追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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芸術の国と製紙の国1

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 まばゆい光がだんだんと弱まりかかったため、私がそっと瞳を開け視界に飛び込んできた光景に息を飲んだ。
 だって、そこには見慣れた庭園が広がっていたのだから。

 私達が立っているのは瑞々しい葉をつけた木の傍なのだが、それを越えた先に幾何学模様に作られた花壇がある。
 手入れの行き届いた季節の花々が咲き誇っていて、風に乗り華やかな香りが鼻孔をくすぐった。
 奥には塔のように聳え立つ立派なファルマ城が。

「……本当にファルマなんですね」
「そりゃあ、そうだよ。転移魔法だもん。それより、見て。アレ」
 私の隣にいたフーザー様が視線で向けた先には、花壇の中心にある噴水。
 ここからでは二、三百メートル先だろうか。

 噴水の縁に隠れるように、緑色の髪の男性が地を這っていた。
 肩下まである長い髪を一つに纏めているのだが、髪が地面についてしまって、まるで箒のように落ち葉をからめ取ってしまっている。
 上質な衣服を纏っているため王子か貴族だと推測できるが、何故あんなにこそこそとしているのだろうか。

「ギリギリセーフ……?」
「いや、完全不審者でしょ」
 噴水の端ギリギリにほふく前進すると、こっそりと噴水から奥にある風景を眺め出す。

 何を見ているのかな? と首を傾げながら伺えば、そこにはライと見知らぬ女性の姿が。
 女性は優しげな印象を受けるクリーム色のドレスに身を纏い、穏やかにライに微笑んでいる。
 庇護欲をかりたたせるような顔立ちをした愛らしい女性で、緩やかな漆黒のウェーブかかった髪を持っていた。

 あの方がフーザー様のおっしゃっていたチュール様なのかもしれない。

「隠れている方は一体どなたでしょうか……?」
「こそこそと隠れているのがティアに見せたかった鼠。製紙の国として繁栄しているコリナの第五王子・メラブレ」
「タイミング良いですね。製品が完成して梱包やパッケージ用紙を発注という段階で出会えるなんて。でも、あの人は一体何をしているのでしょうか」
「そこまではわからない。近づいてみる?」
「はい」
 私が頷けば再度足下から光が溢れてきたため、私は瞳を閉じる。
 だんだんと光が弱くなり瞳を開ければ、私はちょうど噴水の縁に隠れるように中腰の体制になっていた。

 噴水の縁から隠れて覗いている彼は私達の存在に気づかないらしく、「チュール……」と弱々しく呟いている。

「あの」
 私が小声で声をかけながらメラブレ様の肩を叩けば、彼は弾かれたように振り返り私へ向けて指をさしてきた。

「君は……ティアナ……っ!?」
「私の事をご存じなのですか?」
「僕だって知っているよ。君くらいの有名人はさ。でも、どうしてここに?」
 全く同じことをお尋ねしたい。
 警備が厳重なファルマで城に入ることが許されたのだから、こんなところでこそこそと覗きなんてしなくても良いのに。

「ねぇ、なんでこんなところで不審者やっているわけ? 暇なの?」
「暇って失礼な。僕はチュールを見守るという役目があるんだ」
「見守るっていうか、君のしていることは完全に覗きだよね。不審者で通報コースだよ」
 フーザー様の言葉に対して、彼は「うっ」と言葉を詰まらせる。

「彼女……チュールは僕の恋人だ」
「なら、なんで隠れるわけぇ? あっ、本命が他にいるってことかー」
「違うよ! うちって製紙技術に優れている以外は特に何も無いだろ。だから、お互い付き合っていることは秘密にしているんだ」
「十分すごいと思いますよ」
「すごくないさ。ファルマのように大国でお金があるならば、彼女が住んでいる芸術の国にお金という援助ができる。作家の卵がいっぱいいるからね。多くの国に太いパイプを持っているファルマなら売り出しも出来るし。それに、うちとレライはあまり仲が良くない。ただ、悪くもないけど」
「芸術という比較的精神分野で発展をした国と製紙という手に職を持つ堅実的な手法で地道に国力を付けた国かぁ。夢と現実という感じだね。相対するから仲が微妙なのもわかる気がするよ」
「芸術の国と製紙の国……」
 私は顎に手を添え、思案する。
 二カ国で何か良いアイデアが浮かびそうになったのだ。

 芸術の国には、数多くの芸術家の卵がいる。
 彼らの中には、将来名のある芸術家になる人もいるだろう。

 製紙の国は高レベルの製紙に関わる職人達がいるため、様々な要望に対応してくれると事前に聞いていた。

 ――インパクトと話題性をこの二カ国なら作れるかもしれないわ。





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