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番外編(web版)
メディの恋~いつも見守ってくれていた私の騎士様~8
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「コルタ!」
私を支えてくれたのは、コルタだった。
彼の左腕が私のお腹付近に回され、右腕は竿を掴んでいる。
おかげで釣り竿を手放すことも、私が魚に釣られることもなく無事だ。
背にコルタの存在を感じてしまったせいで意識をしてしまい、私は血液が顔に集中してしまう。
今はそれどころではないのに……
「どうした?」
「な、なんでもない」
私は首を左右に振り、雑念を振り払う。
「やばいな……釣り竿が持たないかもしれない」
コルタの言うとおり、釣り竿のしなりが強すぎて今にも折れそうだ。
「わ、私も釣り竿持っていても大丈夫? どいた方がいい?」
「いや、大丈夫だ。片手でも引き上げるくらいの重さだから」
私にとってはかなり重かったけど、コルタにとってはそうでもないみたい。
腕の太さも私の二倍はありそうだし、剣もお兄様が使用しているのと違って、彼が普段使っているのは、太くて重量感があるもの。
筋肉が違うんだろうなぁ。
「釣り竿が持つかが問題なんだよな。網を持ってくれば良かった」
コルタがそう呟けば、「おーい、二人とも大丈夫か?」という声と共に数人の気配が近づいてくるのを感じる。
ちらりと視線を向ければ、白髪交じりの男性三人が岩場を飛び越え、こちらにやって来ているところだった。
先頭にいるのは、王宮薬草師のルヴァンさんだ。
ルヴァンさんとはお仕事でたまに会うので知っているけど、彼が引き連れている他の方達は知らない人たちだ。
「引きはどんな感じなんだ? 引き上げられそうか?」
「無理だな。見てのとおり釣り竿が……」
「マズいなぁ……ヒビが入ってきているぞ」
「おい、コルタ。もっと魚を近づけろ。メディ様を絶対に落とすなよ。俺が網で引き上げるから」
「当然だ。釣り竿や魚よりメディの方が遙かに大事だからな」
「おぉ、若いなぁ。青春」
「いいから魚をなんとかしてくれ」
「おっと、そうだな。魚が優先だ!」
ルヴァンさんは岩場に座るとかがみ込んで手にしていた網を川の方へ伸ばす。
コルタは竿を軽く引き上げ岩場の方へと動かせば、魚の影が窺えた。
――あれ? こんなに大きいの? 私が見たことがある魚のサイズじゃないわ。
六十センチくらいはあるだろうか。
何度か釣りをしているけど、こんなに大きいサイズを釣り上げた事はおろか、見た事もない。
「ニーヤカルバじゃないか! メディ様、なんて強運なんだ!」
「ニーヤカルバ?」
私が首を傾げれば、ルヴァンさんから驚愕の声が湧き上がる。
もしかして、何か珍しい魚でも釣り上げてしまったのだろうか。
コルタとルヴァンさんの連携により、魚は無事釣り上げることが出来た。
岩場に置かれた釣り上げたばかりの魚は、尾ひれにゴールドのグラデーションがかっている。
太さは私の腕くらいで、ビチビチと飛び跳ねていた。
「メディ、すごいぞ。ニーヤカルバなんて滅多に捕れるもんじゃないんだ」
コルタがはにかみながら、私の頭をなでる。
「いやー、今年初のニーヤカルバじゃないか? 縁起物だ」
「縁起物なんですか?」
「えぇ。エタセルではニーヤと呼ばれている魚がよく捕れるんです。ニーヤの中でも五十センチを超えるのは、ニーヤカルバって呼ばれているんですよ。昔のエタセルの風習でニーヤカルバは結婚式で食べた縁起物なんです」
「昔は結婚する二人が自分たちの式で振る舞うために釣りに出かけていたんですよ。ですから王都では幸せな結婚の象徴でもあるんです」
「そうなんですか? ティアとお兄様にプレゼントしようかしら……」
二人の結婚はもう少し先だけれども、婚約はしているし。
大きい魚だから、ティアすごく喜びそう。
私はかがみ込むと魚の口元から針を取るために魚を掴み、空いた手で針を取ったんだけど誤って針が手に少しかすってしまった。
チクリという痛みと共に人差し指にじんわりと血が滲む。
「あ」
膏薬を持ってきたっけ? と首を傾げれば、「メディ!?」「メディ様!?」という絶叫が聞こえる。
コルタ達は私の人差し指を見て顔面蒼白。
「け、怪我大丈夫ですか!? 国際問題に発展……!」
ルヴァンさん達はその場で右往左往している。
「大丈夫ですよ。少しかすっただけなので」
私はみんなを落ち着かせるように微笑むと、スカートのポケットからハンカチを取り出し傷口を押さえる。
針がかすったときは痛かったけど、今は痛みなんてない。
「メディ。傷口を洗おう。絆創膏持って来ているんだ。川で洗って貼ろう」
「ありがとう」
「ルヴァンのおっさん達、魚を頼む。俺、メディにつきそうから」
「任せろ」
コルタがそう言うと、私の背に触れて促す。
彼はじっとハンカチで押さえられている私の指を見ながら、不安そうに眉を下げている。
ただ針が指をかすっただけなので、そんなに心配することはないのだけれども……
「大丈夫よ。傷が浅いから。紙で手を切ったくらい」
「それでも心配なんだよ。俺が針を外せば良かったな。メディの綺麗な指に傷つけてしまった」
「綺麗かな? 普通だと思うわ。ティアの指は綺麗だと思うけど」
「いや、綺麗だよ。メディの指もメディ自体も。他の誰よりも何よりも」
そう言うとコルタは足を止め真剣な瞳で私を見たので、鼓動が大きく跳ねてしまう。
頬に血液が集中して忙しなく、自分の心臓が存在を誇示しはじめてしまった。
私を支えてくれたのは、コルタだった。
彼の左腕が私のお腹付近に回され、右腕は竿を掴んでいる。
おかげで釣り竿を手放すことも、私が魚に釣られることもなく無事だ。
背にコルタの存在を感じてしまったせいで意識をしてしまい、私は血液が顔に集中してしまう。
今はそれどころではないのに……
「どうした?」
「な、なんでもない」
私は首を左右に振り、雑念を振り払う。
「やばいな……釣り竿が持たないかもしれない」
コルタの言うとおり、釣り竿のしなりが強すぎて今にも折れそうだ。
「わ、私も釣り竿持っていても大丈夫? どいた方がいい?」
「いや、大丈夫だ。片手でも引き上げるくらいの重さだから」
私にとってはかなり重かったけど、コルタにとってはそうでもないみたい。
腕の太さも私の二倍はありそうだし、剣もお兄様が使用しているのと違って、彼が普段使っているのは、太くて重量感があるもの。
筋肉が違うんだろうなぁ。
「釣り竿が持つかが問題なんだよな。網を持ってくれば良かった」
コルタがそう呟けば、「おーい、二人とも大丈夫か?」という声と共に数人の気配が近づいてくるのを感じる。
ちらりと視線を向ければ、白髪交じりの男性三人が岩場を飛び越え、こちらにやって来ているところだった。
先頭にいるのは、王宮薬草師のルヴァンさんだ。
ルヴァンさんとはお仕事でたまに会うので知っているけど、彼が引き連れている他の方達は知らない人たちだ。
「引きはどんな感じなんだ? 引き上げられそうか?」
「無理だな。見てのとおり釣り竿が……」
「マズいなぁ……ヒビが入ってきているぞ」
「おい、コルタ。もっと魚を近づけろ。メディ様を絶対に落とすなよ。俺が網で引き上げるから」
「当然だ。釣り竿や魚よりメディの方が遙かに大事だからな」
「おぉ、若いなぁ。青春」
「いいから魚をなんとかしてくれ」
「おっと、そうだな。魚が優先だ!」
ルヴァンさんは岩場に座るとかがみ込んで手にしていた網を川の方へ伸ばす。
コルタは竿を軽く引き上げ岩場の方へと動かせば、魚の影が窺えた。
――あれ? こんなに大きいの? 私が見たことがある魚のサイズじゃないわ。
六十センチくらいはあるだろうか。
何度か釣りをしているけど、こんなに大きいサイズを釣り上げた事はおろか、見た事もない。
「ニーヤカルバじゃないか! メディ様、なんて強運なんだ!」
「ニーヤカルバ?」
私が首を傾げれば、ルヴァンさんから驚愕の声が湧き上がる。
もしかして、何か珍しい魚でも釣り上げてしまったのだろうか。
コルタとルヴァンさんの連携により、魚は無事釣り上げることが出来た。
岩場に置かれた釣り上げたばかりの魚は、尾ひれにゴールドのグラデーションがかっている。
太さは私の腕くらいで、ビチビチと飛び跳ねていた。
「メディ、すごいぞ。ニーヤカルバなんて滅多に捕れるもんじゃないんだ」
コルタがはにかみながら、私の頭をなでる。
「いやー、今年初のニーヤカルバじゃないか? 縁起物だ」
「縁起物なんですか?」
「えぇ。エタセルではニーヤと呼ばれている魚がよく捕れるんです。ニーヤの中でも五十センチを超えるのは、ニーヤカルバって呼ばれているんですよ。昔のエタセルの風習でニーヤカルバは結婚式で食べた縁起物なんです」
「昔は結婚する二人が自分たちの式で振る舞うために釣りに出かけていたんですよ。ですから王都では幸せな結婚の象徴でもあるんです」
「そうなんですか? ティアとお兄様にプレゼントしようかしら……」
二人の結婚はもう少し先だけれども、婚約はしているし。
大きい魚だから、ティアすごく喜びそう。
私はかがみ込むと魚の口元から針を取るために魚を掴み、空いた手で針を取ったんだけど誤って針が手に少しかすってしまった。
チクリという痛みと共に人差し指にじんわりと血が滲む。
「あ」
膏薬を持ってきたっけ? と首を傾げれば、「メディ!?」「メディ様!?」という絶叫が聞こえる。
コルタ達は私の人差し指を見て顔面蒼白。
「け、怪我大丈夫ですか!? 国際問題に発展……!」
ルヴァンさん達はその場で右往左往している。
「大丈夫ですよ。少しかすっただけなので」
私はみんなを落ち着かせるように微笑むと、スカートのポケットからハンカチを取り出し傷口を押さえる。
針がかすったときは痛かったけど、今は痛みなんてない。
「メディ。傷口を洗おう。絆創膏持って来ているんだ。川で洗って貼ろう」
「ありがとう」
「ルヴァンのおっさん達、魚を頼む。俺、メディにつきそうから」
「任せろ」
コルタがそう言うと、私の背に触れて促す。
彼はじっとハンカチで押さえられている私の指を見ながら、不安そうに眉を下げている。
ただ針が指をかすっただけなので、そんなに心配することはないのだけれども……
「大丈夫よ。傷が浅いから。紙で手を切ったくらい」
「それでも心配なんだよ。俺が針を外せば良かったな。メディの綺麗な指に傷つけてしまった」
「綺麗かな? 普通だと思うわ。ティアの指は綺麗だと思うけど」
「いや、綺麗だよ。メディの指もメディ自体も。他の誰よりも何よりも」
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