王様のナミダ

白雨あめ

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会議

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「では、明日の転校生は会長の代わりに私が正門まで迎えにいくということでよろしいですか?」

授業二限分にも渡った会議を締め括るようにそう言いはなった菊地副会長に、組んでいた足をほどく。菊地副会長は艶やかな黒髪が目立つ秀才だ。会長とは家同士が近く、仲が良いとか悪いとか。

会長とはあの日以来、特に言葉を交わすこともなかった。一方的に様子を伺ってきたからか、会長の体調不良に気づかなかった自分自身に少し思うところがある。

「では、そういうことで。先ほどまとめた新入生歓迎会の資料はこちらで保管しておきますので、今日はこれで解散に。......藤間委員長。」

「あぁ。それでいいだろう。今日は解散だ。」

いつもの天敵がいないせいか、若干覇気を失ったような冬至の声に部屋のパイス椅子がガタガタを音をたて始める。

「んー。やっと終わったぁー。もぉ、お腹すいたなぁー。ね、今からご飯食べにいこうよぉ。」

「......あぁ。」

のんびりと語尾を伸ばす独特の口調とともに、ホワイトボートを背に立った会計は、悠の長身にその手を絡ませ、そのまま会議室を出ていった。

友人にしては些かスキンシップがいきすぎている気がするけど、悠がいいのなら、きっとそれでいいんだろう。

部屋を出ていく瞬間、一瞬悠と目が合った気がしたが、その本性を知るだけに、やはり違和感は拭えない。


「おい、菊地。あいつは本当に熱を出しているのか? ただ会議が面倒でサボっているだけじゃないのか?」


三人きりになった室内で、冬至が機嫌悪く言葉を発する。

会長が熱をだした。
今まで聞いたことも、想像したこともなかった事態に、驚いていたのは俺だけではなかったようだ。よく考えれば会長だって人間。風邪だってひくだろう。
だけど普段の会長から弱っている姿が遠すぎて、想像したこともなかったのだ。

普段、会長とは喧嘩しかしていない冬至は、さらに信じられない気持ちなのだろう。


「えぇ、残念ながら本当のことのようです。普段、滅多に他人と連絡を取らない会長が、今日直々に私に電話してきましたから。」


冬至の問いを予想していたような副会長の物言いと、今この現状に酷く迷惑しているというような表情に、自然と疑問が口をついて出る。

「ねぇ、会長大丈夫なの? どれぐらい熱が出てるとか聞いた?」

「いえ、それは言っていませんでしたし、聞いていません。ですが、あの会長のことです。大丈夫でしょう。開口一言、見舞いは必要ないと言っていましたし、こちらに風邪を移されても困りますからね。」

本心からそう思っているような副会長の声色は冷たい。
同じ生徒会メンバーなんだからもう少し心配というものをしてもいいのにと思うのは、きっと俺の我が儘なんだろう。


「はっ。まぁ、そうだな。そもそもあのバ会長が自分の体調管理すら出来ていない証拠だ。」


いつもより、3割ほど薄い眉間のしわをおさえながら席を立つ冬至を咄嗟に呼び止める。今日使った資料を片付け会議室を出ていく副会長を横目に捉えて、冬至に声をかけた。

「まぁ、冬至。そんな言い方しなくてもいいじゃん。今、いろいろ忙しい時期だって俺も分かってるから、俺がちょっと会長の様子みてくるよ。」

「は? なんで、お前がいくんだ。」
 
「だって会長言わなかっただけでほんとは酷いってこともあるかもしれないし。風紀の活動時間までには、戻るから大丈夫。」

「は? ちょ、おいっ。桜庭!」


後ろから聞こえる学園の大魔王の怒声を無視して、部屋をでる。
俺相手にこうまで声をあらげる彼も珍しいなと頭の隅で考えながら、そのまま一階に続く廊下を歩く。
一階にはだいたいの生活必需品が揃う購買がある。良家の子息から一般家庭に馴染みのものまで、品揃えはばっちりだ。

「お見舞いの品ってなにがいいのかな。」

購買に並ぶ商品を思い浮かべながら、ぼそり呟く。
普段、熱を出した人の部屋に訪ねることもないので、一体なにを持っていったらいいのか分からない。会長の好きな食べ物なんかも知らないし。


ブレザーのポケットの中へと手を入れ生徒認証カードの在りかを探りつつ、左てに見えてきた階段を降りる。

握った鉄の棒は、想像通りひんやりと冷たかった。

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