42 / 42
論功
第42話
しおりを挟む
武藤喜兵衛「となりますと感状になりますか?」
武田勝頼「拒絶の構えでは無かったが、あまり良い顔をしてはくれなかった。」
武藤喜兵衛「何故でありますか?」
武田勝頼「『それ(感状)が必要になるのは、私が武田を首になった時。もしくは武田が滅んだ時になりますので。』
と言って来た。」
感状が重視されるのは再仕官の時。
武田勝頼「『滅んだ家の者の中で他家が欲しがるのは、いくさ働きを期待する事が出来る者のみ。私のような事務方の代わりなど幾らでもいます。加えて私は殿の考えを実行に移す仕事。同僚からは煙たがれている存在にあります。先に仕官を果たすのは、いくさに長けた者であります。その者が私の事を良く言うわけがありません。殿を誑かしたのは奴です。滅ぼした元凶はあいつです。ぐらいに言われるのが関の山。そんな殿からいただいた感状等役に立つわけがありません。私に出す手間があるのでありましたら、他の者に渡して下さい。もしもの時、その者の助けになりますので。私は必要ありません。私は殿に殉じます。』
と……。」
武藤喜兵衛「私には出来ませんね。」
武田勝頼「……正直で宜しい。」
武藤喜兵衛「跡部様は嘘をついていると?」
武田勝頼「いや。それは無い。」
武藤喜兵衛「でも殿の厚意を全て無にしているのでありますよ。」
武田勝頼「1つだけ喜んで受け取ってくれたものがある。」
武藤喜兵衛「えっ!それは何でありますか?」
武田勝頼「銭。とりわけ喜んだのが純度の高い金だ。」
武藤喜兵衛「最も危険な人物なのではありませんか?」
武田勝頼「高坂もそこを心配していた。
『賄賂掴まされて、方針を違えてはしまわないか。』
と……。」
武田勝頼「『長坂についても同様。』
とも言っていた。そして彼らを心配していた。
『彼らは兵力も所領も少ない。しかし物事を決めるための術と伝手を持っている。加えて他国の者。それも主君級の者との通交が許されている。交渉をまとめるために必要不可欠である事に変わりは無い。ただそうであるが故に目先の利益を優先してしまう危険性も秘めている。』
と。」
武藤喜兵衛「確かに。」
武田勝頼「しかしこうも言っていた。
『殿(武田勝頼)への忠誠に問題はありません。たとえ殿がどのような苦境に立たされようとも、殿を見捨てる事はありません。しかし彼らだけでは殿を救う事は出来ません。自前の兵力が足りませんし、所領もありません。故に殿がしっかり彼らを導かなければなりません。』」
武田勝頼「拒絶の構えでは無かったが、あまり良い顔をしてはくれなかった。」
武藤喜兵衛「何故でありますか?」
武田勝頼「『それ(感状)が必要になるのは、私が武田を首になった時。もしくは武田が滅んだ時になりますので。』
と言って来た。」
感状が重視されるのは再仕官の時。
武田勝頼「『滅んだ家の者の中で他家が欲しがるのは、いくさ働きを期待する事が出来る者のみ。私のような事務方の代わりなど幾らでもいます。加えて私は殿の考えを実行に移す仕事。同僚からは煙たがれている存在にあります。先に仕官を果たすのは、いくさに長けた者であります。その者が私の事を良く言うわけがありません。殿を誑かしたのは奴です。滅ぼした元凶はあいつです。ぐらいに言われるのが関の山。そんな殿からいただいた感状等役に立つわけがありません。私に出す手間があるのでありましたら、他の者に渡して下さい。もしもの時、その者の助けになりますので。私は必要ありません。私は殿に殉じます。』
と……。」
武藤喜兵衛「私には出来ませんね。」
武田勝頼「……正直で宜しい。」
武藤喜兵衛「跡部様は嘘をついていると?」
武田勝頼「いや。それは無い。」
武藤喜兵衛「でも殿の厚意を全て無にしているのでありますよ。」
武田勝頼「1つだけ喜んで受け取ってくれたものがある。」
武藤喜兵衛「えっ!それは何でありますか?」
武田勝頼「銭。とりわけ喜んだのが純度の高い金だ。」
武藤喜兵衛「最も危険な人物なのではありませんか?」
武田勝頼「高坂もそこを心配していた。
『賄賂掴まされて、方針を違えてはしまわないか。』
と……。」
武田勝頼「『長坂についても同様。』
とも言っていた。そして彼らを心配していた。
『彼らは兵力も所領も少ない。しかし物事を決めるための術と伝手を持っている。加えて他国の者。それも主君級の者との通交が許されている。交渉をまとめるために必要不可欠である事に変わりは無い。ただそうであるが故に目先の利益を優先してしまう危険性も秘めている。』
と。」
武藤喜兵衛「確かに。」
武田勝頼「しかしこうも言っていた。
『殿(武田勝頼)への忠誠に問題はありません。たとえ殿がどのような苦境に立たされようとも、殿を見捨てる事はありません。しかし彼らだけでは殿を救う事は出来ません。自前の兵力が足りませんし、所領もありません。故に殿がしっかり彼らを導かなければなりません。』」
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる