【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香

文字の大きさ
25 / 54

第25話 ドレスとお礼

しおりを挟む
「コノート様からドレスが届きました!」

 本当に弾むような声で、マスリーが嬉しそうに大きな箱を持ってきた。

「ドレス……?」

「そうです! パーティー用のですね!」

 マスリーはうきうきとしているが、私は首を傾げてしまう。
 すでにドレスは三着届いている。

 私の部屋はあれから、ベッドとサイドテーブルソファの他に、謎の一目で高価だとわかる壺や絵画、衣装棚などが運び込まれている。

 研究室の中にある部屋だけれど、ここだけ見れば貴族の部屋だという感想のきらびやかさだ。

 必要なものはなさそうに思えると言ったら、お任せくださいとマスリーがうきうきと手配してくれている。

 次々と用意してくれているが、お金はどこから出ているのだろう。そして、必要なものはなさそうと言ったのに、何故こんなに豪華になってしまったのだろう。

 フィスラはミズキが豪華な生活をしていると言っていたが、これでは私もフィスラに呆れられたりしないだろうか。

「これがパーティー用ではなかったの?」

 今日はマナー講座がある為、きっちりとドレスに袖を通している。コルセットは苦しいけれど、レースがたっぷり使われていてとても高価だとわかるドレスだ。

「それでもパーティーに出て全くおかしくない品物ではありますが、コノート様の隣に並ぶには足りないかもしれません。ほら、こちらを見てください。この刺繍は素晴らしいです。……本当に、いいものだわ」

 そう広げられたドレスは圧倒されるくらいに綺麗だった。深い赤に複雑な模様が刺繍してあり、それが派手すぎずに高級感を出している。

 細かい刺繍はやはり手縫いなのだろうか……労力が恐ろしいことになりそうだ。

「凄い綺麗ね……」

 それでも、広げて手に取る
 とやっぱりときめくものがある。綺麗な服はもとよりとても好きだ。

「これはだいぶコノート様も力が入っていますわ」

「そんな事がわかるの?」

「はい。この刺繍はかなり手が込んでいますし、この部分なんて黒い宝石が織り込まれています」

「えっ。この部分って宝石なの? 高そう過ぎてこわい」

 黒くキラキラ光っている部分は確かに綺麗だけれど、宝石だと思うと恐ろしい。

「そうです。しかもコノート様の色ですね。こういう風に自分の色を相手の方に来ていただくのが本当に素敵なんですよ」

「確かに素敵だけど……。私で大丈夫かしら」

 どちらかというと少し怯んでしまう。フィスラは割と気楽そうにパーティーへの参加の話をしていたけれど、こんなものを着たら注目されてしまいそうだ。

 私の心配を感じ取ったのか、マスリーはにっこり笑った。

「コノート様が選んだ方なんですよ。自信を持って参加しないと失礼になります」

「確かにそうだわ。フィスラ様の顔をつぶすわけにはいかないよね」

 私は衣装を当てて考える。キラキラで派手な衣装。これはどう考えてもこの顔ではだめだ。確実に服に負けてしまう。それでは失礼だ。

 目立たないようにしたいけれど、フィスラ様に恥をかかせるのは絶対に嫌だ。

 私はため息をついて、マスリーを手招きした。

「この間みたいなお化粧も良かったのだけど、今度はすごく濃いお化粧にしてもらってもいい?」

「濃いお化粧ですか?」

 聞けば、ここの世界は彫が深いタイプの人間ばかりらしく、私みたいな地味な顔を派手にする技術はないようだ。

 ラッキーな事に私は趣味でコスプレをしていた。地味な顔だけあって、どんな顔にでも違和感がないと評判だったのだ。
 これを再現するのがいいだろう。

 マナーをはずれない程度にがつんと濃くしよう。というか、この派手な衣装に耐えられる日本人はほとんどいないはずだ。
 希少なその一人にミズキが入っているのは間違いないけれど。

 私はマスリーに化粧道具を持ってきてもらい、二人で練習することにした。
 久しぶりの事に、ちょっと楽しくなってきた。

「でも、その前にフィスラ様にお礼をしないとね。手伝ってもらえるかな」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について

あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました

Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。 そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。 それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。 必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが… 正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

【完結】先に求めたのは、

たまこ
恋愛
 ペルジーニ伯爵の娘、レティは変わり者である。  伯爵令嬢でありながら、学園には通わずスタマーズ公爵家で料理人として働いている。  ミゲル=スタマーズ公爵令息は、扱いづらい子どもである。  頑固者で拘りが強い。愛想は無く、いつも不機嫌そうにしている。  互いを想い合う二人が長い間すれ違ってしまっているお話。 ※初日と二日目は六話公開、その後は一日一話公開予定です。 ※恋愛小説大賞エントリー中です。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

処理中です...