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第22話 学園祭・お化け屋敷編①
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6月中旬――
梅雨の合間の貴重な晴れ間。 湿気の残る空気の中で、大学キャンパスは初夏らしいにぎわいに包まれていた。 大通りにはテントが並び、焼きそばや綿あめの匂いがふわっと漂い、子ども達の笑い声が風に乗って揺れていく。
彩音は人の波の中で目を輝かせていた。
「いいねいいねー。私こういう雰囲気大好き。」
こくり。
守護霊さんも、飾りつけや人混みをきょろきょろ眺めながらテンションが高そうだった。
「学年によっても出し物違うし、部活別ならさらに個性的。」
こくこく。
湿り気を含んだ初夏の風が吹くたび、テントの旗が揺れ、守護霊さんの肩も楽しげに揺れる。
「お?彩音ー」
テントの間から沙織さんが片手を上げてくる。
「あ、沙織さん。」
「午前はお疲れ。ラクロスのとこ、子供いっぱいだったね。」
「そうですね。スティック使ったストラックアウトとか玉入れとか普段できないですからね。」
「ふふっ。そうだね。それに…」
「それに?」
「彩音が一番楽しそうだった。子供達と一緒に騒いで一番人気のお姉さんって感じ。」
「ははっ。まぁ…騒ぎ過ぎちゃいましたけどね。」
沙織さんは首を横に振る。
「いいんだよ、それで。お祭りなんだし。ケガだけしないように見てれば。」
「そうですね。みんなも楽しんでくれたみたいですし。」
彩音はへへっと笑う。
「やっぱりお前はかわいいやつだねぇ。」
がしがしと頭を撫でられ、「いたたた…」と彩音は少し縮こまる。
「あ、そういえば西川が体育館でお化け屋敷やってるんだわ。」
「あ、知ってます。なんでも本気で作ったらしいですね。」
「うん。けっこう怖いらしいよ?」
「へぇ…じゃあちょっと行って見ます。」
(お化け系は慣れてるし…それに人がやってるってわかれば全然怖くない。)
「んじゃ、またね。」
「はい。」
守護霊さんも沙織さんへ手を振り返していた。
---
校舎裏――
湿り気を帯びた曇り空の下、西川は巨大な黒い垂れ幕を眺めていた。
そこには“呪われた大学”の文字。 6月の重たい空気の中でも、その布だけは異様な迫力を放っている。
(ついにこの日がきた……)
(プロジェクト立ち上げから1年…有志30人…)
(体育館半分貸し切り…)
(最高の日にしてやるぜ……)
スタッフ30名の前に立ち、西川は声を張った。
「今日この日のために1年間ご苦労様でした。そしてありがとう!僕達は今日…羽ばたきます!それから…」
「簡潔に!」
「……ありがとうございます!では張りきっていきましょー!」
パチパチパチ!
―お化け屋敷プロジェクト(内部資料) ―
《泣かぬなら、泣かせてやろうぜホトトギス》
~呪われた大学~
大学の研究中、未知のウィルスを発見。 感染者は肌が火傷のようにただれ、顔が崩れる(特殊メイク)。 感染した者は生きている人間を襲う。
研究チーム20人が感染。 来場者は“生存者”として研究室に置かれたワクチンを回収し、脱出するのが任務。
プロジェクトルール
・生存者(客)に1m以内には近づかない。
・必要以上に怖がらせない。
・パニックになりそう(なったら)脱出案内。
最凶ルール(非売品・最凶チケット)
・30センチまで接近を許可(接触は禁止)。
・スタッフは全力。
・ラストの大広間では、感染者役20名が囲い込み、逃げ場をなくす演出を行う。
最凶チケット連絡網 受付スタッフが最凶チケットを確認したら、即座に全スタッフへLINEで通達。
メッセージ文面: 「最凶チケット確認。最凶モード発動。泣かぬなら、泣かせてやろうぜ!」
現場スタッフ返信: 「ホトトギス」
---
体育館の前に立ち、黒い垂れ幕を見上げながら西川は拳を握る。
(最高だ…)
「西川ー」
沙織が歩いてきて、腕を組んだまま垂れ幕を見た。
「順調かい?」
「おう。だいぶみんな怖がってくれてるからね。特殊メイク、衣装とかも全部美大生達に頼んで正解だった。クオリティがやばい。」
「そりゃそうさ、練習台として限度無し特殊メイクしていいとか聞いたら飛びついてくる。」
「ははっ。そこを狙ってるからね。」
「沙織も行ってみる?」
「私?いやいや、いいよ。」
「なにそれ、怖いの?」
「びっくりして先に手が出ちゃうかもしれないし…」
「それは…」
「ふふっ。そういうこと。」
「あ、そうそう、彩音がお昼過ぎたら顔出すって。」
「宮司ちゃんが?」
「うん。やさしくしてあげなよ?」
「お、おう…」
「んじゃ。」
沙織が去ったあと、西川は胸が高鳴るのを抑えきれず、息を吸いこんだ。
(宮司ちゃん来るのか…)
(きゃあ!とか言ってくれるのかな…)
(楽しみすぎる!)
梅雨の合間の貴重な晴れ間。 湿気の残る空気の中で、大学キャンパスは初夏らしいにぎわいに包まれていた。 大通りにはテントが並び、焼きそばや綿あめの匂いがふわっと漂い、子ども達の笑い声が風に乗って揺れていく。
彩音は人の波の中で目を輝かせていた。
「いいねいいねー。私こういう雰囲気大好き。」
こくり。
守護霊さんも、飾りつけや人混みをきょろきょろ眺めながらテンションが高そうだった。
「学年によっても出し物違うし、部活別ならさらに個性的。」
こくこく。
湿り気を含んだ初夏の風が吹くたび、テントの旗が揺れ、守護霊さんの肩も楽しげに揺れる。
「お?彩音ー」
テントの間から沙織さんが片手を上げてくる。
「あ、沙織さん。」
「午前はお疲れ。ラクロスのとこ、子供いっぱいだったね。」
「そうですね。スティック使ったストラックアウトとか玉入れとか普段できないですからね。」
「ふふっ。そうだね。それに…」
「それに?」
「彩音が一番楽しそうだった。子供達と一緒に騒いで一番人気のお姉さんって感じ。」
「ははっ。まぁ…騒ぎ過ぎちゃいましたけどね。」
沙織さんは首を横に振る。
「いいんだよ、それで。お祭りなんだし。ケガだけしないように見てれば。」
「そうですね。みんなも楽しんでくれたみたいですし。」
彩音はへへっと笑う。
「やっぱりお前はかわいいやつだねぇ。」
がしがしと頭を撫でられ、「いたたた…」と彩音は少し縮こまる。
「あ、そういえば西川が体育館でお化け屋敷やってるんだわ。」
「あ、知ってます。なんでも本気で作ったらしいですね。」
「うん。けっこう怖いらしいよ?」
「へぇ…じゃあちょっと行って見ます。」
(お化け系は慣れてるし…それに人がやってるってわかれば全然怖くない。)
「んじゃ、またね。」
「はい。」
守護霊さんも沙織さんへ手を振り返していた。
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校舎裏――
湿り気を帯びた曇り空の下、西川は巨大な黒い垂れ幕を眺めていた。
そこには“呪われた大学”の文字。 6月の重たい空気の中でも、その布だけは異様な迫力を放っている。
(ついにこの日がきた……)
(プロジェクト立ち上げから1年…有志30人…)
(体育館半分貸し切り…)
(最高の日にしてやるぜ……)
スタッフ30名の前に立ち、西川は声を張った。
「今日この日のために1年間ご苦労様でした。そしてありがとう!僕達は今日…羽ばたきます!それから…」
「簡潔に!」
「……ありがとうございます!では張りきっていきましょー!」
パチパチパチ!
―お化け屋敷プロジェクト(内部資料) ―
《泣かぬなら、泣かせてやろうぜホトトギス》
~呪われた大学~
大学の研究中、未知のウィルスを発見。 感染者は肌が火傷のようにただれ、顔が崩れる(特殊メイク)。 感染した者は生きている人間を襲う。
研究チーム20人が感染。 来場者は“生存者”として研究室に置かれたワクチンを回収し、脱出するのが任務。
プロジェクトルール
・生存者(客)に1m以内には近づかない。
・必要以上に怖がらせない。
・パニックになりそう(なったら)脱出案内。
最凶ルール(非売品・最凶チケット)
・30センチまで接近を許可(接触は禁止)。
・スタッフは全力。
・ラストの大広間では、感染者役20名が囲い込み、逃げ場をなくす演出を行う。
最凶チケット連絡網 受付スタッフが最凶チケットを確認したら、即座に全スタッフへLINEで通達。
メッセージ文面: 「最凶チケット確認。最凶モード発動。泣かぬなら、泣かせてやろうぜ!」
現場スタッフ返信: 「ホトトギス」
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体育館の前に立ち、黒い垂れ幕を見上げながら西川は拳を握る。
(最高だ…)
「西川ー」
沙織が歩いてきて、腕を組んだまま垂れ幕を見た。
「順調かい?」
「おう。だいぶみんな怖がってくれてるからね。特殊メイク、衣装とかも全部美大生達に頼んで正解だった。クオリティがやばい。」
「そりゃそうさ、練習台として限度無し特殊メイクしていいとか聞いたら飛びついてくる。」
「ははっ。そこを狙ってるからね。」
「沙織も行ってみる?」
「私?いやいや、いいよ。」
「なにそれ、怖いの?」
「びっくりして先に手が出ちゃうかもしれないし…」
「それは…」
「ふふっ。そういうこと。」
「あ、そうそう、彩音がお昼過ぎたら顔出すって。」
「宮司ちゃんが?」
「うん。やさしくしてあげなよ?」
「お、おう…」
「んじゃ。」
沙織が去ったあと、西川は胸が高鳴るのを抑えきれず、息を吸いこんだ。
(宮司ちゃん来るのか…)
(きゃあ!とか言ってくれるのかな…)
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