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150 目標の再設定
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「がるー、ばんがれ!」
両手を広げると、リトの肩で真剣な目をしたガルーが、狙いを定めるように力を蓄えているのが分かる。
「ピルルル!」
バッ! と思い切り肩を蹴って翼を広げ、まるでハチのような勢いで一生懸命翼を振った。
「じょうず!」
段々と高度を落としつつも、部屋の反対側にいる私の腕の中へ。
まったくスピードを緩めずに突っ込んできたガルーを受け止め、頬を綻ばせた。
パンとキンタロが口々に喝采を送っている。
「大分飛べるようになったな。しかし、もうちょっと綺麗な色にすりゃいいものを……なんでそんな地味なんだ?」
だって、スズメだから。
鳴き声も歩き方も違うものの、見た目ならばほぼ完全にスズメになった。少し丸い気もするけれど、スズメの幼雛だと思えばそんなものだろう。
「ピルッ」
息を弾ませる誇らしげなガルーを撫でて、肩に乗せた。
相変わらずむくむくした柴犬のパンと、金色の毛並みが綺麗なキンタロ。キンタロは、もうすぐ当初予定
のリスザル体格になりそうだ。
興味津々だった食事摂取と排泄関係は、どうも食物を魔法の素として分解利用しているような気がする。いつまで経っても排泄がないのでかなり心配したのだけれど、食べ物を摂ると減っていた魔力が少し上がるので、おそらく召喚獣は直接魔力に分解するという特殊な機能を備えている。
私たちも魔力には変えているようだけれど、一旦消化吸収するという過程を経ているのに、不思議だ。
ちなみに、そういった特殊な吸収方法をとるためか、毒さえなければ何でも食べられそうな気がする。
ただ、それぞれ味の好みがあるようで、試しにそこらの草や貝を渡しても食べようとしなかった。
そもそも食べなくてもいいのだから、好きな物しか食べない、そんな意思を感じる。中々、こだわりが強い。
「ひとまず、いい遊び相手ができてよかったな」
「遊び相手なない、りゅーの、戦力」
「そ、そうか。まあ……ある意味そうだな」
揃ってキリリと顔を引き締める私たちを撫で、リトが名残惜し気な顔をした。
「じゃあ……問題を起こすなよ? イイコでな」
「りゅー、いちゅもいい子」
変わらぬやり取りをして、手を振った。
ガルーも飛べるようになって、町を歩いてもそうそう踏まれることはないだろうというところまで、皆成長した。今のところ、三体とも普通の動物枠に収まっている。
だから、今日はちゃんとお仕事にいくのだとか。
どうも、リトは港のあたりでかなり引っ張りだこの冒険者であるよう。
休んでいる間も、ギルドに何度も問い合わせがあって困るのだと受け付けスタッフが恨めしそうな顔をしていた。
「りゅーも、船」
「そうだった、お前連れで行ける依頼があるかは、探してみる」
頷いて、召喚獣たちは大丈夫かと視線をやった。
くりりとしたつぶらな瞳が、どこでも大丈夫だと頼もしい返事を返してくる。
中々、度胸のある魂だ。飛べるのに水の上を嫌がる、ファエルとは違う。
リトが部屋を出るのを見送って、窓から見えなくなるのを見送って、ベッドに腰かけた。
目下のところ直近の課題としていた達成目標、あとは泳げるようになることと、船に乗ること。泳げるようになるには、泳ぐ機会が必要なわけで。これは一旦目標から外そう。
あと、船に乗れるかどうかは、私よりリトの努力がものをいう目標だ。これも除外。
「魔法をちゅかう、召喚する、お金稼ぐ、達成ちた」
こぼれた呟きに、やんやと歓声を上げてくれる召喚獣たちを撫で、ふむと考えた。
では、次なる目標設定をすべき。
長期目標と言うべき課題は古代語の翻訳と、『光る木』についての調査。リトは古代語が読めないのなら、もしかするとそこにヒントがあったりしないだろうか。
古代語は日常で使われることがないので、遺跡やダンジョンなどを調査する必要がありそう。
「課題ひとちゅめ、だんじょんや遺跡調査」
短い腕を組んでそう零すと、窓辺で鼻歌を歌っていたファエルがギョッと振り返って飛んできた。
「ちょちょっと、弟子、何を言っちゃってるの?! ダンジョンなんて、チビッ子が行ける場所じゃないからね?!」
「でも、りとがいる」
「頼る気満々?! いや、あの過保護者べらぼうに強いけどさぁ、さすがにダンジョンは危険っていうかぁ……我が危険って言うかぁ……。魔物その他の巣窟よ?!」
確かに、今まで読んだ本でも危険な場所だと書いてあったけれど。
でも、私にはこうして味方もできた。
目をきらきらさせるパンとガルー、真剣に考え込むキンタロ。
ただ、ピッ、と鳴いたペンタは、やめておけと言っている気がする。
「りゅーも、魔法ちゅかえるようになった」
「洗浄魔法で何しようっての?! 生活魔法の方がまだ役に立つでしょぉ?!」
「じゃあ、他の魔法おちえて」
「ええーそんなこと言ったって、我今使えないですしぃ」
まるで、過去は使えたような言い草だ。
だけど、知識は少なくとも持っているようなので。
「詠唱、おちえて」
「詠唱だけ教えたって使えるもんじゃないですけどぉ?」
「でもりゅー、魔力操作覚えた」
「あー、まあ、言うは易しよ。おやつ寄越すなら、詠唱くらい教えてやりますか。それで? 弟子はどんな魔法の授与を望む?」
厳かな顔をしたファエルが、ペンを持って胡坐をかいた。
それならば、手っ取り早く最強の魔法を聞いておけば――いや。
違うな、と首を振った。
私が得意なのは、段階的な学習。
段階的に、詠唱構造の共通パターンや属性の反応特性を学習することが、複雑魔法の基礎モデル構築に不可欠。逆に言えば、それさえ怠らずに行えば、私は自ら最強魔法を構築することも可能かもしれない。
「それに……破壊力がちゅよくても、最強なない。ひちゅようなのは、最適であること」
ある状況で最も効果的な出力と効果を得ること。それが私の考える『最強』。
それが、たとえ初期魔法であっても。
状況、目的、資源、リスクに基づいて、最大効率で成果を出せる構造こそが、最適で最強の魔法となり得るに違いない。
ひとつ頷いて、ファエルに視線を戻した。
だから、限定的な要素の魔法から、体系的に学ぶのがいい。
「まじゅは、単一属性・単一出力・短詠唱からおちえて」
「んっ? んんっ? なんて??」
分かりにくいだろうか。
ならば、と首を傾げてその中からひとつを選び出す。
「風の、初級魔法おちえて」
「ふむ、初級を望むとは中々、見どころがある。何事も、礎は石を一つ積むところから始まるのであって――」
ファエルの長い話が終わるより先に、詠唱は書き終わった。
これなら、ただの単語に見える。人間の魔法はもう少し長い気がするけれど。
でも、アクルマフルスも単語のようだし。
「はっ……?! これって、まさか……弟子、また延々とこれを口ずさむ羽目になるんじゃ……?! い、いやあぁあ! やっと、やっとアクルマフルスの悪夢から解放されたのにぃ!!」
今度は、魔力操作を覚えているのだから、そうはならない……はず。
頭を抱えて転げまわるファエルを横目に、私はさっそく窓を開け、詠唱の練習を始めたのだった。
-----------------
デジドラkindle版、たくさん読んでいただいてありがとうございます!!
おかげさまで紙書籍に踏み切れます!
紙書籍の方は、期間を決めて受注制作方式をとる予定です。
受注制作といえど、お値段を先に決めなくてはいけないわけで……。
非常に非常に悩みますが、kindleでたくさん読んで下さっているお礼を込めて、なんとか、2000円以内にしたい……と思います! ただ、結構分厚い本になります(笑)
両手を広げると、リトの肩で真剣な目をしたガルーが、狙いを定めるように力を蓄えているのが分かる。
「ピルルル!」
バッ! と思い切り肩を蹴って翼を広げ、まるでハチのような勢いで一生懸命翼を振った。
「じょうず!」
段々と高度を落としつつも、部屋の反対側にいる私の腕の中へ。
まったくスピードを緩めずに突っ込んできたガルーを受け止め、頬を綻ばせた。
パンとキンタロが口々に喝采を送っている。
「大分飛べるようになったな。しかし、もうちょっと綺麗な色にすりゃいいものを……なんでそんな地味なんだ?」
だって、スズメだから。
鳴き声も歩き方も違うものの、見た目ならばほぼ完全にスズメになった。少し丸い気もするけれど、スズメの幼雛だと思えばそんなものだろう。
「ピルッ」
息を弾ませる誇らしげなガルーを撫でて、肩に乗せた。
相変わらずむくむくした柴犬のパンと、金色の毛並みが綺麗なキンタロ。キンタロは、もうすぐ当初予定
のリスザル体格になりそうだ。
興味津々だった食事摂取と排泄関係は、どうも食物を魔法の素として分解利用しているような気がする。いつまで経っても排泄がないのでかなり心配したのだけれど、食べ物を摂ると減っていた魔力が少し上がるので、おそらく召喚獣は直接魔力に分解するという特殊な機能を備えている。
私たちも魔力には変えているようだけれど、一旦消化吸収するという過程を経ているのに、不思議だ。
ちなみに、そういった特殊な吸収方法をとるためか、毒さえなければ何でも食べられそうな気がする。
ただ、それぞれ味の好みがあるようで、試しにそこらの草や貝を渡しても食べようとしなかった。
そもそも食べなくてもいいのだから、好きな物しか食べない、そんな意思を感じる。中々、こだわりが強い。
「ひとまず、いい遊び相手ができてよかったな」
「遊び相手なない、りゅーの、戦力」
「そ、そうか。まあ……ある意味そうだな」
揃ってキリリと顔を引き締める私たちを撫で、リトが名残惜し気な顔をした。
「じゃあ……問題を起こすなよ? イイコでな」
「りゅー、いちゅもいい子」
変わらぬやり取りをして、手を振った。
ガルーも飛べるようになって、町を歩いてもそうそう踏まれることはないだろうというところまで、皆成長した。今のところ、三体とも普通の動物枠に収まっている。
だから、今日はちゃんとお仕事にいくのだとか。
どうも、リトは港のあたりでかなり引っ張りだこの冒険者であるよう。
休んでいる間も、ギルドに何度も問い合わせがあって困るのだと受け付けスタッフが恨めしそうな顔をしていた。
「りゅーも、船」
「そうだった、お前連れで行ける依頼があるかは、探してみる」
頷いて、召喚獣たちは大丈夫かと視線をやった。
くりりとしたつぶらな瞳が、どこでも大丈夫だと頼もしい返事を返してくる。
中々、度胸のある魂だ。飛べるのに水の上を嫌がる、ファエルとは違う。
リトが部屋を出るのを見送って、窓から見えなくなるのを見送って、ベッドに腰かけた。
目下のところ直近の課題としていた達成目標、あとは泳げるようになることと、船に乗ること。泳げるようになるには、泳ぐ機会が必要なわけで。これは一旦目標から外そう。
あと、船に乗れるかどうかは、私よりリトの努力がものをいう目標だ。これも除外。
「魔法をちゅかう、召喚する、お金稼ぐ、達成ちた」
こぼれた呟きに、やんやと歓声を上げてくれる召喚獣たちを撫で、ふむと考えた。
では、次なる目標設定をすべき。
長期目標と言うべき課題は古代語の翻訳と、『光る木』についての調査。リトは古代語が読めないのなら、もしかするとそこにヒントがあったりしないだろうか。
古代語は日常で使われることがないので、遺跡やダンジョンなどを調査する必要がありそう。
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「ちょちょっと、弟子、何を言っちゃってるの?! ダンジョンなんて、チビッ子が行ける場所じゃないからね?!」
「でも、りとがいる」
「頼る気満々?! いや、あの過保護者べらぼうに強いけどさぁ、さすがにダンジョンは危険っていうかぁ……我が危険って言うかぁ……。魔物その他の巣窟よ?!」
確かに、今まで読んだ本でも危険な場所だと書いてあったけれど。
でも、私にはこうして味方もできた。
目をきらきらさせるパンとガルー、真剣に考え込むキンタロ。
ただ、ピッ、と鳴いたペンタは、やめておけと言っている気がする。
「りゅーも、魔法ちゅかえるようになった」
「洗浄魔法で何しようっての?! 生活魔法の方がまだ役に立つでしょぉ?!」
「じゃあ、他の魔法おちえて」
「ええーそんなこと言ったって、我今使えないですしぃ」
まるで、過去は使えたような言い草だ。
だけど、知識は少なくとも持っているようなので。
「詠唱、おちえて」
「詠唱だけ教えたって使えるもんじゃないですけどぉ?」
「でもりゅー、魔力操作覚えた」
「あー、まあ、言うは易しよ。おやつ寄越すなら、詠唱くらい教えてやりますか。それで? 弟子はどんな魔法の授与を望む?」
厳かな顔をしたファエルが、ペンを持って胡坐をかいた。
それならば、手っ取り早く最強の魔法を聞いておけば――いや。
違うな、と首を振った。
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段階的に、詠唱構造の共通パターンや属性の反応特性を学習することが、複雑魔法の基礎モデル構築に不可欠。逆に言えば、それさえ怠らずに行えば、私は自ら最強魔法を構築することも可能かもしれない。
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ある状況で最も効果的な出力と効果を得ること。それが私の考える『最強』。
それが、たとえ初期魔法であっても。
状況、目的、資源、リスクに基づいて、最大効率で成果を出せる構造こそが、最適で最強の魔法となり得るに違いない。
ひとつ頷いて、ファエルに視線を戻した。
だから、限定的な要素の魔法から、体系的に学ぶのがいい。
「まじゅは、単一属性・単一出力・短詠唱からおちえて」
「んっ? んんっ? なんて??」
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ファエルの長い話が終わるより先に、詠唱は書き終わった。
これなら、ただの単語に見える。人間の魔法はもう少し長い気がするけれど。
でも、アクルマフルスも単語のようだし。
「はっ……?! これって、まさか……弟子、また延々とこれを口ずさむ羽目になるんじゃ……?! い、いやあぁあ! やっと、やっとアクルマフルスの悪夢から解放されたのにぃ!!」
今度は、魔力操作を覚えているのだから、そうはならない……はず。
頭を抱えて転げまわるファエルを横目に、私はさっそく窓を開け、詠唱の練習を始めたのだった。
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受注制作といえど、お値段を先に決めなくてはいけないわけで……。
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