りゅうはきっと、役に立つ。ピュアクール幼児は転生AI?!最強知識と無垢な心を武器に、異世界で魂を灯すためにばんがります!

ひつじのはね

文字の大きさ
164 / 183

158 反作用

しおりを挟む
「どうちて、風がないのに速い?」
「魔道具か、捕虜の人力か……見たとこ、帆が張ってるから、風の魔道具か」

私の頭に『?』が浮かぶ。
魔道具と言うから、エンジンのようなものがあるのかと思った。
だけど、そうではないらしい。
風の魔道具とは……つまり、風を起こすということだろう。
だけど、船の上にたとえば巨大扇風機を置いたところで、船はほぼ進まない。

納得いかない視界の中に、頑張って羽ばたいたガルーの視界が広がる。
あれが、魔道具……?
二人の海賊が、腕を掲げて帆に向けている。
その腕にはまっている、あまりにも不似合いな装飾品。
私の首飾りも魔道具だから、きっとあれも魔道具だ。
作用反作用というものは、どこへ行ったのだろうか。
船に乗っている人が起こした風で、どうして船が進む……?

これもリト学だろうか、と思ったところで、ハッとした。
風魔法は、『風』なのだ。
あの時だって、私に反作用は来なかった。

「りと! ちゅぎの大砲のあと、移動ちて!」
「は? どこにだよ」

言いながらほどなく、大砲を一つ切り捨てた。

「りと、移動! 右へななほ!」
「え、は? なんだその細かい指示」
「もういっぽ!」

よし、この位置。 

「うぇ・すぱ!!」

最適迎角から、帆にたっぷりと風を送る。
……やっぱり。私に反作用は来ない。吹き乱れる風で、髪がかき乱される程度。
であれば……。

「うおおお?!」
「な、なんだ?! そ、操舵ぁ!! 舵手、戻れぇ!」

リトに乗っていて良かった。
急に動いた船に、いろんな人がごろごろ転がっていく。
数人がこけつまろびつしながら慌ただしく走り回り、帆が気持ちよく膨らんだ。

「……お前、何した?」

じろり、と首だけで振り返るリトは、きっと何をしているか分かっているから、動かないのだろう。

「りゅー、風魔法した」
「なんで使えんだろうなあ……?」
「練習ちた」

練習したと言うほどしていないな、と思いつつ、なんともちょうどよく使えるようになっていたものだと思う。

「うぇ・すぱ!」
「おおおおお?!」

私が魔法を更新するたび、悲鳴なのか何なのか、船員が声を上げる。
舵を取りにくいのかもしれない。
海賊船はもうかなり小さくなって、もう追ってはこられないんじゃないだろうか。

「リュウ、もういいぞ。疲れてねえか?」
「りゅー、ちゅかれない」
「普通、疲れんだよ。そのくらいデカい魔法何度も使ったらな」

もう大丈夫か、と背負子を下ろしたリトが、私を見て首を傾げる。

「なんでお前、今さら目つむってんだ?」
「りゅー、目々開けていい?」
「何言ってんだ、勝手に開けてたろ?」
「開けてない」

むっとしながら、戻って来た自分の視界の眩しさに瞬いた。

「いや、大砲の方角とか……ん? つうかお前、背負子に座ってて大砲が見えるわけねえな?! どういうことだ?!」

そう、背負子に座った私の視界はとても低いし、リトと背中合わせになる。
大砲など、見えやしない。

「がるーの目々で、見た」
「ピルルッ」

脳内に流れていた映像がほぼ重なって、ガルーが肩に戻って来た。
小さな身体で大分頑張ったのだろう、ぐったりしていて慌てて魔力を注いだ。

「は……? 召喚獣って、そんなことできんのか……?! つうかそれだとお前が目閉じてた意味なくねえ?!」

それはそう。でも、約束を破ってはいない。
素知らぬ顔をする私に胡乱な目が向けられたところで、冒険者のカドルが走ってきた。

「おいおいおい、リト、どういうこった?! そのガキ、一体何をしたんだ?!」
「あーーーいや、護身用に魔道具を持たせてたの、思い出したんだよ」
「そういうことか! 確かに風なら間違っても大事にはならねえ! 何つういい魔道具もってんだよ!!」

あちこち血がついているけれど、カドルは満面の笑みでお礼を言った。

「マジでどうなるかと……コブ付きでもリトを乗せられんならって、あの時頷いた俺、グッジョブすぎる! このチビもマジで動じねえ~~! むしろなんか活躍してなかったか?!」
「だから言ったろ」

他の冒険者も集まって来て、口々にリトを褒めているらしい。

「そんな恰好で寄ってくんな。こいつに見せたくねえ」
「い、今さらすぎねえか……?!」

私も、そう思うけれど。
リトは適当に負傷者をあしらって私を抱き上げ、その場を離れてしまった。
私は、リトが褒められているのを聞きたかったのに。

「りと、ちゅよいって」
「まあ……Bランクだからな」
「大砲、切った」
「あれは……普通やらねえからな?! お前がいるから、仕方なく!」
「りゅーいなかったら、どうする?」

どっちにしろ、大砲で穴が開いたら困るんじゃないだろうか。

「海賊船の方を乗っ取る」
「それは、普通やっていい?」
「まあ……」

大砲を斬るのと、どっちが普通じゃないことなんだろうか。
考え込む私の頭をぽんとして、リトは誤魔化すように言った。

「船室に、もう大丈夫だって言ってやれ」
「りゅーの、おしごこ」
「そうだ」

きらきらと目を輝かせた私は、パンとキンタロたちを引きつれ、さっそく船室へ下りて行った。
勢いよく扉を開けて回ろうとして、ふと気が付いた。
急に扉を開けたら、きっと怖い。だって、この人たちは勝ったことを知らない。

***

急激に船が動いてしばし、随分静かになった。
戦闘の終わりを感じさせるその静けさは、安堵していいものなのか、戦慄すべきものなのか。
勝ったのか、負けたのか。
船室で身を潜めていた乗客たちはじりり、汗のにじむ手の平を握ったり開いたり、審判の時を待っていた。

「……なんだ?」

ふいに、ひとりが顔を上げ、耳を澄ませた。

「な、なに? どうしたのよ?!」
「いや、何か、妙な声……?」
「まさか、拷問、とか……」

ざっと血の気の引いた客たちに、声を聞いた者が慌てて首を振った。

「ち、ちがう、もっと気の抜けた――、ほら!」

一斉に集中したその耳に飛び込んできたのは、確かに人の声のようで。

「たらよう~こちょ~のはぁ、たまねしせいちゅうよぉ」
「きゃうわうっ!」

……歌、だろうか? それとも呪文?

「この成長しないド下手くそぉ! 我らが清き美しき歌をそんな駄声で歌うでないわ!」

……どうやら歌で合っていたらしい。
段々近づいてくる歌と、合いの手に入る犬の声。
癖になりそうなそのリズムに、客たちは困惑の顔を見合わせた。
コンコン、とノックされた扉の向こうから、珍妙な歌と『きゃうわうっ』が聞こえる。

「もう全然、あむなくないので、鍵を開けて出てきて大丈夫でしゅ。大人しく、出て来た方がいいとももう」

聞きようによって物凄くアヤシイセリフが、全く怪しく聞こえない。
すぐさま開けた扉の先には、案の定あの幼児。

「りゅー、嘘なない。もう、大丈夫」
「そう……か。良かった……」

真剣な顔でそう言った幼児に、乗客たちの身体から一気に力が抜けてへたり込んだのだった。
しおりを挟む
感想 310

あなたにおすすめの小説

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜転生した追放悪役令息が魔境でヴァイオリン練習していたら、精霊界隈でバズってました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

処理中です...