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08 懸想歴15年
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15年前の王宮のダンスパーティーでのことだ。
俺はその時7歳だった。
その頃の俺は人見知りがひどくてな。大勢の人間の前に出るのが恥ずかしかったんだ。
そのダンスパーティーの一角で、俺はカーテンの裏に隠れていた。
人に話しかけられたくなかったからだ。
そんな時、一人の少女が俺と同じようにカーテンの裏に入ってきたんだ。
「ふー、ここは涼しいわね!」
そんなことを口にしながらな。
その栗色の髪の可憐な少女は、俺と同じくらいの背丈だった。そして、俺の存在に気付いた彼女は、笑いながら話しかけてきたんだ。
「あら?あなたも休憩中なの?人が多くてびっくりしちゃうわよねぇ。お父様もお母さまもいろんな人とおしゃべりして、あたしのことなんか全然ほったらかしなのよ。退屈だから探検してたの!」
その少女は、俺が誰なのか知らないらしく、どんどん自分の話をしだしたんだ。まぁ、まさか王子がカーテンの裏に隠れているなんて誰も思わないだろうから、その少女も自分と同じ貴族の少年が退屈しのぎをしていたのだろうと思ったんだろうな。
マシンガントークを浴びせてくる彼女の話を、俺は黙って聞いていた。時々こくりと顔を頷くだけで、彼女はどんどん話を進めていった。俺は次から次へと出てくる話に圧倒されていたが、同時に楽しかった。
俺は人見知りであまり口を開かなかったから、みんな腫物に触れるように俺に気をつかっていたからな。そんななか、俺にお構いなしに接してきたこの少女の存在は、なんだか心地よかった。
だから俺も、思い切って話かけたんだ。
「ここで・・・僕とダンスを踊ってみない?」
とな。そうしたら彼女も
「こんなカーテンの裏で?あなた面白いわね!いいわよ!」
そして俺達は、狭いカーテンの裏で、二人だけでダンスを踊ったんだ。
まぁ、二人で両手を繋いで、前後に足を動かすだけの、簡単なものだったがな。
だが、そんな拙いダンスが、俺は楽しかった。なぜなら、彼女が楽しそうに微笑んでくれたからだ。
「楽しいね!あなた踊り上手ね!」
「うん!君もね!」
俺たちはお互い微笑みながらダンスを踊った。だが、そんな楽しい時間も終わりを告げた。
「あ!もうそろそろ戻らないとお父様に叱られちゃうわ!あなたも戻ったほうがいいわよ!」
そう言って、彼女はカーテンの裏から出て行ってしまった。
彼女との出会いは、そんな些細なものだったが・・・俺にとってはすごく大きかった。
他者との触れあいは、こんなに楽しいものだったのか、とね。
その日から、俺は少しずつ、人と話すようになっていった。
最初はとても勇気が必要だったが、彼女の笑顔を思い出すと、人と話すことなんか簡単なことなんじゃないか、と思えたんだ。そして気づいたら、俺は人と普通に会話できるようになったんだ。
それから毎日が楽しくなった。
そのおかげか、色々なことに興味を持つことができた。
そして、そのきっかけをくれた、名も知らぬ栗色の活発な少女。俺はまた会いたいと思ったんだ。
だが、次の年のダンスパーティーでもカーテンの裏に行ってみたが、彼女とは会えなかった。
彼女が誰なのか全くわからないまま、会えないまま、月日が流れた。
そんな俺が、彼女の正体に気づいたのは去年のダンスパーティーだ。
とある女性が話している内容を、通りがかった俺は偶然聞いてしまったんだ。
「私、昔ダンスパーティーでカーテンの裏で隠れてたんです。その時、名前も知らない貴族の男の子とカーテンの裏で踊ったんですのよ。あれが私の初めてのダンスのお相手でした」
その話の主こそが・・・君だったんだ。クリスティーナ嬢。
栗色だった髪が、金髪に変わっていたが。確かに、君だった。
チラ見した時に捉えた君の笑顔は、あのカーテンの裏で見せてくれたもののように、まったく屈託のないものだったからね。
俺はその時7歳だった。
その頃の俺は人見知りがひどくてな。大勢の人間の前に出るのが恥ずかしかったんだ。
そのダンスパーティーの一角で、俺はカーテンの裏に隠れていた。
人に話しかけられたくなかったからだ。
そんな時、一人の少女が俺と同じようにカーテンの裏に入ってきたんだ。
「ふー、ここは涼しいわね!」
そんなことを口にしながらな。
その栗色の髪の可憐な少女は、俺と同じくらいの背丈だった。そして、俺の存在に気付いた彼女は、笑いながら話しかけてきたんだ。
「あら?あなたも休憩中なの?人が多くてびっくりしちゃうわよねぇ。お父様もお母さまもいろんな人とおしゃべりして、あたしのことなんか全然ほったらかしなのよ。退屈だから探検してたの!」
その少女は、俺が誰なのか知らないらしく、どんどん自分の話をしだしたんだ。まぁ、まさか王子がカーテンの裏に隠れているなんて誰も思わないだろうから、その少女も自分と同じ貴族の少年が退屈しのぎをしていたのだろうと思ったんだろうな。
マシンガントークを浴びせてくる彼女の話を、俺は黙って聞いていた。時々こくりと顔を頷くだけで、彼女はどんどん話を進めていった。俺は次から次へと出てくる話に圧倒されていたが、同時に楽しかった。
俺は人見知りであまり口を開かなかったから、みんな腫物に触れるように俺に気をつかっていたからな。そんななか、俺にお構いなしに接してきたこの少女の存在は、なんだか心地よかった。
だから俺も、思い切って話かけたんだ。
「ここで・・・僕とダンスを踊ってみない?」
とな。そうしたら彼女も
「こんなカーテンの裏で?あなた面白いわね!いいわよ!」
そして俺達は、狭いカーテンの裏で、二人だけでダンスを踊ったんだ。
まぁ、二人で両手を繋いで、前後に足を動かすだけの、簡単なものだったがな。
だが、そんな拙いダンスが、俺は楽しかった。なぜなら、彼女が楽しそうに微笑んでくれたからだ。
「楽しいね!あなた踊り上手ね!」
「うん!君もね!」
俺たちはお互い微笑みながらダンスを踊った。だが、そんな楽しい時間も終わりを告げた。
「あ!もうそろそろ戻らないとお父様に叱られちゃうわ!あなたも戻ったほうがいいわよ!」
そう言って、彼女はカーテンの裏から出て行ってしまった。
彼女との出会いは、そんな些細なものだったが・・・俺にとってはすごく大きかった。
他者との触れあいは、こんなに楽しいものだったのか、とね。
その日から、俺は少しずつ、人と話すようになっていった。
最初はとても勇気が必要だったが、彼女の笑顔を思い出すと、人と話すことなんか簡単なことなんじゃないか、と思えたんだ。そして気づいたら、俺は人と普通に会話できるようになったんだ。
それから毎日が楽しくなった。
そのおかげか、色々なことに興味を持つことができた。
そして、そのきっかけをくれた、名も知らぬ栗色の活発な少女。俺はまた会いたいと思ったんだ。
だが、次の年のダンスパーティーでもカーテンの裏に行ってみたが、彼女とは会えなかった。
彼女が誰なのか全くわからないまま、会えないまま、月日が流れた。
そんな俺が、彼女の正体に気づいたのは去年のダンスパーティーだ。
とある女性が話している内容を、通りがかった俺は偶然聞いてしまったんだ。
「私、昔ダンスパーティーでカーテンの裏で隠れてたんです。その時、名前も知らない貴族の男の子とカーテンの裏で踊ったんですのよ。あれが私の初めてのダンスのお相手でした」
その話の主こそが・・・君だったんだ。クリスティーナ嬢。
栗色だった髪が、金髪に変わっていたが。確かに、君だった。
チラ見した時に捉えた君の笑顔は、あのカーテンの裏で見せてくれたもののように、まったく屈託のないものだったからね。
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