当によかった。
フィンに出会えて、本当によかった。
この幸せは、俺たちが選び取った未来なんだ。
「好き……好きだよ、フィン……っ」
「俺も……愛してる、エリゼオ……っ」
二人の熱が強く絡まり、世界が白くはじけた瞬間——フィンも俺の中で震えた。
俺は、幸せな気持ちで満たされながら、意識を手放した。
フィンに抱き締められながら。
それはひどく安心できるものだった.
◇◇◇
朝日がレースのカーテン越しに差し込み、部屋を柔らかく照らしていた。
目を開けると、俺はフィンの腕の中にいた。
……ああ。
胸がじんと温かい。
これは夢じゃない。
昨夜のことは、本当にあったんだ。
フィンと、一つになった。
身体も、心も、魂も——すべて。
ふと、フィンの寝顔を見上げる。
いつもは凛々しいのに、今は穏やかで、少しだけ無防備だ。
(……かわいい)
思わず頬がゆるむ。
そっと指を伸ばし、フィンの髪に触れようとした、その時——俺の手をフィンが掴んだ。
「起きてたの? いつから?」
「ずっと。君が起きる瞬間を、見ていたかったから」
そう言って、フィンが微笑む。
その笑顔があまりに優しくて、胸がいっぱいになった。
「おはよう、エリゼオ」
「……おはよう、フィン」
何度も交わした朝の挨拶。
でも、今日のこの言葉は——今までと全然違う。
特別で、愛おしくて。
二度と忘れられない、大切な朝だ。
「かわいい寝顔だったよ。何度もキスしたかったけど、我慢した」
「や、やめて……恥ずかしいから!」
顔が熱くなる。フィンが楽しそうに笑った。
「恥ずかしがる君も愛しい。……ねえ、エリゼオ」
フィンが俺を優しく抱き寄せる。
「昨日、君が言ってくれたこと——『フィンのすべてを選ぶ』って。
あの言葉で、俺はまた救われたよ」
「フィン……」
「今日から、俺たちは本当に一つだ。
どんな未来が来ても——君と一緒なら、怖くない」
その言葉が、胸の奥に染み込んでいく。
「……俺も。
どんなに先の未来でも……フィンと一緒に歩きたい」
フィンはゆっくり俺にキスを落とした。
優しくて、深くて、愛に満ちたキス。
朝日が二人を包む。
これからも、こんな朝が続けばいい。
大好きな人と目覚めて、笑い合って、触れ合って、そんな当たり前の幸せを、ずっと、ずっと。
俺は、フィンの胸に顔を埋めた。
小さく鼓動が聞こえる。
俺を愛したフィンが生きている証。
「フィン、大好き」
「俺も。誰よりも、何よりも——君を愛してる」
窓の外で、光るバラが揺れている。
まるで祝福するみたいに、朝日を浴びて輝いていた。
フィンが俺の髪を撫でながら囁く。
「大丈夫? ……痛くない? 歩ける?
今日は、私が全部抱き上げて移動するから、心配しないで」
「ちょっ、フィン! その優しさは恥ずかしい!」
「別にいいだろう? 君は私の伴侶だ」
……そう言われると、反論できない。
顔を両手で覆っていたら、フィンにそっと手を外されて見つめられた。
「そういうわけで……。歩けなくても平気だからね。
だから今、もう一度抱いてもいいかな」
「えっ、い、今!? む、むりむりむりっ!!」
「冗談だよ?」
でも、その目は冗談に思えないんだけど。
いやいやいや。まさか。
俺は枕に顔を押しつける。
これからも二人でずっと過ごしたい。
一緒に眠り、朝起きると大好きな人が目の前にいて、冗談を言い合う。
こんな幸せな朝が続けばいい。
本気でそう思ったんだ。
106
あなたにおすすめの小説
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間
華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる