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腐男子の彼
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「桜庭くんっ、桜庭くんっ。聞いた? 聞いた? 転校生のこと! ついに、ついに僕の夢が叶ったんだよっ。こんな完璧な王道学園に来るのは王道転校生しかありえないっ。ていうか違ったら僕が許さないよっ! 明日くる転校生には、僕に萌えと生命力を与える義務があるんだからねっ!」
「あぁ、そう。」
「つめたっ......! その反応、つめたっ。学園一の美人と生徒たちから慕われてる桜庭くんとは思えない返答っ。」
なに、それ。聞いたことないよ。
「ふぁ......。ねむい。」
日に日に暖かくなっていく気候に、未だ隣でピーちくパーちく口を開く、元同室者を無視してあくびを漏らす。
悠め。
俺をあらぬ時間に叩き起こしといて、自分は幸せそうだなぁ。ほんと。
つい先程とはうってかわって寝にくくなった固いベンチの上で小さくため息をつきながら、校舎に掲げられている巨大な時計を確認。
会議は生徒会室で9時から始まるから、あと。
「20分、か。」
「え、なにが。」
「なにって、会議までの時間だよ。今日は悠も出るんだから、ちゃんと真面目にしなよ。」
「はいはいさー。わかってるよ。僕の演技は完璧だもんね。」
「まぁ、うん。それはそうだけど。」
ふざけた調子でそう返してくる悠に、否定できずそのまま頷く。
実際、ほんとに悠の演技は完璧で、俺も寮で同室者になる中等部まで、見事にその演技に騙されていた。
俺が彼の本性を知ったのは、寮の同室になった去年のこと。
初めは、無口で無表情な彼と仲良くなれるとも思えなくて、必要以上の付き合いしかしていなった。
朝食の準備も各自、自分の分だけこなして相手のことには関わらない。一日、一言も言葉を交わさない日もあったぐらいだ。
俺はそんな関係に不満はなかったし、それでいいと思っていた。ただの同室者となれ合う理由はないし、多少不便かもしれないかも、と。
だが、そんな俺たちの冷たい関係は、俺が彼の部屋をたまたま覗いてしまったことによって終わりを告げた。
悪気はなかったのだ。
部屋のなかがぎりぎりみえるほど開いていた扉。たまたま廊下を通って悠の部屋の前を通ったとき。
眼に入ってきたそれ。
そこに散らばるあきらかに盗撮であるだろう写真の束と、自分の母親を思い出す腐ったもののオンパレードにたまらず彼を問い詰め、今に至る。
悠と親密な関係を気づくことになった発端の事件を思いおこしながら、辺りを見回す。
ふいに目に入った時計に、そろそろ生徒会室へ向かったほうがいいだろう、と悠に声をかけようとした瞬間。
「あっ、書記さまー。」
「犬飼さまーっ。」
一段下がったこのベンチからは見えない角度にある、右前方にある渡り廊下。
そこから聞こえてきているのだろう生徒たちの声に、危うく声を漏らしそうになり、そっと深くベンチへ座り直した。
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