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「なるわよ! 私が女王になるんだから!」
「殿下はまだ王ではありません。次の王太子の最も有力な候補者であるだけです。王太子になったからといって王になれるとも限りませんし、王になれても、それはずっと先の事です」
「最も有力な候補者なんだからなれるわよ! いつかは!」
「殿下が最も有力な候補者であるのは、ワタクシの父であるガルボ公爵の後ろ盾と国民の信頼があるからです。ワタクシとの婚約を破棄し、信頼が失われれば、有力な候補者は第二王子に移行すると思われます」
「でも、私は王子様の妃になるのよ! 貴女は公爵令嬢だけど爵位は継がないでしょ!? 婚約破棄されたら爵位を持たないんだから厳密には平民じゃない!」
「ワタクシは議会と国民により選出された、ヴィルヘルム殿下の婚約者であります。未来の王を支える使命をおびており、今現在も幾つかの職務を担っております。婚約を破棄されても、王を支え、国を支えるという使命は変わりません。臣下として何かしらの爵位を賜るでしょう。
現行として、殿下の生活や安全に関わることの多くの権限をワタクシは保有しております。婚約破棄されても職務を手放す気はございません。むしろ、婚約破棄の代償として、より多くの権限を要求することが出来るはずです。
例えば、議会の一員になり、正妃や側妃を承認する権利、未来の女王を選ぶ権利などを手にしたいと思います」
「何よそれ! そんなことをヴィル王子が許すはずないわ!」
「殿下は公人です。私人ではありません。この国には国の政(まつりごと)に関する重要な決定は必ず議会の承認を得なければならないという法律があり、殿下の個人的な意思は通りません」
「王子は好きな人と結婚出来ないっていうの!? 私とヴィル王子の中を邪魔するなんて! そんなの酷い!」
婚約者をワタクシから奪うのは酷くないのかな?
「ハニートラップによる悪女の政策介入を防ぐための法律でもあります」
「何ですって!? 私が悪女だっていいたいの!?」
まぁ、そうですが。
「いえ、それだけ常時、殿下や身分ある者は危険にさらされているということです。ですが、殿下が好きな方と結婚できる方法はいくつかあるでしょう」
「え!? どうすればいいの?」
「一つは、殿下の思い人が有能で、善良で、民のために尽くし、女王に相応しい人物であると、国民に示して、議会の承認を得ることです」
「勉強して人気が出ればいいのね! そういうのは得意よ!」
「ですが、エミリア嬢の場合は、先程、浮気相手であることを公言されました。国民からの信用を得るのは難しい」
「そ、そんな!? でも、愛の無い結婚を迫る女よりはずっとマシでしょ!?」
「ワタクシから結婚を迫ったことは一度もありません」
「嘘よ!」
「嘘ではありません。落ち着いて下さい。まだエミリア嬢が殿下と結婚する方法はあります」
「方法があるの!?」
「殿下が王位継承権を放棄し、その身分を国に返上し、市井(しせい)に下れば可能になります。現状、エミリア嬢が殿下と結婚する方法は、この方法しかありません。ですから、平民になった殿下と結婚しても、エミリア嬢はワタクシよりも身分は低いままとなります」
「そんな、ヴィル王子は王になるべき人です!」
やはり、エミリア嬢は愛を1番に取るタイプではないようだ。これなら説得出来るかもしれない?
「左様でございます。あんなに裏表のない純粋な方は他におりません」
殿下は、考えている事が透けて見えるので、実務をこなす臣下が扱い安いとも言える。そして、足りない所は多々あるが善良だ。この善良さというものは、実は非常に稀有なものであるのだ。
今回の一件で評判は多少落ちてしまうかもしれないが...浮気は妻が許せば世間はわりと寛大に受け取るものだ。
「じゃあ、どうすればいいのよ!?」
もはや、ワタクシに対しても全然敬語じゃないのだが、この方、色々と(立場や頭などは)大丈夫かな?
「出来れば身を引いて頂きたい」
「嫌よ! 貴女が身を引きなさい!」
ですよね。そう言うと思った。やはり簡単にはいかないか...
「殿下はまだ王ではありません。次の王太子の最も有力な候補者であるだけです。王太子になったからといって王になれるとも限りませんし、王になれても、それはずっと先の事です」
「最も有力な候補者なんだからなれるわよ! いつかは!」
「殿下が最も有力な候補者であるのは、ワタクシの父であるガルボ公爵の後ろ盾と国民の信頼があるからです。ワタクシとの婚約を破棄し、信頼が失われれば、有力な候補者は第二王子に移行すると思われます」
「でも、私は王子様の妃になるのよ! 貴女は公爵令嬢だけど爵位は継がないでしょ!? 婚約破棄されたら爵位を持たないんだから厳密には平民じゃない!」
「ワタクシは議会と国民により選出された、ヴィルヘルム殿下の婚約者であります。未来の王を支える使命をおびており、今現在も幾つかの職務を担っております。婚約を破棄されても、王を支え、国を支えるという使命は変わりません。臣下として何かしらの爵位を賜るでしょう。
現行として、殿下の生活や安全に関わることの多くの権限をワタクシは保有しております。婚約破棄されても職務を手放す気はございません。むしろ、婚約破棄の代償として、より多くの権限を要求することが出来るはずです。
例えば、議会の一員になり、正妃や側妃を承認する権利、未来の女王を選ぶ権利などを手にしたいと思います」
「何よそれ! そんなことをヴィル王子が許すはずないわ!」
「殿下は公人です。私人ではありません。この国には国の政(まつりごと)に関する重要な決定は必ず議会の承認を得なければならないという法律があり、殿下の個人的な意思は通りません」
「王子は好きな人と結婚出来ないっていうの!? 私とヴィル王子の中を邪魔するなんて! そんなの酷い!」
婚約者をワタクシから奪うのは酷くないのかな?
「ハニートラップによる悪女の政策介入を防ぐための法律でもあります」
「何ですって!? 私が悪女だっていいたいの!?」
まぁ、そうですが。
「いえ、それだけ常時、殿下や身分ある者は危険にさらされているということです。ですが、殿下が好きな方と結婚できる方法はいくつかあるでしょう」
「え!? どうすればいいの?」
「一つは、殿下の思い人が有能で、善良で、民のために尽くし、女王に相応しい人物であると、国民に示して、議会の承認を得ることです」
「勉強して人気が出ればいいのね! そういうのは得意よ!」
「ですが、エミリア嬢の場合は、先程、浮気相手であることを公言されました。国民からの信用を得るのは難しい」
「そ、そんな!? でも、愛の無い結婚を迫る女よりはずっとマシでしょ!?」
「ワタクシから結婚を迫ったことは一度もありません」
「嘘よ!」
「嘘ではありません。落ち着いて下さい。まだエミリア嬢が殿下と結婚する方法はあります」
「方法があるの!?」
「殿下が王位継承権を放棄し、その身分を国に返上し、市井(しせい)に下れば可能になります。現状、エミリア嬢が殿下と結婚する方法は、この方法しかありません。ですから、平民になった殿下と結婚しても、エミリア嬢はワタクシよりも身分は低いままとなります」
「そんな、ヴィル王子は王になるべき人です!」
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殿下は、考えている事が透けて見えるので、実務をこなす臣下が扱い安いとも言える。そして、足りない所は多々あるが善良だ。この善良さというものは、実は非常に稀有なものであるのだ。
今回の一件で評判は多少落ちてしまうかもしれないが...浮気は妻が許せば世間はわりと寛大に受け取るものだ。
「じゃあ、どうすればいいのよ!?」
もはや、ワタクシに対しても全然敬語じゃないのだが、この方、色々と(立場や頭などは)大丈夫かな?
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