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第20話 命宿る(挿絵あり)
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夜のアパート――
部屋には間接照明のやわらかい光だけが残り、カーテンの隙間から街の明かりが薄く差し込んでいた。 テレビも音楽も消したワンルームは静かで、遠くの車の音がたまに波みたいに聞こえる。
洗面台の前。 鏡の前で守護霊さんが、そっと身を隠して――
ひょこっ。
また隠れて――
ひょこっ。
鏡の向こう側に“いるはずの自分”を探すみたいに、何度も小さく顔を出す。
それは遊びみたいで、でもどこか切実で、彩音は言葉を選ぶみたいに息を吸った。
「なに…してるの?」
「!?」
あたふた…
「自分を見たい…でも見れない…悲しい…」
「そんな感じ?」
「!」
こくり…
彩音は鏡を見て、それから守護霊さんを見る。
そこに立っているのに、映らない。“見える”のに、“形として残らない”。
「うーん…だって…霊体だもん…見れないよ…」
守護霊さん落ち込む……
肩がすとんと落ちて、さっきまでの“ひょこっ”が嘘みたいに小さくなる。
その空気を、彩音は変えたくて――
ぱっと声を上げた。
「あ!じゃあさ…私が書いたげる!」
「?」
守護霊さん顔をかしげる。
「これでも中学時代の美術はオール5だったんだから!」
「えんぴつ画で書くよ。私が一番得意だったやつ。」
こくり。
机の上のスケッチブックを開く。
紙の白さが、夜の光を受けてほんの少しだけ明るく見えた。 鉛筆を持つ指に力が入る。
「じゃあそこに座って…いつもの表情で…」
守護霊さん椅子に座る。
背筋がすっと伸びて、目だけがまっすぐ彩音を見る。
“いつもの表情”が作れることが、なんだか嬉しいみたいに。
彩音が集中して描き始める。
シュッ… シュシュッ…
線が重なり、輪郭が少しずつ生まれていく。 ――なのに、ふいに手が止まった。
「守護霊さん…」
「?」
「あ…ごめん、なんでもない…もう少し顔上に。」
くぃ
「うん。そう…そのままキープね。」
(聞けない…どうして…幽霊になったの…?)
(生きてるとき…何があったの…?)
(どうして…私のそばに…居てくれるの…?)
(聞いたら…守護霊さんは居なくなる…)
(そんな気がして…)
シュッ…シュシュッ…
鉛筆の音だけが部屋を満たす。
静けさの中で、その音はやけに生々しくて――
まるで“ここにいる”ことを確かめるみたいだった。 彩音は息を浅くして、余計な言葉を喉の奥に押し戻す。
(今は…このままでいい…)
「もう少しだから…」
シュシュッ…
「我慢してて…」
シュシュシュシュ…
(私と同じ…この世界に……)
(この絵を通して命が宿る……)
線が重なり、陰影が落ちて、目の光が入る。
“その瞬間”だけ、守護霊さんがこの世界にちゃんと根を下ろしたみたいに見えた。
彩音が最後にサイン
「よし!できたよー。」
ニヤッと笑い
「うん…我ながらうまい!」
守護霊さんが彩音に近づき、覗き込む。 紙の上の“自分”を、呼吸するみたいに見つめる。
「ふふ。上手でしょ?」
「才能だね。これはもう!」
守護霊さんは顔をかしげ、自分を指差す。
「うん…守護霊さんだよ。」
「何も足してない。そのまんま。」
守護霊さんが微笑む。 その微笑みが、彩音の胸の奥をふっと軽くする。
「実は守護霊さん…めっちゃかわいい!」
「!?」
顔をぶんぶん、手をぱたぱたさせて、それはないのジェスチャー
「大学でモテモテだよ?」
少し恥ずかしそう。
「額に入れたいな…あとで買ってくるよ。」
絵を机の上に置くと吸い寄せられるように守護霊さんはその絵の元に。 そして、微笑みながらずっと見てる。
守護霊さんは言葉を言わない。
ただ、そこにある“線”を見つめている。
――自分が、自分としてここにいる証を。
(気に入ってくれてよかった…)
部屋には間接照明のやわらかい光だけが残り、カーテンの隙間から街の明かりが薄く差し込んでいた。 テレビも音楽も消したワンルームは静かで、遠くの車の音がたまに波みたいに聞こえる。
洗面台の前。 鏡の前で守護霊さんが、そっと身を隠して――
ひょこっ。
また隠れて――
ひょこっ。
鏡の向こう側に“いるはずの自分”を探すみたいに、何度も小さく顔を出す。
それは遊びみたいで、でもどこか切実で、彩音は言葉を選ぶみたいに息を吸った。
「なに…してるの?」
「!?」
あたふた…
「自分を見たい…でも見れない…悲しい…」
「そんな感じ?」
「!」
こくり…
彩音は鏡を見て、それから守護霊さんを見る。
そこに立っているのに、映らない。“見える”のに、“形として残らない”。
「うーん…だって…霊体だもん…見れないよ…」
守護霊さん落ち込む……
肩がすとんと落ちて、さっきまでの“ひょこっ”が嘘みたいに小さくなる。
その空気を、彩音は変えたくて――
ぱっと声を上げた。
「あ!じゃあさ…私が書いたげる!」
「?」
守護霊さん顔をかしげる。
「これでも中学時代の美術はオール5だったんだから!」
「えんぴつ画で書くよ。私が一番得意だったやつ。」
こくり。
机の上のスケッチブックを開く。
紙の白さが、夜の光を受けてほんの少しだけ明るく見えた。 鉛筆を持つ指に力が入る。
「じゃあそこに座って…いつもの表情で…」
守護霊さん椅子に座る。
背筋がすっと伸びて、目だけがまっすぐ彩音を見る。
“いつもの表情”が作れることが、なんだか嬉しいみたいに。
彩音が集中して描き始める。
シュッ… シュシュッ…
線が重なり、輪郭が少しずつ生まれていく。 ――なのに、ふいに手が止まった。
「守護霊さん…」
「?」
「あ…ごめん、なんでもない…もう少し顔上に。」
くぃ
「うん。そう…そのままキープね。」
(聞けない…どうして…幽霊になったの…?)
(生きてるとき…何があったの…?)
(どうして…私のそばに…居てくれるの…?)
(聞いたら…守護霊さんは居なくなる…)
(そんな気がして…)
シュッ…シュシュッ…
鉛筆の音だけが部屋を満たす。
静けさの中で、その音はやけに生々しくて――
まるで“ここにいる”ことを確かめるみたいだった。 彩音は息を浅くして、余計な言葉を喉の奥に押し戻す。
(今は…このままでいい…)
「もう少しだから…」
シュシュッ…
「我慢してて…」
シュシュシュシュ…
(私と同じ…この世界に……)
(この絵を通して命が宿る……)
線が重なり、陰影が落ちて、目の光が入る。
“その瞬間”だけ、守護霊さんがこの世界にちゃんと根を下ろしたみたいに見えた。
彩音が最後にサイン
「よし!できたよー。」
ニヤッと笑い
「うん…我ながらうまい!」
守護霊さんが彩音に近づき、覗き込む。 紙の上の“自分”を、呼吸するみたいに見つめる。
「ふふ。上手でしょ?」
「才能だね。これはもう!」
守護霊さんは顔をかしげ、自分を指差す。
「うん…守護霊さんだよ。」
「何も足してない。そのまんま。」
守護霊さんが微笑む。 その微笑みが、彩音の胸の奥をふっと軽くする。
「実は守護霊さん…めっちゃかわいい!」
「!?」
顔をぶんぶん、手をぱたぱたさせて、それはないのジェスチャー
「大学でモテモテだよ?」
少し恥ずかしそう。
「額に入れたいな…あとで買ってくるよ。」
絵を机の上に置くと吸い寄せられるように守護霊さんはその絵の元に。 そして、微笑みながらずっと見てる。
守護霊さんは言葉を言わない。
ただ、そこにある“線”を見つめている。
――自分が、自分としてここにいる証を。
(気に入ってくれてよかった…)
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