Lara

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Regained Memories

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✘✘年後……

それは壊れた玩具みたいにくるくると回る。

―――つまらない。

何もかもつまらないし気にくわない。私を囲うこの壁も、見上げると見える四角い空も、平伏するやつらも、諦念に身を包んだ愚図たちも………見えない鎖に囚われているこの身も。

だから、私は私をやめる。全てが気にくわない私の癇癪だ。これによって名前も知らない誰かが死ぬだろう。その生を捧げるという名目で。ざまあみろ。

みんな死ねばいい。苦しんで苦しんでくるしんでもがき続けながら絶望に堕ちればいいんだ。私のように。何もかも壊れて壊れて壊れて、歪になった欠片を無理矢理繋ぎ合わせて作り上げた私のように。

私は誰だった?何年生きた?出身地は?家族構成は?好物は?苦手なものは?

ああ、全部、全部消え去った。泡沫の夢みたいに消えていく。

いや、捨てたんだ。いらなかったから、じゃまになったから。そうでもしないとこわれちゃうから。

いや、もう壊れていた。ただ辛かったから捨てただけ。残したのは『彼』と嘗ての私が呼んでいた人の名前のみ。それだけは捨てては駄目だと嘗ての私が決めていた。

わたしは、じぶんのことをなにとよんでいた?

わたしは、どんなせいかくだった?

わたしは、なにをわすれたすてた

この手に残っているのは自分の力と彼の名前、後どの場面かわからないが、嘗ての私に話しかけていた言葉。そして、この身を縛る鎖。

気持ち悪いきもちわるいきもちわるい。全部が歪んで見えてしまう。今の私には味方がいない。皆自分の思想を押し付けてくるだけの狂人ばかり。嘗ての私にはいたのに、どうして彼はいなくなったの?どうして今の私は一人なの?かつての私が羨ましい。温かい言葉をかけてもらって、安心したはずだ。

羨ましい

この胸にぽっかりと穴が開いている気分だ。それを見ないふりして張りぼてのように取り繕うとしても穴は開いたまま。埋まることは一切ない。

ひとりこの空虚な世界で蹲って頭を抱えて肩を震わせて、それでも涙は出なくて泣いた。

私はだれ?私はだれ?一体だれだったの?霞んで消えた本来のわたしは見えなくて怖くてそれでも知りたかった。

皮肉って、言うんだったか要らないと捨てたはずのものを今求めている。捨てたことすらも覚えていないのに後悔の念に苛まれてしまう。

「たすけて……■▼■■✖●」

思い出せない名前を言おうとして言えなくて言葉にならないくもぐったものになった。今残っている記憶には一人の友人がいたはずだ。どんな人だったかは覚えていない。ただ、いたとだけ、残っていた。

唯一の小さな窓から覗く朧月を見て、外なら、外になら私の求めるものが手に入るのだろうかと思った。出よう。羽をもがれ、歩く足を折られ、この身を鎖で雁字搦めにされているが。血が出ようとも、四肢が欠けようとも、また全てを失くそうとも出てみよう。

きっと、外の世界になら、一つだけのたったひとつだけの私の願いも叶えてくれる存在がいるだろう。


ああ、名前はどうしてしまおうか。


外の記憶もわからない、だが確かに外にいたとだけは知っている。


そうだ、それなら絶対にこの名前は付けよう。多分、いつか、になるけど。


『椿』


と…………



嘗ての私が『彼』と呼んでいた人の名前だ。


何故だかわからないけれど、この名前を付けたかった。きっと、私の大切なものだ。

月を見上げる。私の願いは一つだけ、誰かが叶えてくれたら、そう思った。

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