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設楽原
第20話
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戻って小諸。
菅沼正貞「仮に信長が武田の馬を封じ込める事が出来たとしましても、白兵戦では武田に分があります。」
高坂昌信「徳川の兵も強いぞ。」
菅沼正貞「確かに。しかし数の上では武田に対し劣勢を強いられる事になります故、時間を経るに従い家康が苦しくなる事は三方ヶ原で証明しています。一方の織田は如何でしょうか?」
高坂昌信「殿が来た瞬間、逃げてしまうと聞いている。」
菅沼正貞「武田様を油断させるためでしょうか?」
高坂昌信「それはわかりません。わかりませんが、高天神の時は何か備えをしていた事は確かでありましょう。」
菅沼正貞「そうなると此度も?」
高坂昌信「そう見て間違いありません。先程、うちの強みは馬である。と仰いましたが。」
菅沼正貞「武田の弱み。織田の強みでありますか?それは経済力です。もし武田様が今の信長の勢力圏で。しかも信長同様の敵を抱えた場合どうなりますか?」
高坂昌信「『各人の持ち場。自分たちで守ってくれ!』」
菅沼正貞「亡き御館様の時にも同様の事態に陥った事があったと。」
高坂昌信「駿河に入った時はそうであった。北条と上杉が同盟を結び、徳川とは遠江で揉め。今川もしぶとく……。御館様(武田信玄)も
『信長が頼みの綱。』
と嘆く状況にありました。」
菅沼正貞「もしあの時、信長が今の状況。畿内が落ち着いていましたら……。まぁその話は置いておきましょう。」
高坂昌信「今の信長は、長期の対陣に耐え得るだけの物を前線に投入する事が出来る?」
菅沼正貞「はい。しかしそれだけでは勝つ事は出来ません。白兵戦に持ち込まれたら最後。織田軍は本国目指し、逃げ去る事になってしまいます。織田だけのいくさであればそれで構わないのかもしれません。
しかし此度は違います。徳川家康からの要請に応じての参戦。それも信長自身も目を掛けている奥平貞昌籠る長篠城の救援であります。武田が攻めて来たからと言って逃げるわけにはいきません。その恐怖心を如何にして取り除くか?そして武田からの攻撃を退けるか?」
高坂昌信「そこでうちと信長の経済格差を利用する?」
菅沼正貞「はい。」
高坂昌信「うちに無く、信長にある物を前線に投入する?」
菅沼正貞「はい。自ずと答えは見えて来るかと。」
武田勝頼本陣。
高坂昌信「織田陣で目立ったのは鉄砲であります。恐らく信長は鉄砲で以て我らを退けようと考えていると見て間違いありません。鉄砲だけでありましたら我らにもあります。しかし我らには決定的に不足している物があります。そうです。弾薬であります。信長の狙いは我らの弾切れであります。」
織田信長による経済封鎖により、ただでさえ不足気味となっている武田の弾薬。これを先に使い切らせる作戦を実行に移そうとしている事を伝える高坂昌信。
山県昌景「確か連吾川の両岸は崖であったように記憶しているが。」
高坂昌信「その通りであります。我らが当地に辿り着く事は難しい場所であります。」
馬場信春「となると信長は何か対策を施している?」
高坂昌信「はい。織田軍は連吾川の両岸の崖を削っていました。」
内藤昌豊「どのように?」
高坂昌信「はい。まずは我らの進路にあたる側についてであります。そこで織田軍が行っていたのは連吾川に至る事の出来る道。それも大規模な部隊が一気に下りる事が出来る道を、崖もろとも削り取る形で設置していました。」
内藤昌豊「傾きは当然きつく?」
高坂昌信「はい。入るに易く、退くには厳しいものとなっています。」
山県昌景「下りた以上、信長の仕掛けを突破しない限り我らに生き残る術は残されていない?」
高坂昌信「そう見て間違いありません。」
馬場信春「信長側はどうなっている?」
高坂昌信「はい。織田側の崖についても手が加えられていました。それも我らとは異なる方法であります。」
馬場信春「どのような仕掛けが施されていた?」
高坂昌信「織田側の崖も削られ斜面となっていました。ここまでは同じであります。異なるのはここからであります。織田軍は連吾川両岸の崖を削る際発生した大量の土を用い、織田側の斜面に土塁を幾重にも構築していました。1つの1つの土塁はそれ程大きなものではありません。しかし設置されている箇所を多数確認する事が出来ています。」
山県昌景「我らの進む道を想定しているのか?」
高坂昌信「はい。馬を活用する事が出来る道筋に合わせ設置されています。」
馬場信春「馬で到達する事が出来ない坂なのか?」
高坂昌信「いえ。そこまで急な坂ではありません。」
馬場信春「そうだよな。もし人のみであったら、駆け下るような真似はしないからな……。」
高坂昌信「はい。」
馬場信春「しかしそうなると何れ土塁に辿り着く事になってしまうぞ。接近戦となれば人海戦術で準備に時間の掛かる鉄砲を無力化する事が出来る。そうなってしまえば自力で勝る我らに勝機が訪れる事になる。当然信長も……。」
高坂昌信「はい。対策が施されていました。」
馬場信春「どのような?」
高坂昌信「はい。各土塁の前など要所要所に柵が設けられていました。それも土塁同様幾重にも。」
馬場信春「馬で突破するのは?」
高坂昌信「恐らく躊躇してしまうかと。突破するには人の手が。つまり馬から降りなければなりません。そこで我らの得意とする機動力を発揮する事は出来ません。」
山県昌景「それで織田信長は我らに対し兵を少なく見せていたのか……。」
高坂昌信「恐らく。」
馬場信春「長篠城周辺からは見えない場所に陣を構え。我らが連吾川手前の崖上に進出したとしても、眼下に広がるのは小規模な土塁と柵ばかり。しかも織田軍はそこから出る気配を示さない。」
内藤昌豊「『織田は恐れている。』
と過信した我らが崖を下って川を渡り。織田が拵えた土塁に迫った瞬間。」
山県昌景「待ってましたとばかりに鉄砲を浴びせ掛けられる事になる。」
馬場信春「土塁の前には幾重にも連なる柵。」
内藤昌豊「馬は手前で立ち往生。取り除くためには馬から降りなければなりません。」
山県昌景「柵を取り除こうと右往左往している我らの間隙を縫って。」
馬場信春「安全な土塁の中で次の準備を終えた鉄砲が放たれる事になる。」
内藤昌豊「疲れ果て、後退しようとする我らを。」
馬場信春「織田の兵に襲い掛かられる事になり。」
山県昌景「先程渡った連吾川と同じく今度は上りとなる急坂に行く手を阻まれた我らは。」
馬場信春「織田兵の手柄首の憂き目に遭う。」
内藤昌豊「退却戦は難しいものであります。」
山県昌景「高坂。其方の働き感謝致す。」
高坂昌信「いえ。調べたのは私ではありません。それに指示を出したのは殿であります。」
跡部勝資「しかしそうなりますと、此度の大きな目的であります織田信長を破る事は難しくなってしまいました。」
高坂昌信「……そうだな。」
跡部勝資「ここまで費やした労力を考えますと、何も無しで帰るわけにはいきません。某か成果を上げなければなりません。」
馬場信春「その事なんだけど。」
跡部勝資「何か策でも?」
馬場信春「高坂の話を聞いていて思った事なのだが、織田信長の役目は確か長篠城の救援だよな?」
跡部勝資「その通りです。」
馬場信春「で。高坂の言った布陣を図示する限り、織田がこちらに兵を繰り出す事が出来ない場所に居るように感じるのであるが如何かな?」
内藤昌豊「そうですね。柵の前には川が流れ。その川を越えたとしても織田自らが作った急坂を上らない限り、長篠城に辿り着く事は出来ません。」
馬場信春「後詰めって本来敵を攻めるために編成されているよな?」
山県昌景「確かに。しかしこれを見る限り、織田信長自らで以て我らを駆逐しようとはしていない様子。」
馬場信春「信長は当初からここ長篠で我らと戦う算段をしていたと思われる。故に躊躇なく連吾川両岸の崖を坂に変え、残土を土塁として使用。更にその前を柵で覆った事から見て取る事が出来る。」
山県昌景「これを見た我らが戦わずしてここを離れる恐れもありますが?」
馬場信春「信長はそれで構わないと考えていたのでは無いかと見ている。彼の目的は我らによる長篠城の包囲を解く事にある。ただ正面切って戦って勝てる保証は無い事を信長は知っている。ならば我らが近付く事が出来ない状況を作り、持久戦に持ち込む。後はうちと織田との経済格差。長陣に耐える事の出来る日数の差。当然、織田の方が長く留まる事が出来る。を利用して我らを退却に追い込む。そう考えていたのでは無いか?と。後は……。」
武田勝頼「後は?」
馬場信春「信長の持つ発信力を活用し、武田に勝った事を天下に知らしめる。広報活動に勤しむ事になります。たとえ織田と武田が激突しなくても構いません。どれだけの費用が掛かっても構いません。ただ武田が長篠を攻め落とす事が出来なかった。そこに織田信長が居た。その事実だけがあれば十分であります。これまでのわずか2千で今川義元を斃したと言いふらしているあのいくさや、ほとんど総崩れとなる中、家康に救われた朝倉浅井とのいくさを見ればわかる事でありましょう。」
武田勝頼「もし信長の誘いに乗った場合はどうなる?」
馬場信春「信長は三河にも鷹狩に来ていたと聞いています。当地も見ていると考えて間違いありません。恐らくでありますが今回の坂や土塁。更には柵までを実際に拵えた上、馬を用いての演習を行っていたのでは無いか?鉄砲の弾込めに掛かる時間も考慮に入れながら。その結果、導き出された物が今の陣地となっているのでは無いか?と見ています。」
武田勝頼「突っ込むのは?」
馬場信春「危険極まりない行為であります。」
武田勝頼「今後、信長が前進して来る可能性は?」
馬場信春「流石の信長もあれだけの陣を新たに拵えるのは難しいでしょう。加えてそれを行うためには信長は川を渡り、丘に登らなければなりません。そこには乾いた大地が広がっていますので。」
武田勝頼「馬を活用する事が出来る?」
馬場信春「はい。故に信長もあそこに陣を構えたのでありましょう。今後、信長が出来る事は我らを挑発する事のみであります。乗ってくれば迎撃。来なかった来なかったで別に構わない。」
武田勝頼「同じ事をこちらがやった場合は?」
馬場信春「信長は動きません。動くとすれば家康でありますが、三方ヶ原の経験がありますのでこちらも動きません。このまま時間切れを待てば良い。と考えていたのでありましたが……。」
菅沼正貞「仮に信長が武田の馬を封じ込める事が出来たとしましても、白兵戦では武田に分があります。」
高坂昌信「徳川の兵も強いぞ。」
菅沼正貞「確かに。しかし数の上では武田に対し劣勢を強いられる事になります故、時間を経るに従い家康が苦しくなる事は三方ヶ原で証明しています。一方の織田は如何でしょうか?」
高坂昌信「殿が来た瞬間、逃げてしまうと聞いている。」
菅沼正貞「武田様を油断させるためでしょうか?」
高坂昌信「それはわかりません。わかりませんが、高天神の時は何か備えをしていた事は確かでありましょう。」
菅沼正貞「そうなると此度も?」
高坂昌信「そう見て間違いありません。先程、うちの強みは馬である。と仰いましたが。」
菅沼正貞「武田の弱み。織田の強みでありますか?それは経済力です。もし武田様が今の信長の勢力圏で。しかも信長同様の敵を抱えた場合どうなりますか?」
高坂昌信「『各人の持ち場。自分たちで守ってくれ!』」
菅沼正貞「亡き御館様の時にも同様の事態に陥った事があったと。」
高坂昌信「駿河に入った時はそうであった。北条と上杉が同盟を結び、徳川とは遠江で揉め。今川もしぶとく……。御館様(武田信玄)も
『信長が頼みの綱。』
と嘆く状況にありました。」
菅沼正貞「もしあの時、信長が今の状況。畿内が落ち着いていましたら……。まぁその話は置いておきましょう。」
高坂昌信「今の信長は、長期の対陣に耐え得るだけの物を前線に投入する事が出来る?」
菅沼正貞「はい。しかしそれだけでは勝つ事は出来ません。白兵戦に持ち込まれたら最後。織田軍は本国目指し、逃げ去る事になってしまいます。織田だけのいくさであればそれで構わないのかもしれません。
しかし此度は違います。徳川家康からの要請に応じての参戦。それも信長自身も目を掛けている奥平貞昌籠る長篠城の救援であります。武田が攻めて来たからと言って逃げるわけにはいきません。その恐怖心を如何にして取り除くか?そして武田からの攻撃を退けるか?」
高坂昌信「そこでうちと信長の経済格差を利用する?」
菅沼正貞「はい。」
高坂昌信「うちに無く、信長にある物を前線に投入する?」
菅沼正貞「はい。自ずと答えは見えて来るかと。」
武田勝頼本陣。
高坂昌信「織田陣で目立ったのは鉄砲であります。恐らく信長は鉄砲で以て我らを退けようと考えていると見て間違いありません。鉄砲だけでありましたら我らにもあります。しかし我らには決定的に不足している物があります。そうです。弾薬であります。信長の狙いは我らの弾切れであります。」
織田信長による経済封鎖により、ただでさえ不足気味となっている武田の弾薬。これを先に使い切らせる作戦を実行に移そうとしている事を伝える高坂昌信。
山県昌景「確か連吾川の両岸は崖であったように記憶しているが。」
高坂昌信「その通りであります。我らが当地に辿り着く事は難しい場所であります。」
馬場信春「となると信長は何か対策を施している?」
高坂昌信「はい。織田軍は連吾川の両岸の崖を削っていました。」
内藤昌豊「どのように?」
高坂昌信「はい。まずは我らの進路にあたる側についてであります。そこで織田軍が行っていたのは連吾川に至る事の出来る道。それも大規模な部隊が一気に下りる事が出来る道を、崖もろとも削り取る形で設置していました。」
内藤昌豊「傾きは当然きつく?」
高坂昌信「はい。入るに易く、退くには厳しいものとなっています。」
山県昌景「下りた以上、信長の仕掛けを突破しない限り我らに生き残る術は残されていない?」
高坂昌信「そう見て間違いありません。」
馬場信春「信長側はどうなっている?」
高坂昌信「はい。織田側の崖についても手が加えられていました。それも我らとは異なる方法であります。」
馬場信春「どのような仕掛けが施されていた?」
高坂昌信「織田側の崖も削られ斜面となっていました。ここまでは同じであります。異なるのはここからであります。織田軍は連吾川両岸の崖を削る際発生した大量の土を用い、織田側の斜面に土塁を幾重にも構築していました。1つの1つの土塁はそれ程大きなものではありません。しかし設置されている箇所を多数確認する事が出来ています。」
山県昌景「我らの進む道を想定しているのか?」
高坂昌信「はい。馬を活用する事が出来る道筋に合わせ設置されています。」
馬場信春「馬で到達する事が出来ない坂なのか?」
高坂昌信「いえ。そこまで急な坂ではありません。」
馬場信春「そうだよな。もし人のみであったら、駆け下るような真似はしないからな……。」
高坂昌信「はい。」
馬場信春「しかしそうなると何れ土塁に辿り着く事になってしまうぞ。接近戦となれば人海戦術で準備に時間の掛かる鉄砲を無力化する事が出来る。そうなってしまえば自力で勝る我らに勝機が訪れる事になる。当然信長も……。」
高坂昌信「はい。対策が施されていました。」
馬場信春「どのような?」
高坂昌信「はい。各土塁の前など要所要所に柵が設けられていました。それも土塁同様幾重にも。」
馬場信春「馬で突破するのは?」
高坂昌信「恐らく躊躇してしまうかと。突破するには人の手が。つまり馬から降りなければなりません。そこで我らの得意とする機動力を発揮する事は出来ません。」
山県昌景「それで織田信長は我らに対し兵を少なく見せていたのか……。」
高坂昌信「恐らく。」
馬場信春「長篠城周辺からは見えない場所に陣を構え。我らが連吾川手前の崖上に進出したとしても、眼下に広がるのは小規模な土塁と柵ばかり。しかも織田軍はそこから出る気配を示さない。」
内藤昌豊「『織田は恐れている。』
と過信した我らが崖を下って川を渡り。織田が拵えた土塁に迫った瞬間。」
山県昌景「待ってましたとばかりに鉄砲を浴びせ掛けられる事になる。」
馬場信春「土塁の前には幾重にも連なる柵。」
内藤昌豊「馬は手前で立ち往生。取り除くためには馬から降りなければなりません。」
山県昌景「柵を取り除こうと右往左往している我らの間隙を縫って。」
馬場信春「安全な土塁の中で次の準備を終えた鉄砲が放たれる事になる。」
内藤昌豊「疲れ果て、後退しようとする我らを。」
馬場信春「織田の兵に襲い掛かられる事になり。」
山県昌景「先程渡った連吾川と同じく今度は上りとなる急坂に行く手を阻まれた我らは。」
馬場信春「織田兵の手柄首の憂き目に遭う。」
内藤昌豊「退却戦は難しいものであります。」
山県昌景「高坂。其方の働き感謝致す。」
高坂昌信「いえ。調べたのは私ではありません。それに指示を出したのは殿であります。」
跡部勝資「しかしそうなりますと、此度の大きな目的であります織田信長を破る事は難しくなってしまいました。」
高坂昌信「……そうだな。」
跡部勝資「ここまで費やした労力を考えますと、何も無しで帰るわけにはいきません。某か成果を上げなければなりません。」
馬場信春「その事なんだけど。」
跡部勝資「何か策でも?」
馬場信春「高坂の話を聞いていて思った事なのだが、織田信長の役目は確か長篠城の救援だよな?」
跡部勝資「その通りです。」
馬場信春「で。高坂の言った布陣を図示する限り、織田がこちらに兵を繰り出す事が出来ない場所に居るように感じるのであるが如何かな?」
内藤昌豊「そうですね。柵の前には川が流れ。その川を越えたとしても織田自らが作った急坂を上らない限り、長篠城に辿り着く事は出来ません。」
馬場信春「後詰めって本来敵を攻めるために編成されているよな?」
山県昌景「確かに。しかしこれを見る限り、織田信長自らで以て我らを駆逐しようとはしていない様子。」
馬場信春「信長は当初からここ長篠で我らと戦う算段をしていたと思われる。故に躊躇なく連吾川両岸の崖を坂に変え、残土を土塁として使用。更にその前を柵で覆った事から見て取る事が出来る。」
山県昌景「これを見た我らが戦わずしてここを離れる恐れもありますが?」
馬場信春「信長はそれで構わないと考えていたのでは無いかと見ている。彼の目的は我らによる長篠城の包囲を解く事にある。ただ正面切って戦って勝てる保証は無い事を信長は知っている。ならば我らが近付く事が出来ない状況を作り、持久戦に持ち込む。後はうちと織田との経済格差。長陣に耐える事の出来る日数の差。当然、織田の方が長く留まる事が出来る。を利用して我らを退却に追い込む。そう考えていたのでは無いか?と。後は……。」
武田勝頼「後は?」
馬場信春「信長の持つ発信力を活用し、武田に勝った事を天下に知らしめる。広報活動に勤しむ事になります。たとえ織田と武田が激突しなくても構いません。どれだけの費用が掛かっても構いません。ただ武田が長篠を攻め落とす事が出来なかった。そこに織田信長が居た。その事実だけがあれば十分であります。これまでのわずか2千で今川義元を斃したと言いふらしているあのいくさや、ほとんど総崩れとなる中、家康に救われた朝倉浅井とのいくさを見ればわかる事でありましょう。」
武田勝頼「もし信長の誘いに乗った場合はどうなる?」
馬場信春「信長は三河にも鷹狩に来ていたと聞いています。当地も見ていると考えて間違いありません。恐らくでありますが今回の坂や土塁。更には柵までを実際に拵えた上、馬を用いての演習を行っていたのでは無いか?鉄砲の弾込めに掛かる時間も考慮に入れながら。その結果、導き出された物が今の陣地となっているのでは無いか?と見ています。」
武田勝頼「突っ込むのは?」
馬場信春「危険極まりない行為であります。」
武田勝頼「今後、信長が前進して来る可能性は?」
馬場信春「流石の信長もあれだけの陣を新たに拵えるのは難しいでしょう。加えてそれを行うためには信長は川を渡り、丘に登らなければなりません。そこには乾いた大地が広がっていますので。」
武田勝頼「馬を活用する事が出来る?」
馬場信春「はい。故に信長もあそこに陣を構えたのでありましょう。今後、信長が出来る事は我らを挑発する事のみであります。乗ってくれば迎撃。来なかった来なかったで別に構わない。」
武田勝頼「同じ事をこちらがやった場合は?」
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