【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください

未知香

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1 婚約破棄を受け入れます

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「アルバート殿下……婚約破棄を受け入れます」

 私の声は、静かに響き渡った。
 今日はアルバート殿下の誕生日パーティー。でも彼がエスコートしたのは、婚約者である私でなくリリアだった。

 だから、予想はしていた。
 泣いて取り乱すだろうと思っていたのか、アルバート殿下は一瞬目を見開いた。しかし、すぐに口角をあげ、リリアの手をとった。

「リリアは素晴らしい女性だ。残念ながら、君よりもずっと私の妻にふさわしい、ミレーナ」

「そうね……私は聖女よ。ミレーナ様よりずっとこの国やアルバート殿下の役に立てるわ。あなたが殿下に捨てられるのも無理はないと思うの」

 リリアは微笑みながら、わざとらしくため息をついた。その目には嘲笑が浮かび、私にを見下すように視線を送っていた。

「……リリア様」

 怒りと悲しみが入り交ざって叫び出しそうになるが、何とか冷静を保つ。

「あなたみたいに地味で取り柄もない女性が、殿下にふさわしいわけがないでしょう?」

 アルバートもリリアの言葉に無言で頷き、冷たく私を見下ろした。

「そうだな、ミレーナ。君は俺の婚約者として何一つ役に立たなかった。魔力はあるかもしれないが、それだけだ。君には華がない。地味すぎるし、王妃としては到底相応しくない」

「そもそも、それだけじゃないわ。聖女としても中途半端よね」

 リリアがさらに追い打ちをかける。

「私なんて、ずっとあなたより優れているのよ。アルバート殿下だって、それを知っているから私を選んだの。あなたは結局、ただの飾りだったのよ」

「そうだ。リリアこそが、俺にふさわしい。王も、この婚約破棄は仕方がないと認めてくれたのだ」

「伯爵家である私の能力を見染めていただき、婚約者にして頂きました。……期待に沿えず申し訳ありません。私に異論はありません」

 アルバートとリリアは、満足げに頷いた。王は、私を冷めた目で見降ろす。

 王は、私の聖女としての能力の為に婚約させたのに能力が低く、私のことが邪魔だったのだろう。

 ……あなたの息子の仕業ですよ。
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