ミラクル☆ピンキー♡プリンセス

月樹《つき》

文字の大きさ
1 / 1

1話完結

しおりを挟む
「ピンキー=スイート、貴様が王子である私を謀って、この愛しのエリザベスを傷つけた事は分かっている。
 貴様との婚約は破棄の上、国外追放を申しつける!!
 今すぐ私の前から消え失せろ!!」

 それまで私の事を『愛している』と大切にしてくれた婚約者に、凍るような声でそう告げられた。
 その腕の中に、婚約破棄されたはずの公爵令嬢を抱えながら…。
 彼女に犯罪紛いの嫌がらせをされた時は、あんなに優しく庇ってくれたのに…。


 王子から色々と告発された私の行いは、全て身に覚えがない事だった。

 けれど、いま大切なのはそこじゃない。


『危なかった~!!もう少しで私、として、この変態に愛でられるところだったよ~』

 そう金髪碧眼の見るからに王子様王子様したこの王子、実は生きた人間よりも死体にトキメキを感じるという死体愛好家へんたいだった。

 当時“異色のラブストーリー”という謳い文句と、そのビジュアルの美しさに騙されて買ってしまった『ミラクル☆ピンキー♡プリンセス』なんてぶっ飛んだネームの乙女ゲーム。

 とんだクソゲーだった。

 ハッピーエンドは、結婚式の時に、誓いの口づけをして幸せ絶頂のヒロインに、何故か悪役令嬢が命懸けで最後に放った呪いの毒針が刺さり、永遠に眠り続けるとなってしまう。聖女はその存在自体が結界となるので、眠り姫となっても国を守り続け、王子はそんな妻を生涯愛し続けるというで終わる。
 バッドエンドは、攻略に失敗し、王子はそのまま悪役令嬢の婚約者と結婚するが、国の結界を保つためにヒロインの聖女の力が必要ということで、やっぱり状態とされて、一生誰に思い出される事もなく、教会の霊廟で眠り続ける。

 バッドエンドなのに、妙にその透明の棺の描写が美しかったのを覚えている。



 これ、王子に愛されていたか、誰もいないかだけの違いで、ヒロイン的には状況変わらなくない?
 寧ろ動けないのを良いことに、死体に色々仕掛ける王子がいない分、バッドエンドの方がマシな気もする。
 って、そりゃその存在だけで国の結界が張れるのだから、ミラクルよね。

 物語を思い出した今、王子の気が変わらないうちに、この国から逃げ出さなければ…でも、聖女の地位も奪われ、ただの平民になってしまったので、どうやって逃げるかが問題だわ。

 1人ショックで項垂れたフリをしながら、逃亡手段を考えていると、素敵な提案をしてくれる人が現れた。

「なら私が隣国までお連れしましょう。私は聖女としての彼女に助けられた事があります。せめて隣国まで私に送らせてください」
 そう言い出し、胡散臭い笑顔で手を差し伸べたのは、攻略対象でも何でもない、隣国のイケメン商人ローランドだった。

 他の攻略対象も既に悪役令嬢が攻略済だから、助けてはくれなかった。もしかして、この悪役令嬢、私と同じ前世持ちなのかもしれない。
 でも絶対あのクソゲーには手を出してないと思う。
 だって、あのストーリーを知ってたら、あの変態王子を攻略しようなんて思わないもの。

 そして、このローランドも曲者だ。
 私には、聖女特典で相手の鑑定が出来るのだけれど、この人鑑定にと出ている。
 決して善意だけで申し出てくれたのではないのだろう。

 ちなみに王子の鑑定もしてみた。やはりと出ている。
 記憶を取り戻す前の私は、彼を鑑定してみようと思わなかったのだろうか…。


 無事、隣国に入国した途端、それまで胡散臭い笑顔を保っていた彼は、急に真顔に戻り
「でっ、君は何が出来るの?」
 と聞いてきた。

「えっ、君に助けられた事…?そんなのその場で適当に作った嘘だよ。
 聖女というからには、それなりに何か能力があるんでしょ?
 まあ、無能でも珍しいピンク髪にラベンダー色の瞳だから、需要はあると思うよ。美少女好きの金持ちに。
 金持ち親父に売り飛ばされたく無かったら、君を側に置く有用性を示してよ」

 鑑定通りのだった。
 このままでは、せっかく王子へんたいから逃げたのに、また金持ち親父へんたいに売られてしまう‼と思った私は、余す事なく白状し、どれだけ自分が有能かをプレゼンした。
 その結果、金持ちに売り飛ばさる事もなく、私は彼の妻として手元に残された。

 その後、鑑定能力を使って交渉を上手く進め、前世の記憶をもとに開発した商品は売れに売れ、気がつけば店は各国に支店を持つ大商会となっていた。

 私も彼も引退し、二人で美しい花に囲まれた田舎で余生を過ごしていたが、そろそろ彼のお迎えの時が近づいてきたようだ。
 隣の部屋には、愛する4人の子供達と12人の孫達がお祖父様に最後の挨拶をするために控えている。
 今は夫婦で最後の思い出話に花を咲かせている最中だ。

「なあ、何であの時オレが君を連れ出したと思う?」
 あの時というのは、あの王城で婚約破棄を告げられた時のことだろう。

「わたしが使えると思ったからでしょ?」
 あの時は本当に必死だったけれど、今となっては笑い話だ。
 私はローランドの手を握りながら、微笑んだ。

「それもあるけれど…一番の理由は、一目惚れだった」
 私は彼の右の眉を見た。
 彼は嘘をつく時、右の眉がピクッと上がる。
 そんな彼の眉はピクリとも動かなかった。

「知ってたよ」
 本当は最初に彼の鑑定を見た時に、分かっていた。

「ピンキー、今までありがとう。愛してる」

「私もありがとう。愛してるわ、ローランド」

 それから、子供達、孫達との別れを終え、彼は天国へと旅立った。

 そう間を置くことなくピンキーもローランドの元へと向かったが、聖女と商売人の血を引いた子供達は、その後も商会を繁盛させ、末永く繁栄したそうだ。

 めでたしめでたし。
 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 お読みいただきありがとうございます。

 キャラ文芸の方で「須加さんのお気に入り」というヤンデレ神様と神主見習の女の子のお話を連載で書いてます。

 よろしければ、そちらも覗いてみてください^⁠_⁠^

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

秘密〜あなたにだけは知られてはならない〜

月樹《つき》
恋愛
小学校卒業前のバレンタインデーに事件は起こった。 その事がキッカケで、エミリは親友と初恋の人に別れを言うこともなく、日本を去った。 それから5年の月日が経ち、義父の仕事の関係で、再び日本に戻って来ることになったエミリ。 アメリカからの帰国子女として、名前も見た目も変わった状態で日本の高校に編入したエミリは、そこでもう二度と会うはずのない彼に再会する。 彼にだけは知られてはならない。 私があの田中笑里だと…。

悪役令嬢だった彼女についての覚え書き

松本雀
恋愛
それは悲しみというより、むしろ一種の贅沢だったのかもしれない。日々の喧噪の中で、誰かの存在を「思い出す」という行為ほど、密やかで贅沢な時間はない。 ◆◆◆ 王太子との婚約を破棄され、「悪役」として物語から退場した彼女。 残された私は、その舞台にひとり立ち尽くす。ただの友人として、ただの照明係として。それでも記憶のなかで彼女は、今も確かに呼吸している。 これは、悪役令嬢の友人の記憶をなぞりながら辿った、ささやかな巡礼の記録。

やり直しの王太子、全力で逃げる

雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。 僕は、気が付けば十歳に戻っていた。 婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。 果たしてその結末は…

一途な恋

凛子
恋愛
貴方だけ見つめてる……

真実は婚約破棄

こうやさい
恋愛
 とある国のシャルロッテという名の女の子が大切な友達に絶交されました。  最初童話っぽいもの予定で現『おとぎばなし』に当たる『しゃるろってとたいせつなおともだち』を書いて、弱いっていうかよくあるあらすじ書いただけって感じだなと思って細部考えてたら「おともだち」が「婚約者」だったら絶交って婚約破棄だよなって思いついて、試しに考えて書いてみたらそれのセルフパロディまで出来てどっちがメインか分からなくなった、と(爆)。で、放置している間に現『真実』をそのまま出したら児童書・童話のガイドライン変わったのでカテエラになるよな、けど現『おとぎばなし』単品じゃあれだよなと微妙だけど恋愛カテにしたと。   そして珍しく名前がついているキャラ、シャルロッテ・ノーマジー。名前がついても扱いがよくなるわけではない。けどわりと正当に近い悪役令嬢は思うより自作では貴重かも。  本編以外はセルフパロディです。本編のイメージ及び設定を著しく損なう可能性があります。ご了承ください。しかしこれセルフパロディが一番出来よくないか?  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

謝罪はいらない

胸の轟
恋愛
大事なのは私の世界に貴方が居ることだけ

【完結】リゼットスティアの王妃様

通木遼平
恋愛
 リゼットスティアという美しく豊かな国があった。その国を治める国王も美しいと評判で、隣国の王女フィロメナは一度でいいから彼に会ってみたいと思い、兄である王子についてリゼットスティアに赴く。  フィロメナはなんとか国王にアピールしようとするが国王にはすでに強引に婚姻に至ったと噂の王妃がいた。国王はフィロメナに王妃との出会いを話して聞かせる。 ※他のサイトにも掲載しています

その真実の愛、確かめさせてもらいます

月樹《つき》
恋愛
気がつけば、見知らぬ世界におりました。 私の名前は、マグノリア=トラリス。 トラリス公爵家の次女で、先程まで、異母姉ローゼリアの卒業パーティーの会場にいたはずでした…。 不思議な装いをした優しいお姉様が教えてくれる事には、ここはニホンという国だそうです。 初めて聞く国名。見たこともない顔立ちの、様々な装いをした人達(人でない生命体もいましたけれど…)が集まる国。 こんな異世界に転移させることができる魔法使いは、お姉様くらいでしょう…。 私は、ただ恋をしただけでした。 お姉様の婚約者のトラバルト様に…。 『意地悪な魔法使いの姉と心優しき無能な妹』 姉妹の名前から取って通称『リア・リア』 それは、20○○年の日本で、極一部のマニアには、とてもヒットしたアニメだった。

処理中です...