【完結】婚約破棄と言われても個人の意思では出来ません

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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第二章

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 翌日、フリードリヒは再び結婚・恋愛相談所を訪れていた。

「世界一のプロポーズの仕方を教えて下さい。絶対に失敗しないプロポーズの仕方を」

「あれ? ご婚約はされているんじゃなかったのですか? あ、お相手が変わりました?」

 今日もマルクスは女装して対応する。
 
 おかしいな? フリッツ様は婚約者様の事をあんなに好きっぽかったのに。

「いえ、相手は変わっていません。婚約はしていましたが、成り行きだったので、プロポーズをしていないのです」

「あ、では、もう、その方と結婚する事に決められたのですね!」

「決めたわけではありませんが、知っておくことは大事だと思ったのです」

 この人、めっちゃツンデレじゃない!?

「そ、そうなのですね」

「それで、どうすれば良いですか?」

「プロポーズというのは、女性にとって、とっても大事な日です。男性は自分が用意する事には懸命になりますが、女性にも準備が必要な事を考えない方が多いのです。カッコイイところをアピールしたつもりが、独りよがりな暴君である事をアピールしてしまい、失敗する事が多々あります」

「なるほど、具体的にはどうすればいいのですか?」

「プロポーズをする日は、事前にお洒落してもらうように伝えたり、ドレスやアクセサリーなどを贈って身に付けて欲しいとお願いしたり、ハイソ(上流)な場所に出掛けようと誘ったり、とにかく着飾ってもらうのです」

「それならば、ドレスを贈ります。平民の娘なので、あまりドレスは持っていないはず」

「贈り物にも注意が必要です。サイズ違いだったり、相手の好みと違う物を贈ると、逆に怒らせる原因になります」

「相手の好みをリサーチするのですね。それは大変ですね...」

「お金があるのでしたら、商人を呼んで、婚約者様に好きな物を選んでもらっては?」

「それなら、絶対に気にいる物を贈れますね!」

「実は指輪も選ばせてあげた方が喜びますよ」

「それではプロポーズの時に指輪がなくて格好がつかないのでは?」

「男性は格好をつけて一瞬のロマンスを重要視しますが、女性は指輪が自分の好みでないと一生苦しむ場合があるのです。中には、もらった時だけして、その後は二度と身に付けないという方も多いです」

「そ、そうなのですね...高価な物を贈るのに、してもらえないのは嫌です」

「ですが、ロマンスと両立させる素晴らしい方法があるんです! その分、お金はかかりますけどね」

「どんな方法ですか?」

「本物の婚約指輪は後で一緒に買う事にして、プロポーズの際はプロポーズ用のダミーの指輪、もしくは指輪に代わる記念品を用意するのです。ほら、オペラでも、銀製の薔薇をプロポーズの際に贈る演目があるでしょう?」

「それは素晴らしい案ですね!」

「そして、プロポーズには雰囲気も重要です! 汚いところや雑多な場所を避け、出来るだけ美しくて静かな場所を選びましょう。花がいっぱい咲いていたり、夜景が見えたり、遠くから音楽が聞こえるような場所も素敵です。

タイミングも大事です! その場所について、いきなりプロポーズするのではなく、美しい物を眺めたり、美味しい物を食べたり、音楽に耳を傾けたりして、ロマンチックなムードを作って下さい」

「分かりました!」

「でも、1番大事なのはフリッツ様が愛していることを伝える事です。素晴らしいシチュエーションでプロポーズしても失敗する人もいれば、有り得ないシチュエーションでプロポーズしても成功する人もいます」

「では、色々準備しても意味がないということですか?」

「いえ、違いは、愛が伝わっているか、どうかなんです。お相手様は、この人なら自分を大切にしてくれる。幸せにしてくれると思えば、不器用なプロポーズでもOKするのです。ですが、独りよがりで、相手のことを考えないプロポーズは、別れを決断させるきっかけになります。つまり、プロポーズで手を抜けば、相手を大事にしない男だとアピールしてしまうことになります」

「それは...恐ろしいですね。ですが、非常に参考になりました。また、お願いします」

「毎度、御贔屓に有難うございます!」
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