ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

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第一章「もう一つの昨日」

1-2

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「メイったら、よくママの言おうとしてることが、わかったわね!」

 苦笑いしたママは、自分で食べ終わったお皿の上に、愛用のカップを置いて立ち上がる。

「ダメだよ、ママ! カップが壊れちゃうから、重ねないで!」

 残念ながら、わたしが思い出した時には、一瞬遅かったようだ。
 お皿の上でグラグラ揺れた不安定なカップは、床に落ち取っ手が割れて壊れてしまった。

「あーあ、お気に入りだったのになあ」
と、呟きながら掃除を始めたママが、わたしを見て仕方なさそうに笑う。
 昨日の朝と同じ光景だった。

「楽しようとして重ねたママが悪いよね」

 あきらめたように舌を出して笑うママに首を横に振った。
 だって、わかっていたはずなのに、わたしが言いそびれたせいで……。
 わかって、いた……?
 さっきから、なんだかおかしい。
 ううん、起きた瞬間から、なんだかおかしかった。

「あのね、ママ。わたし、変なんだ」
「ん? 変って、なにが?」
「昨日なの。今、起きていることは、全部昨日のことなんだよ」
「メイ?」
「昨日もパンケーキにイチゴジャムのっけて食べたし。昨日もママが校外学習のおたよりをくれたの。それにね、電気料金の話もママが言ってたことだし、あとカップが割れるのも、わたし知ってたの。もっと早く思い出したら止められたのかもしれなくて」
 
 わたしの話を、うなずきながら聞いてくれたママが笑った。

「ん~……、それってもしかしたら、デジャヴなのかも?」
「デジャヴ?」
「そう。本当はね、一度も体験したことがないのに、覚えてる気がするとか、そういうこと。ママもよくあるのよ。前に夢で見たかも、なんてこと」
「違うの、夢じゃなくて、わたしのは」
「ごめんね、メイ。この話は、帰ってからにしましょう? ママ、今日はお仕事早めに行かなくちゃいけなくて、ゆっくりしてられないの。食べ終わったら食器下げて。メイも学校に遅れないように、用意してね?」

 バタバタと慌ただしく洗面所に向かうママの背中に、ため息をついた。
 デジャヴって、こんなにハッキリと覚えているものなのかな?
 テレビの画面では今日の占いが流れてる。
 やぎ座のわたしのラッキーカラーは。

「今日は黒、空を見上げて深呼吸したらいいことあるかも」

 占いより先に自分で言い当ててから、ブルブルっと首を振ってテレビの電源を落とす。
 デジャヴ、これはデジャヴなんだ。
 イチゴジャムのついたパンケーキを牛乳で流し込む。
 昨日ほど味がしない、そんな気がした。
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