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激突
第30話
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全く以て外いくさには不向きな態勢で敵を待ち構えていた高坂昌信の周りを取り囲んだ内藤昌豊隊。一見護衛にも見えるこの光景でありましたが……。
内藤昌豊「昨日から荷物を運んでばかりだよ……。」
何やらお疲れの様子。ただ……。
内藤昌豊「兵の運用はお前の得意なんだから。舵取りは頼むぞ。」
高坂昌信「わかった。申し訳ない。」
ここまで良い所の無い徳川隊は、一矢報いるべく無理攻めを承知で長篠城救援に向かった所。突如として現れたのが高坂と内藤の旗印。凡そ迎え撃つ態勢とは思われぬまま移動を試みる格好の獲物を見つけた徳川の部隊は彼らを目掛けて殺到。これに対し時々鉄砲を放ちながらのらりくらりとかわし、決め手を与えない高坂昌信と内藤昌豊。徳川の部隊が長篠城へ接岸せぬよう。北へ北へと移動を続けた高坂内藤隊と徳川の部隊に突如として現れたのが……馬場信春。
茶臼山に陣取っていた馬場信春は独り陣を構える高坂昌信を発見するや否や救援に向かうべく、つい今しがたまで織田勢が陣取っていた連吾川上流部を渡河。ちょうどそこにやって来たのが内藤高坂の部隊とそれを追って来た徳川の部隊。
徳川の横を衝く馬場の動きを見た内藤昌豊が反転。前と横からの反撃に立ち往生している徳川隊の別の側面に回ったのが高坂昌信率いる鉄砲隊。場所は連吾川上流。結果的に囮に引っ掛かる形になってしまった徳川隊は、残された来た道を戻るべく反転を試みたのでありましたが……。
武藤喜兵衛の報告を聞いた武田勝頼は、小山田信茂と穴山信君に長篠城の監視を依頼するや寒狭川を渡河。途中、有海の小幡信貞に別動隊の救援を指示。自らは徳川本隊の退路を断つべく連吾川上流目掛け兵を進めたのでありました。その結果、徳川の部隊は壊滅。這う這うの体で退却していったのでありました。
武田勝頼「疲れた……。十分である。それに長篠城の事もある。もう追うでない。」
内藤昌豊「こいつが無茶するからでありますよ。」
高坂昌信「申し訳無かった。」
馬場信春「いや肝心な事を伝えなかった私が悪かった。最悪の事態にならなかった事が何よりである。それに結果的には徳川を深入りさせる事に成功したのであるのだから。」
高坂昌信「申し訳ない。」
馬場信春「しかし何故救援を依頼する事が出来る長篠城や別動隊の方では無く、上流部に兵を動かしたのだ?」
高坂昌信「責任は最後まで取らなければ。の一心でありました。」
武田勝頼「少しは皆を信用してくれ。」
高坂昌信「申し訳御座いません。」
内藤昌豊「高坂。」
高坂昌信「どうした?」
内藤昌豊「そこに俺が居た事……忘れて無いよね?」
山県昌景率いる別動隊が大久保隊に勝利を収めたとの報告が齎された武田勝頼は医王寺の本陣へ帰還。しばらくして山県昌景も到着。武田勝頼に報告した後尋ねたのは勿論……。
山県昌景「わざと自分の手柄を放棄しようとしていたのか?」
高坂昌信「そんなわけ無いであろう。其方らにもしもの事があった際の後詰めとして兵を動かしたまでの事。」
山県昌景「もし途中何処かで苦境に立たされた時、殿では無くお前が来ていたら余計に浮足立つ所であったわ。」
高坂昌信「反省している。」
山県昌景「馬場から事情は聞いた。
『まさか高坂があれを攻めのために用いようとしているとは思っていなかった。』
と。」
高坂昌信「迷惑を掛けた。」
山県昌景「ただ一向宗の戦い方も今後の参考になるのは確かな事。特に防御に徹する。こちらから打って出ない時には効力を発揮する。それは確かな事。後はこの方式をどのようにして攻撃に活かしていくか……。」
高坂昌信「内藤にはしんがりを逃がすための最後の手段としてでしか用いる事はあり得ないと言われている。」
山県昌景「そうだよな……障壁の無い外いくさであれば、長槍や馬を用いた方が速いし手間も省ける。ただ……。」
高坂昌信「ただ?」
山県昌景「お前が考えた事を仕掛けて来る危険性がある事は認識しておかなければならない。特に(長篠城を見やりながら)孤立無援となった相手には注意して掛からなければならない。」
高坂昌信「そうだな。」
山県昌景「ただうちはやらないぞ。新たな禁止事項とするよう働き掛けを行う。そのような事で人を損耗させてはならぬ。」
高坂昌信「同意する。」
山県昌景「勿論そのような状況に追い込まれないようにするため、細心にも細心の注意を払わなければならない。そのためにも其方の力が重要となって来る。」
高坂昌信「感謝致す。」
山県昌景「お前がここまでの地位になるまでには多くの苦労を。ごめん。俺が言って良い立場では無いな。」
山県昌景は武田家譜代家老であった飯富虎昌の弟。
高坂昌信「いや構いません。」
山県昌景「俺には見せていないような面をして来た奴も居るのだろう?」
高坂昌信「敢えてここで名前は出しませんが。」
山県昌景「肝心な時に頼みにならない連中だった事も……。」
高坂昌信「否定はしない。」
山県昌景「でも今のお前の立場であれば、動くであろう?それに……。」
今の高坂昌信が困って来た。頼りにして来たら相手も喜ぶのでは無いのか?
高坂昌信「申し訳ない。」
山県昌景「わかってくれればそれで良い。皆が無事で良かった。ところで高坂。」
内藤昌豊「昨日から荷物を運んでばかりだよ……。」
何やらお疲れの様子。ただ……。
内藤昌豊「兵の運用はお前の得意なんだから。舵取りは頼むぞ。」
高坂昌信「わかった。申し訳ない。」
ここまで良い所の無い徳川隊は、一矢報いるべく無理攻めを承知で長篠城救援に向かった所。突如として現れたのが高坂と内藤の旗印。凡そ迎え撃つ態勢とは思われぬまま移動を試みる格好の獲物を見つけた徳川の部隊は彼らを目掛けて殺到。これに対し時々鉄砲を放ちながらのらりくらりとかわし、決め手を与えない高坂昌信と内藤昌豊。徳川の部隊が長篠城へ接岸せぬよう。北へ北へと移動を続けた高坂内藤隊と徳川の部隊に突如として現れたのが……馬場信春。
茶臼山に陣取っていた馬場信春は独り陣を構える高坂昌信を発見するや否や救援に向かうべく、つい今しがたまで織田勢が陣取っていた連吾川上流部を渡河。ちょうどそこにやって来たのが内藤高坂の部隊とそれを追って来た徳川の部隊。
徳川の横を衝く馬場の動きを見た内藤昌豊が反転。前と横からの反撃に立ち往生している徳川隊の別の側面に回ったのが高坂昌信率いる鉄砲隊。場所は連吾川上流。結果的に囮に引っ掛かる形になってしまった徳川隊は、残された来た道を戻るべく反転を試みたのでありましたが……。
武藤喜兵衛の報告を聞いた武田勝頼は、小山田信茂と穴山信君に長篠城の監視を依頼するや寒狭川を渡河。途中、有海の小幡信貞に別動隊の救援を指示。自らは徳川本隊の退路を断つべく連吾川上流目掛け兵を進めたのでありました。その結果、徳川の部隊は壊滅。這う這うの体で退却していったのでありました。
武田勝頼「疲れた……。十分である。それに長篠城の事もある。もう追うでない。」
内藤昌豊「こいつが無茶するからでありますよ。」
高坂昌信「申し訳無かった。」
馬場信春「いや肝心な事を伝えなかった私が悪かった。最悪の事態にならなかった事が何よりである。それに結果的には徳川を深入りさせる事に成功したのであるのだから。」
高坂昌信「申し訳ない。」
馬場信春「しかし何故救援を依頼する事が出来る長篠城や別動隊の方では無く、上流部に兵を動かしたのだ?」
高坂昌信「責任は最後まで取らなければ。の一心でありました。」
武田勝頼「少しは皆を信用してくれ。」
高坂昌信「申し訳御座いません。」
内藤昌豊「高坂。」
高坂昌信「どうした?」
内藤昌豊「そこに俺が居た事……忘れて無いよね?」
山県昌景率いる別動隊が大久保隊に勝利を収めたとの報告が齎された武田勝頼は医王寺の本陣へ帰還。しばらくして山県昌景も到着。武田勝頼に報告した後尋ねたのは勿論……。
山県昌景「わざと自分の手柄を放棄しようとしていたのか?」
高坂昌信「そんなわけ無いであろう。其方らにもしもの事があった際の後詰めとして兵を動かしたまでの事。」
山県昌景「もし途中何処かで苦境に立たされた時、殿では無くお前が来ていたら余計に浮足立つ所であったわ。」
高坂昌信「反省している。」
山県昌景「馬場から事情は聞いた。
『まさか高坂があれを攻めのために用いようとしているとは思っていなかった。』
と。」
高坂昌信「迷惑を掛けた。」
山県昌景「ただ一向宗の戦い方も今後の参考になるのは確かな事。特に防御に徹する。こちらから打って出ない時には効力を発揮する。それは確かな事。後はこの方式をどのようにして攻撃に活かしていくか……。」
高坂昌信「内藤にはしんがりを逃がすための最後の手段としてでしか用いる事はあり得ないと言われている。」
山県昌景「そうだよな……障壁の無い外いくさであれば、長槍や馬を用いた方が速いし手間も省ける。ただ……。」
高坂昌信「ただ?」
山県昌景「お前が考えた事を仕掛けて来る危険性がある事は認識しておかなければならない。特に(長篠城を見やりながら)孤立無援となった相手には注意して掛からなければならない。」
高坂昌信「そうだな。」
山県昌景「ただうちはやらないぞ。新たな禁止事項とするよう働き掛けを行う。そのような事で人を損耗させてはならぬ。」
高坂昌信「同意する。」
山県昌景「勿論そのような状況に追い込まれないようにするため、細心にも細心の注意を払わなければならない。そのためにも其方の力が重要となって来る。」
高坂昌信「感謝致す。」
山県昌景「お前がここまでの地位になるまでには多くの苦労を。ごめん。俺が言って良い立場では無いな。」
山県昌景は武田家譜代家老であった飯富虎昌の弟。
高坂昌信「いや構いません。」
山県昌景「俺には見せていないような面をして来た奴も居るのだろう?」
高坂昌信「敢えてここで名前は出しませんが。」
山県昌景「肝心な時に頼みにならない連中だった事も……。」
高坂昌信「否定はしない。」
山県昌景「でも今のお前の立場であれば、動くであろう?それに……。」
今の高坂昌信が困って来た。頼りにして来たら相手も喜ぶのでは無いのか?
高坂昌信「申し訳ない。」
山県昌景「わかってくれればそれで良い。皆が無事で良かった。ところで高坂。」
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