ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

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第一章「もう一つの昨日」

1-7

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「……よかった――!」
「ああ、よかったな。それにしても、おまえどこから飛んできたんだよ?」

 わたしがよかったと言ったのは、チロルに対してだと思ったのか、ヒューガもうなずく。
 それから恐る恐るチロルを撫でようと手を伸ばしたヒューガ。

「イタッ! なんだよ、せっかく助けてやったってのに」

 チロルはヒューガの手にネコパンチを食らわせて、わたしの後ろに隠れてしまった。
 その態度にヒューガはふんっと口をとがらせて、落ちてた上着を腰に巻き付けランドセルを背負う。

「じゃあな! 遅刻すんなよ」

 『じゃあな』は、チロルに、『遅刻すんな』は、わたしに言ったのだろう。
 ヒューガは学校に向かって歩いて行く。

 わたしも、行かなきゃ!
 立ち上がると「ニャァン」と、足元から声が聞こえた。
 まるで、『連れて行って』と、おねだりするみたいに、可愛い仕草でわたしの足元にすり寄ってくる。
 う、可愛すぎる、だけどダメ、学校には連れていけない!
チロルにだけ聞こえるように、そっとつぶやく。

「学校に、ネコはつれていけないの。だから、ごめんね。バイバイ」

 そう伝えたら、首をかしげている。
 チロルは意味がわかったのか、ついて来ることはなく、その場でわたしを見送っているように見えたのだけれど、曲がり角で振り返ったらいなくなっていた。
 どこに行ったんだろう?
 隠れるとこなんて、ないのに、とあちこち見回したわたしの耳にカチャカチャと言う音が聞こえてきた。
 ランドセルを振ると、右側からその音が聞こえてくる。
 ……なに、これ?
 よく見たら、ランドセルに知らない黒ネコキーホルダーがぶら下がっていた。
その首元にはチロルがつけていたものとそっくりの石がついたチョーカー風の首輪。

「え、え――っ!?」

 パニックになって逃げるように走り出すと、途中でヒューガを追い越した。
 カチャカチャ、カチャカチャ、キーホルダーは鳴りやまない。
 こうして、わたしの『もう一つの昨日』の続きが、ようやくスタートしたのだった。
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