追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

文字の大きさ
93 / 134
連載

ティアの返事と謎の少女2

しおりを挟む
「元婚約者の件があった時、お兄様を始めとして他の人達は忘れろって言ってくれたけど、ライだけ復讐しても良いよって言ってくれたよね。あの言葉に背中を押されて前に進めたの。勿論、エタセルを安定させるのは王女を見返してやるっていう復讐だけじゃないわ。無理に自分の心を押し殺すことなく、ありのままの自分でいられるのはあの言葉のお蔭。ライ、ありがとう」
「俺は何も……ティアの成果だ」
 ライが首を振って否定したけど、私は彼のお蔭だと思っていた。
 的確なアドバイスしてくれたり、私が困っていると助けてくれる。
 本当にいつも頼りになる大切な存在だ。

「私ね、婚約破棄されて好きってどんな感じなのかわかんなくなっちゃったんだ。色々頭混乱する中でセス様に相談したら、色々な好きの形があるって教えてくれたの。ライの事は穏やかに好き。老後に一緒に世界中を旅したいなって思えるくらいに」
「いいな、旅行」
「でしょ? 大陸全部制覇したいよね」
 いろいろな国に行って、ライと思いっきり楽しみたい。
 二人で美味しいものを食べたり、温泉に行ったり。

 きっとまだまだ先のことだ。

 ライは国王としてこれからも国を治めていかないとならないし、私もエタセルの件が安定するまではこの国に住むつもりだ。

「でも、不安なことがいっぱいあって……」
「いいよ、なんでも言って」
「もしさ、ライと将来ずっと一緒に居られることになっても、ライは国王様。それが不安で……私、王妃教育も受けてないし。それに、エタセルが落ち着くまでここで仕事をがんばりたいんだ。ファルマに私が移住するのは、いつになるかわからない」
「王妃に関してはちゃんとフォローするから安心して。みんなが王妃教育受けてきたわけじゃないからさ。もし、ティアが王妃になるのが嫌だというならば、ちゃんと二人で一緒にいられる道を考える。エタセルの件に関してはなんとなく予想していたから想定内かな。ティア、責任感あるからきっとそう言うと思っていたし。落ち着くまで待っているよ。ファルマとエタセルは遠距離だけど、会えない距離ではないから」
「……いいの?」
「いいよ。ティアが俺と一緒に居てくれるんだから」
 ライは微笑むと、腕を伸ばして私を抱き寄せた。
 お互いの鼓動が聞こえてしまうくらいに距離が近く、私の鼓動はどんどん高鳴っていく。 


「ありがとう、ティア。不安なこと話してくれて」
「フーザー様がライにちゃんと聞けってアドバイスしてくれたの。勝手に一人で考えるなって」
「事前連絡なしで召還するくらいの強い癖の性格だけど、結構まともなことも言うんだな。あの方」
 後半はフーザー様が聞いたら、「僕はまともだよー」と言いそうな気がするが、私もライに同意する。

「ティアが以前にファルマの神殿でお祈りしてくれたのが効いたな。お互いに良い相手が見つかりますようにって」
「あっ、そうだね」
 若干忘れかかってしまっていたが、ファルマに初めて訪れた時に確かにお参りした。お花も購入して。

「お礼参りいかないとね」
「そうだな。ティアが今度ファルマに来た時に一緒に行こう」
「うん」
 二人で顔を見合わせて微笑み合っていると、ふとライの後方にある神殿入口が視界の端に飛び込んで来たのだが、そこに居た者を見て私は目を疑ってしまうことに。

「え」
 神殿内部の入口付近に少女がしゃがんで花を見詰めていたのだ。
 にこにこと微笑みながら……

 髪が肩につかないくらいの長さで白いワンピースを纏っている。
 首元にはペンダントのチェーンが窺えるけど、トップがワンピースの襟元に入っているようで隠れていた。

 瞳は小動物を思わせるくらいに愛らしく、丸みを帯びた鼻に秋桜色の唇を持つ少女。年は私と似たような年齢だろうか。

 彼女は私と視線が交わると、びくりと肩を大きく動かす。
 そのはずみで、少女のネックレスのトップが見えた。

 ――指輪?

 それは、月夜に鈍く輝くシルバーの指輪だった。

『あの……もしかして、私が視えるんですか?』
 恐る恐る彼女が私に尋ねたのだが、その質問に私が恐れた。

「え」
 なに、その質問。まるで……

 ついさっきまでライと接近して血液の流れがよかったのに、今度は一気に血の気が引き貧血状態に。

「どうした? ティア」
 ライに声を掛けられ、私は少女からライの顔へと視線を向ける。

「ライ、ライ、ライ!」
「聞こえているよ、ティア」
「人がいるの!」
「そうだな。ここデートスポットで人気みたいだし」
「違うの。神殿の入り口に少女がいたんだってば。その子が私の事が視えるのって」
「少女?」
 ライが振り返れば、誰もいなくなっていた。
 確かにさっきまではいたのに……

「ライ、聞こえなかった?」
「いや、まったく」
「やっぱり、幽霊!?」
「幽霊が怖いなんて可愛いな。人間の方が怖いっていうタイプそうなんだが。俺もそっちのタイプだけど」
「人間は倒せる。でも、幽霊は倒せない」
「そういう発想がティアっぽい。ロープが張られていて立ち入り禁止にはなっているけど、ロープをくぐれば誰でも簡単に入れる。もしかして、中に入っている人なんじゃないか。見て来ようか?」
「駄目。ライが迷って出られなくなっちゃう。神殿が立ち入り禁止になっているのは、老朽化等の理由じゃなくて迷いやすいからなの。だから、誰も入らない」
「そういう理由なのか。興味本位で入ってしまった人の可能性もあるな」
 ライの話を聞いていると、段々人間の可能性が高いような気がしてきたので、ちょっと落ち着いて来た。

 その時だった。
「ティアナ様?」と声を掛けられたのは。

 声のした方へと顔を向ければ、水筒を持った男性と小柄の女性の姿が。
 男性は商会で働いているグリムさんという男性だった。

「あっ、グリムさん。こんばんは。突然ですが、ここって幽霊話なんてありませんよね?」
「ありますよ。ティアナ様、ご存じないんですか? ここ、出るって一部の人達に言われているんですよ。白いワンピースの少女の幽霊。神殿の入り口付近に出るので、入口付近には誰も近寄らないんです。俺達はティアナ様の姿が見えたので挨拶に」
「初耳なんですけどっ!?」
 ということは、私が見たのって本当に幽霊なのか。
 精霊がいるのだから、幽霊がいても不思議じゃないと段々思い始めてしまっている。

「でもさ、幽霊ならどうして神殿に出るんだ? 普通神殿なんて神聖な場所のはずだろう」
 ライが首を傾げながら神殿の入り口を見詰めれば、ぽっかりと開いた黒い空間が広がっている。
 先が全くみえないくらいに暗く、静まり返っていた。







しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。