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第四章「らしくない、ヒューガ」
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「ただいま、チロル!」
その日の帰宅後、ランドセルを置き、すぐにリビングにいるチロルに会いに行く。
「ママ! 明日の校外学習の件で、ちょっと友達と待ち合わせしてるの」
「あら? マオちゃんたちと?」
「う、うん。だから、ちょっと出かけてきてもいいかな?」
「いいわよ、夕ご飯までに帰ってらっしゃいね」
「うん、用意してくる~!」
無理やりに不機嫌なチロルを抱き上げて自分の部屋に行く。
うん、やっぱり朝から怒っているままだった。
チロルは、無言のまま、シャアッとネコちゃんらしく、わたしを威嚇してみせた。
でも、全然怖くなんかないもんね。
わたしはひるまずに、帰り道に考え付いたことをチロルに話す。
「チロル、今から出かけよう? 夕飯までだけど、アイルちゃんを探しに」
「え? ホントに? 連れて行ってくれるの?」
あ、ようやくまともに口をきいてくれた!
なにも話さないと、チロルってば普通のネコちゃんなんだもん。
いや、見た目は本当に普通のネコちゃんだけどね。
「家を出るまでは、このカバンにキーホルダーのままでぶら下がっていてね?」
「わかった!」
そう言うなり、すぐにキーホルダーになったチロルはわたしの示した手提げカバンにぶら下がる。
カバンの中にタブレットとノートと筆箱を入れて、水筒を持ち、リビングを覗きママに声をかけた。
「ママ、チロルがわたしの部屋で眠っちゃったから、起こさないであげてね」
「わかったわ、そっとしとく。気を付けていってらっしゃい」
ママにウソをつくのは悪いと思う。
でも、そうでもしなきゃママはすぐにチロルを探してしまうだろう。
ミイのこともそうしてかわいがってたんだもん。
「で、どこに行くのさ? メイ」
家から少し離れた場所でチロルはネコの姿に戻り、わたしの隣を歩き出す。
「えっとね、ちょっと行きたい場所があって」
「ん?」
チロルをともなって、向かった場所は工場跡地だ。
ミサキちゃんが言っていたように石碑だけが残っている場所。
パパが小さい頃、ここには大きな工場があったんだって聞いたことがある。
タブレットを取り出して、石碑を写真に収める。
裏に書いてある文章も写真に撮り、ノートにもメモを取る。
「メイ、まーだ?」
「もうすぐ、終わるから、ちょっとだけ、待ってよチロル!」
チロルに急かされて顔を上げた時、道路の向こう側を早歩きしているヒューガの姿を見つけた。
「ヒューガ?」
立ち上がったわたしに気づくことのないヒューガは、明日行くはずの大きな神社の方面に急いで曲がって行ってしまった。
その日の帰宅後、ランドセルを置き、すぐにリビングにいるチロルに会いに行く。
「ママ! 明日の校外学習の件で、ちょっと友達と待ち合わせしてるの」
「あら? マオちゃんたちと?」
「う、うん。だから、ちょっと出かけてきてもいいかな?」
「いいわよ、夕ご飯までに帰ってらっしゃいね」
「うん、用意してくる~!」
無理やりに不機嫌なチロルを抱き上げて自分の部屋に行く。
うん、やっぱり朝から怒っているままだった。
チロルは、無言のまま、シャアッとネコちゃんらしく、わたしを威嚇してみせた。
でも、全然怖くなんかないもんね。
わたしはひるまずに、帰り道に考え付いたことをチロルに話す。
「チロル、今から出かけよう? 夕飯までだけど、アイルちゃんを探しに」
「え? ホントに? 連れて行ってくれるの?」
あ、ようやくまともに口をきいてくれた!
なにも話さないと、チロルってば普通のネコちゃんなんだもん。
いや、見た目は本当に普通のネコちゃんだけどね。
「家を出るまでは、このカバンにキーホルダーのままでぶら下がっていてね?」
「わかった!」
そう言うなり、すぐにキーホルダーになったチロルはわたしの示した手提げカバンにぶら下がる。
カバンの中にタブレットとノートと筆箱を入れて、水筒を持ち、リビングを覗きママに声をかけた。
「ママ、チロルがわたしの部屋で眠っちゃったから、起こさないであげてね」
「わかったわ、そっとしとく。気を付けていってらっしゃい」
ママにウソをつくのは悪いと思う。
でも、そうでもしなきゃママはすぐにチロルを探してしまうだろう。
ミイのこともそうしてかわいがってたんだもん。
「で、どこに行くのさ? メイ」
家から少し離れた場所でチロルはネコの姿に戻り、わたしの隣を歩き出す。
「えっとね、ちょっと行きたい場所があって」
「ん?」
チロルをともなって、向かった場所は工場跡地だ。
ミサキちゃんが言っていたように石碑だけが残っている場所。
パパが小さい頃、ここには大きな工場があったんだって聞いたことがある。
タブレットを取り出して、石碑を写真に収める。
裏に書いてある文章も写真に撮り、ノートにもメモを取る。
「メイ、まーだ?」
「もうすぐ、終わるから、ちょっとだけ、待ってよチロル!」
チロルに急かされて顔を上げた時、道路の向こう側を早歩きしているヒューガの姿を見つけた。
「ヒューガ?」
立ち上がったわたしに気づくことのないヒューガは、明日行くはずの大きな神社の方面に急いで曲がって行ってしまった。
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