主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

光の国に転生した闇属性の俺！？

70）勉強

王宮に行った日から数日過ぎた。あれから外出の頻度が増えるかと思ってワクワクしていたが、王宮に行ったことが王都に大きな衝撃を与えてしまったらしく俺は今や有名人らしい。なので次に外出するのはまだまだ先になりそうだ。

と、いうことで今の俺にできることは街に出る時のために体力をつけることだ。なので今日も騎士団の訓練場に来てポールの特訓を受けている。ここ最近は毎日体を動かすことで体力も少しずつついてきている気がする。前みたいに次の日寝込むことも少なくなってきた。

「今日はここまでにいたしましょう」

「ん？なんかいつもより終わるのが早い気がするんだが、何か用事でもあるのか？」

「私は特にないのですが、公爵様が何やらナハト様に用があるようで」

「そうなんだ。じゃあ、汗もかいたし着替えてからお父様のもとに行こうと思うよ」

「では公爵様にはそのように伝えておきます」

ポールは毎回丁寧に俺と接してくれる。ポールは騎士団の中でも珍しい平民出身だ。貴族の中に混ざるとなると困ることも沢山あっただろう。彼はきっと何事も努力できる人なんだろう。貴族をも黙らせるほどの剣の実力と、平民だからと馬鹿にされないような言葉遣い。今の騎士団副団長の地位は彼の努力の上にある。

（俺もポールみたいな筋肉つかないかなあ）

ポールの見た目は漢の中の漢というにふさわしいほどの肉体を持っている。ボリュームのある胸板に絞られた肉体は逆三角のようになっており格好いい。それにさっぱりとした短髪にイカつい顔の傷までもが彼の男らしさを際立たせている。彼こそが俺の憧れなのだ。

一度部屋に戻り、汗を魔法で洗い流す。魔法のない世界ではタオルで拭き取るのが常識だがこの世界では水属性と、風属性のマジックアイテムを使って体を綺麗にしたり乾かしたりする。こう言う部分は前の世界と違って便利である。

こんこん

「なんだ」

無機質な父の声が聞こえる。きっと俺がきたことに気づいていないのだろう。

「お父様、僕です」

「ああ！ナハトだったのか。さあさ入ってくれ」

「何か僕に要件があるとのことで伺いました。今はタイミングが悪かったでしょうか？」

「そんなことないさ。それに君のことを呼んだのは私だからね」

父はそう言って俺のことをソファに座らせてくれた。さっきまで外で体を動かしていたからか眠たくなってくる。うとうとし始めると父がどこからかブランケットを持ってきた。

「さっきまで演習場にいたんだろう。少し休みなさい」

「でも、お父様は僕に何か伝えたいことがあったんじゃ…」

「そんなものは後で構わないよ。少ししたら起こすから今はゆっくり眠りなさい」

この体ではまだ眠気に抗えない。俺は迫り来る眠気に身を任せて意識を闇の中に落としていった。