追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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番外編(web版)

メディの恋~いつも見守ってくれていた私の騎士様~2

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(メディ視点)


 神殿の書庫には数多くの薬草学に関する書が残されており、私にとっては知識を吸収できる素晴らしい環境だ。
 常に新しい薬草学を学び、それを生かして人々のために役立てたいと考えているから。

 最近の私は休日となると、ここで薬草学を学んでいる。
 机に書物を広げ、ひたすら読んでいく。
 自分が知らない薬草の配合やまだ見ぬハーブについて知るのが楽しい。
 あまりにも楽しすぎて時間を忘れてしまうくらいに……

 今日も朝からずっと神殿の書庫に籠って本を読んでいた。

「メディさん」
「え」
 声と共にポンと右肩を叩かれ、私は弾かれたように後方へと顔を向ける。
 すると、そこにはセス様の姿が。
 彼は「驚かせてすみません」と眉を下げていた。

「そろそろ帰宅する時間ですよ。外はすっかりオレンジの空になってカラスが寝床に戻って行きます。書庫も明かりを落としますので」
「申し訳ありません。私ったらまた……」
 神殿内の書庫には窓がないため、外の様子を知ることが出来ず。
 元々薬草学の書物を読むのに夢中で時間の感覚が無かったのに。

 いつもセス様がに呼びに来て貰って気づく。

「学校で使用する薬草学の参考資料作りも結構ですが、休日はちゃんと休んで下さいね」
「はい」
 私はセス様の言葉に微笑む。

 ティアがエタセルの王都に学校を作り、今現在私はそこで薬草学を教える教師もしている。
 自分で志願したのに、最初はすごく不安だった。
 私が誰かに教えられる立場なのかって。
 でも、生徒達に良い刺激を受け、毎日充実している日々を過ごせている。

 ティア達が傍にいてくれ、やりがいのある仕事に携われている生活。
 好きな人……レイとも時々会い、色々な話をしている。
 ファルマで引きこもっていた私には想像出来ないくらいに穏やかな生活だ。

「この生活がずっと続いて欲しいなぁ」
 私はそっと呟くと、帰り支度をするために立ち上がった。










 あまり遅くなるとティアが心配するため、私は書庫で本を数冊借りると、ティアが待つ家へと帰宅する。
 もうすっかり私の生活の拠点はあそこだ。
 私にとっては自然豊かなエタセルの方が肌に合っているのかもしれない。
 薬草を好きに取りに行けるし、感じる空気も違う。

 自宅に到着して玄関の扉を開けると、入ってすぐに設置されているテーブルにティアやリストお兄様、それからお兄様の姿がある。
 三人共、テーブルを囲んでいたが、私の姿を見ると「おかえり」と出迎えてくれた。

「お兄様、どうかさなったのですか?」
 ファルマの王として多忙な兄は、時間を見繕って会いに来てくれる。
 そのため、お兄様がうちにいらっしゃることは珍しくない。

 ただ、お兄様達の表情に少し違和感を覚えたのだ。
 笑みを浮かべているけど、ちょっと困惑も含んでいるというか……
 兄妹ゆえにわかるような些細な事だけれども。

「メディ、少し話がしたい。メディの部屋でいいか?」
「……はい」
 お兄様の声が硬かったため、私は胃をきゅっと締め付けられるような感覚に陥ってしまう。
 これからお兄様から語られるのは、あまりよくない話なのだろう。
 私は了承するために頷けば、お兄様が私の背に触れ二階へと促してくれた。



 私室に入るとお兄様は椅子に座り、私は寝具へと腰かける。
 もしかして、ファルマに何かあったのだろうか?
 それとも、私の知人に?

 不安で心臓が嫌な音を奏でているため、私は膝の上に添えている手をぎゅっと握り締めた。

「レイガルド様の結婚が決まった。明日、エタセル国内で発表になるらしい」
 お兄様の言葉に対して、私の体がびくりと大きく動く。
 全く想像もしていなかったお兄様の台詞に、頭が真っ白になっていった。

「レ、レイに好きな人がいたんですか……?」
 レイが好きなのはティアだとずっと思っていたのに。
 だから、ティアがお兄様と婚約した時に、どこかほっとしている自分がいた。
 ティアにレイを取られないって。

「そこまではわからないが、政治的なことが絡んでいるのは断言できる」
「……レイは決めたんですね」
 私はその言葉を発するだけで精一杯。
 視界が滲み出し、私の肢体が戦慄く。
 感情が上手に整理できなくなり、私の目からぽたりと雫が落ち、スカートに染みを作った。

 レイが一気に遠い人に感じてしまう。
 私の傍に居て欲しい。私の事を好きになって欲しい。
 私だけを見て欲しい。レイと一緒に居たい。

 ……自分の気持ちを伝える勇気もないのに、なんて我が儘なのだろうか。


「メディ」
 お兄様は立ち上がると私の隣に座り、腕を伸ばして抱きしめてくれた。
 そして、宥めるように軽く背を優しいリズムで叩く。
 私が子供の頃、よく泣いている時にお兄様はこうして慰めてくれていた。

 心配かけないようにしなければならないのに、私の唇は動くことが出来ず。
 ただ、静かに子供の頃のように抱きしめてくれるお兄様の胸を借りて泣くだけだった。



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