私の守護霊さん

Masa&G

文字の大きさ
34 / 41

第32話 想い出の場所

しおりを挟む
ガチャ――

ギィ……

ドアがゆっくりと開く。
外の空気が、わずかに部屋へ流れ込んだ。 夕方の光がカーテン越しに差し込み、ワンルームの中を淡く照らしている。

部屋の奥。 ローテーブルの前に、彩乃の姿があった。

床に座り、背筋を伸ばし、目を閉じている。
その姿は静かで、まるで時間が止まっているみたいだった。

彩音が近づく。 
一歩、また一歩。 
自分の足音だけが、やけに大きく響く。

彩乃が、ゆっくりと目を開ける。

「はっ…はっ…」

息が苦しくなる。 
胸の奥が締め付けられて、うまく空気が吸えない。

「…彩…乃?」

名前を呼ばれた瞬間。 彩乃から、一瞬だけ力が抜ける。

「…うん。」

「彩乃…ずっと…一緒に…いてくれたんだね…」

彩音の目から、涙が溢れる。

「…うん。」

「彩音は…気づいてくれた。」

「もう…大丈夫だよ。」

「彩音は…一人で進んでいける。」

「え…やだよ…なんでそんなこというの?」 

「だって今…自分の妹だって…」

「私の…運命なんだ…」

彩音の言葉を遮るように言葉を被せた。

「運命…って…」


「お稲荷様との約束……」

「お稲荷…様…?」

「なら…なら私がお稲荷様にお願いするから!」

声が震え、言葉が途切れる。

「これからも彩乃と一緒に…ずっと!」

「彩音…」

彩乃が、静かに言う。

「座って…」

「……」

彩音は彩乃の前に座る。 床の冷たさが、やけに現実的だった。

(ねぇ…どうして…そんなに微笑んでるの…私は…こんなに…)

「うれしいんだ…私…彩音が成長したことが…」

「え……」

「もう…私の力はいらない。彩音一人で大丈夫。」

「大丈夫じゃ…ないよ…」

彩乃は、ふぅっと息を吐く。

「こら。それは悪いときの彩音だよ?」

「いつもの前向き彩音はどこ行ったの?」

「……」

「ふふ。まだ…帰るまで時間があるから…」

「私のお願い…聞いてほしい。」

「お願い…?」

「うん…あの公園…あそこで…遊びたい。」

彩音は涙を拭い

「うん…じゃあ…行こ…」

玄関を出ると空はゆっくりと色を変え、街全体が夕暮れに沈み始めている。

いつも二人で通った道…。 

話しながら、笑いながら――

でも、今日は違う。 

もう、最後なんだ。 

彩乃と……もう……

東京競馬場前――

「競馬場…スタンドからの景色…すごかった…」

「うん…彩乃がすごくはしゃいでた。」

「私だけじゃないよ?彩音もそうだったでしょ?」

大学前――

「講義…楽しかったな…」

「え…私は…眠くなっちゃう…」

「ふふ。それは彩音だけ。」

「このカフェ…何回も来たよね…」

「彩乃はずっと私が食べてるの見て…ごくり…してたね。」

彩音が、少しだけ笑う。

「それは…だって…彩音がおいしそうに食べるから…」

大学運動場――

「彩音の練習…ここから見るの好きだった…」

「このベンチは彩乃の特等席だったからね。」

「うん…」

大学を通り… 電車に乗り… 公園に到着。

時は夕暮れ――
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王女と2人の誘拐犯~囚われのセリーナ~

Masa&G
ファンタジー
王女セリーナが連れ去られた。犯人は、貧しい村出身の二人の男。だが、彼らの瞳にあったのは憎しみではなく――痛みだった。 閉ざされた小屋で、セリーナは知る。彼らが抱える“事情”と、王国が見落としてきた現実に。 恐怖、怒り、そして理解。交わるはずのなかった三人の心が、やがて静かに溶け合っていく。 「助けてあげて」。母の残した言葉を胸に、セリーナは自らの“選択”を迫られる。 ――これは、王女として生きる前に、人としての答えを、彼女は見つけにいく。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私の守護霊さん『番外編』

Masa&G
キャラ文芸
本作は、本編『私の守護霊さん』の番外編です。 本編では描ききれなかった「ラクロス編」を、単独でも読める形でお届けします。番外編だけでも内容はわかりますが、本編を先に読んでいただくと、より物語に入り込みやすくなると思います。 「絶対にレギュラーを取って、東京代表に行きたい――」 そんな想いを胸に、宮司彩音は日々ラクロスの練習に明け暮れている。 同じポジションには、絶対的エースアタッカー・梶原真夏。埋まらない実力差に折れそうになる彩音のそばには、今日も無言の相棒・守護霊さんがいた。 守護霊さんの全力バックアップのもと、彩音の“レギュラー奪取&東京代表への挑戦”が始まる──。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

処理中です...