ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

文字の大きさ
31 / 67
第四章「らしくない、ヒューガ」

4-4

しおりを挟む
「ただいま、チロル!」

 その日の帰宅後、ランドセルを置き、すぐにリビングにいるチロルに会いに行く。

「ママ! 明日の校外学習の件で、ちょっと友達と待ち合わせしてるの」
「あら? マオちゃんたちと?」
「う、うん。だから、ちょっと出かけてきてもいいかな?」
「いいわよ、夕ご飯までに帰ってらっしゃいね」
「うん、用意してくる~!」

 無理やりに不機嫌なチロルを抱き上げて自分の部屋に行く。
 うん、やっぱり朝から怒っているままだった。
 チロルは、無言のまま、シャアッとネコちゃんらしく、わたしを威嚇してみせた。
 でも、全然怖くなんかないもんね。
 わたしはひるまずに、帰り道に考え付いたことをチロルに話す。

「チロル、今から出かけよう? 夕飯までだけど、アイルちゃんを探しに」
「え? ホントに? 連れて行ってくれるの?」

 あ、ようやくまともに口をきいてくれた!
 なにも話さないと、チロルってば普通のネコちゃんなんだもん。
 いや、見た目は本当に普通のネコちゃんだけどね。

「家を出るまでは、このカバンにキーホルダーのままでぶら下がっていてね?」
「わかった!」

 そう言うなり、すぐにキーホルダーになったチロルはわたしの示した手提げカバンにぶら下がる。
 カバンの中にタブレットとノートと筆箱を入れて、水筒を持ち、リビングを覗きママに声をかけた。

「ママ、チロルがわたしの部屋で眠っちゃったから、起こさないであげてね」
「わかったわ、そっとしとく。気を付けていってらっしゃい」

 ママにウソをつくのは悪いと思う。
でも、そうでもしなきゃママはすぐにチロルを探してしまうだろう。
 ミイのこともそうしてかわいがってたんだもん。

「で、どこに行くのさ? メイ」

 家から少し離れた場所でチロルはネコの姿に戻り、わたしの隣を歩き出す。

「えっとね、ちょっと行きたい場所があって」
「ん?」

 チロルをともなって、向かった場所は工場跡地だ。
 ミサキちゃんが言っていたように石碑だけが残っている場所。
 パパが小さい頃、ここには大きな工場があったんだって聞いたことがある。
 タブレットを取り出して、石碑を写真に収める。
 裏に書いてある文章も写真に撮り、ノートにもメモを取る。

「メイ、まーだ?」
「もうすぐ、終わるから、ちょっとだけ、待ってよチロル!」

 チロルに急かされて顔を上げた時、道路の向こう側を早歩きしているヒューガの姿を見つけた。

「ヒューガ?」

 立ち上がったわたしに気づくことのないヒューガは、明日行くはずの大きな神社の方面に急いで曲がって行ってしまった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【運命】と言われて困っています

桜 花音
児童書・童話
小6のはじまり。 遠山彩花のクラスである6年1組に転校生がやってきた。 男の子なのに、透き通るようにきれいな肌と、お人形さんみたいに、パッチリした茶色い瞳。 あまりにキレイすぎて、思わず教室のみんな、彼に視線が釘付けになった。 そんな彼が彩花にささやいた。 「やっと会えたね」 初めましてだと思うんだけど? 戸惑う彩花に彼はさらに秘密を教えてくれる。 彼は自らの中に“守護石”というものを宿していて、それがあると精霊と関われるようになるんだとか。 しかも、その彼の守護石の欠片を、なぜか彩花が持っているという。 どういうこと⁉

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

小鳥

水翔
絵本
小鳥と少女の物語

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

処理中です...