ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

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第二章「知らない昨日の続き」

2-4

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「メイちゃん、すごいね!」

 今まで三段しか飛べなかった跳び箱を、五段飛べたことにビックリしたのは、クラスのみんなではなく自分自身だった。

「朝倉さん、六段も跳んでみる?」
「い、いえ、少し足を痛めてしまったので、やめておきます」
「あら、保健室に行きましょうか」
「大丈夫です。大したことないんで、休んでればきっと」

 ヨウコ先生の提案にあわてて首をふったのは、六段どころか今なら十段でも跳べそうな気がしたからだ。
 助走をつけた瞬間、体がとても軽くなるのがわかった。
 ロイター板に乗った瞬間、どこまででも跳んでいけそうになる。
 まるでネコみたいに、身軽に……、ん? ネコ?
 体育館の隅で膝をかかえて座りながら、開いた窓の向こうに黒く動くものが見えギョッとした。
 あれって、チロル?
 目をこすったら、もうそこには何もいなかったけれど、チロルに見えたんだけどなあ……。
 いつもは緊張でしどろもどろになっちゃう国語の音読も、今日はスラスラ読めた。掃除の時間も誰よりもテキパキ動けた。
 なんなら、隣のクラスの廊下までキレイにしてしまって、「今日のメイちゃんって、なんかすごい!」と、マオちゃんが目をキラキラさせていた。
 いや、これは絶対にわたしのチカラなんかじゃない!
 だって、まるでわたしじゃないみたいだったもん。
 勝手に体が動いちゃう。まるで誰かに動かされている、そんな感じだったから。

 帰り道、ガチャガチャとキーホルダーを鳴らして歩きながら、ずっと今日一日起きた不思議なことを考えていた。
 学校の前でヒューガを追い越した時に、

「メイ、お前なんか今日変だったよな?」
 と、声をかけられた。

「……そうかな」

 笑ってごまかして、逃げ出した。
 そりゃあ、そうだ。幼なじみのヒューガが一番わかってるもの。
 わたしが、わたしらしくない一日だったってこと。

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