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177 手土産
しおりを挟む「――だからねぇ! 俺様ちゃんと無理だって言ったんすよ! リト強いからぁあ、せめてもっと強いの連れて来てって! そりゃもう懇切丁寧に! なのに、こいつらってばイケるって脅してくるからぁ! しょうがないでしょぉ、俺様の命の方が大事!!」
「そんなわけあるか」
「ありますぅうう!!」
吊り上げられたラザクが、じたばた泣きながら訴えている。
周囲には、いかにもガラの悪い輩が転がっていた。いや、リトが転がした。
動けばトラブルを引っかけてくるラザクが、スムーズに情報を集められるはずがなかった。
ラザクの言う『こっちに緋晶石の倉庫が』なんて眉唾情報について行った結果が、この状況。嗅ぎまわっていたことがしっかりバレて、ちゃっかり誘い出すのに使われたらしい。
「でも、こえでかくじちゅに、『悪事』があることが判明ちた」
「あー、まあ、じゃなきゃ俺をどうこうって話にはならねえ、か?」
「えっ…………そう! 俺様とっても役に立ったというワケでぇ!」
全然飲み込めていないだろうラザクが、すぐさま乗っかって来る。
都合の悪いことがあるから、リトを黙らせようという発想になる。それが、赤琥珀のこととは限らないけれど、私にとってそこはどうでもいい。仮説をたてられるかどうかだ。
「リトさん、助かります。こいつら、巷でも評判悪くて。けど、なんでこんなことに……?」
運ぶにはちょっと多かったので、この際ここに衛兵を呼びつけることにしたのだけど。
にこにこ見上げてくる衛兵は、思いのほかリトへ好意的だ。
「こいつ絡みで、俺が巻き込まれただけだ」
「ああ……こいつ、何か迷惑かけました? ちまちまどうでもいい小競り合いばっか起こしやがって……」
「けっ、お前ら分かってんのぉ? 俺様がここにいる意味。このラザク様、実はリトの仲間――ふべっ?!」
瞬時にさるぐつわを装着して縛り上げたリトが、スッキリした顔で衛兵へ押しやった。
「返還されてねえ借金があんだよ。で、逃げねえよう契約してんだけどよ、それを証拠に勝手に保証人にされたみてえで」
「ああ……」
同情の籠もった視線が寄越され、ラザクが目を剥いて暴れている。
「その件で探ってるうちに、こいつらに目ぇつけられたみてえだな。きな臭えトコがあるんだが、調べてもらえるか?」
「もちろんですよ! コイツらの犯罪の証拠がつかめるかもしれませんから」
……思ったよりとんとん拍子に話が進む。あんなに詳細なシナリオがなくても、リトが言うだけで調べてもらえたんじゃないだろうか。いや、今回実害を伴った実物の悪人が現れたことが大きかったのかもしれない。それだったら、ラザクの手柄になってしまうのだけど。
「――で、コイツが唯一、直接バイヤーとやり取りした人物になる」
「なるほど……。犯罪者と同時に証言者でもあるということですね」
暴れるから、だんだん拘束が増えて芋虫のようになったラザクが、フンスフンスと鼻息荒く頷いている。
「ああ。消されたら、それはそれで面倒だろ」
「確かに……ウチで保護する必要がありますね」
「……」
その可能性について考えていなかっただろうラザクが、涙目で震えている。
これで勝手に脱走はしないだろう。
いそいそ引っ立てられていくラザクを見送って、私たちは顔を見合わせた。
「……もう、このまま全てを置き去りにするっつうわけには……」
「借金返済、いやない? らざく大よよこびで、ほとぼり冷めた頃にまたちゅいてくるかも」
「否定できねえ……」
がっくり項垂れたリトは、とぼとぼ宿へと方向転換する。
せっかく私が集めた情報も、無駄になってしまった。
あとで整理しようと貯めていた膨大な会話データ。まあいい、これはこれで、人間の会話という情報に違いはないだろう。
「りと、お土産買って帰る」
「お土産? なんのだよ」
「せいりあ」
ああ、と気付いたリトが商店街を通るルートを選んでくれる。
明日また、セイリアのお店に行くのだから、喜びそうなものを持って行くのだ。
「ふーん。美味いモンは全部自分のもの、だったお前がねえ」
「りゅー、そんなことちてない」
憤慨しつつ、過去を検索するのはやめておいたのだった。
◇
翌日、ラザクのいない爽やかな朝を迎えて、リトと二人でセイリアの店へ向かった。
散々悩んだ末に、お店の人に勧められたお菓子を手に、意気揚々と歩く。
にま、と口角がひとりでにあがっていく。
「せいりあ、きっとよよこぶ」
「そうだな、間違いねえよ」
目がいつもよりぱちりと開いている気がする。
ふんふんと鼻息が荒くなる。
ともすれば跳ねようとする体をなだめながら、長い道のりを歩いた。
だというのに。
「――せいりあ、お休み?」
半ば呆然と、閉まった店を見上げた。
特になんのお知らせもなく、ただ、頑丈に閉められた店。
「仕入れにでも出たんじゃねえか?」
「でもりゅー、明日も来るって言った」
「まあな……急なことがあったんだろ。お前くらいの年だと、約束も覚えてねえもんだしよ」
両手で抱えたお菓子の箱へ、視線を落とした。
リトの大きな手が、ぽんと頭へ乗せられる。
「このままどっか行っちまうわけじゃねえんだから、また来りゃいい。それ、まだ腐らねえだろ」
こくり、頷いて顔を上げた。
また、来ればいい。今日はたまたま、運が悪かっただけ。
リトの出立も急がない。
セイリアに会わないままに、出ることにはきっとならない。
私はもう一度頷いて、店を見上げた。
だけど、私は想定していなかった。
いつだって起こる可能性はあるのだ。想定外の事態、というものは。
「――リュウ、どうせ知るだろうから言っておく」
翌日、仕事に出たリトは、私が宿を出るよりも早く戻って来た。
私を両手で抱えた双眸は、葛藤しているようだった。
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