ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡

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第六章「博士の遺言」

6-8

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「ねえ、チロル!」

 アイルちゃんが耳をピンと立てて、毛を逆立ている。
 同じようにチロルも毛を逆立てながら、わたしの腕を抜け出て振り返った。

「どうしたの? チロル」

 アイルちゃんとチロルが、なにもない白いリビングの壁に向かって低い声でうなりはじめた。
 すると、白い壁が波打つように揺れて、その真ん中グルグルと渦を巻いている。

「メイ!」

 ヒューガがわたしの前に立ち、かばうように背中に隠してくれる。
 わたしは、ヒューガの背中にぎゅっとしがみつきながら、壁から目が離せない。
 渦巻きが大きくなったかと思うと、突然そこにポッカリとまっ黒な穴が開いた。

「困るよ、君たち。約束した場所にいてくれないと」

 穴の中から白衣を着た男の人が現れた。
 これって未来の人? 白衣を着ているからには、多分研究所の人なんだろう。
 でも、未来の人かどうか、パッとはわからない。
 いたって普通の人間だったから。
 変わっているのは眼鏡だけだ。
 映画などに出てきそうな片方だけのメガネは、外側からも緑色の文字や記号が浮かんでいるのがわかる。

「……、ん~、これは困りましたね。一般人を巻き込んでましたか」

 最初はチロルとアイルちゃんしか目に入ってなかったらしいけど、その目がわたしたちを捉えている。

「人の家に、勝手に家に入らないでください! ここ、わたしの家なんですよ! ケーサツ、呼びますよ! 変な人が家にいるって」
「ケーサツ? ああ、どうぞ、呼べるのなら呼んで下さいな。我々も未来の警察を呼びますよ、ハッピーペットを盗んだ罪で君たちを捕まえるように、と」

 クスクス笑った男の人は、わたしもヒューガもカチカチに固まり、おびえていることに気付いているようだ。

「家に穴開けたのだって立派な犯罪だろ。絶対、そっちの方が罪が重いんだからな! この不法侵入者!! 不審者!!」

 震えながらもヒューガが加勢してくれたけれど、未来人はクスクス笑った。

「そうでしょうか? 未来ではハッピーペットを盗んだ者は、重い罪に問われてますがね?」

 重い罪に一瞬ビビったけれど、さっきからこの人ずっとバカにしているみたいに笑ってる。
 相手がわたしたち子供だからって、余裕ぶっているんだ。
 どう言い返したらいいのかわからなくなり黙ってしまうわたしたちに、ニヤリと目を細めた。


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