旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?

俣彦

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抱き込み

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山県昌景「『信康を抱き込みます。』と返答して来ました。」

私(武田勝頼)「そのような事は可能なのか?」

山県昌景「今すぐは難しいでしょう。それに信康が初陣を飾ったのは昨年の事。信康と家臣との信頼関係が築かれるのはこれからであります。故にたとえ信康が決意したからと言って、即岡崎が反家康で染まる事はあり得ません。ただし。」

私(武田勝頼)「ただし?」

山県昌景「信康には危うさがあります。」

私(武田勝頼)「如何なる事だ?」

山県昌景「彼の行動であります。」

私(武田勝頼)「具体的には?」



 松平信康に関する素行として、

1、領内で行われた盆踊りの会場で、信康は領民を冗談交じりで弓矢を発射。その後、信康は「間者を処罰したまで。」と弁明。

1、狩りの最中に僧侶と会うと獲物が少なくなるとの因習がある中。信康が鷹狩を行った際、僧侶を見掛けてしまったためその僧侶を……。



山県昌景「信康の持つ特性である『気性の激しさ。』と言うものは、いくさの場においては必要不可欠な素養であります。ただその気性の激しさを周囲が頼もしく感じるのは、いくさの場だけであります。」

私(武田勝頼)「信康はその気性の激しさを日常でも……。」

山県昌景「はい。そのため岡崎の家臣から民に至るまで、信康に手を焼いているのが実情であります。」

私(武田勝頼)「でも信康は家康と仲違いしているわけでは無いのだろ?」

山県昌景「はい。」

私(武田勝頼)「では抱き込む事など不可能では無いのか?」

山県昌景「確かに信康の家康に対する忠誠心が揺らいでいるわけではありません。家康も信康を頼もしく思っています。しかし信康についている家臣はどう思っているでしょう?」

内藤昌豊「このままの信康を後継者にしてはならない。」

山県昌景「その通りであります。」

馬場信春「実際、諫言する者が岡崎の中にも居る。と言う事か?」

山県昌景「はい。石川に大久保。そして吉田の酒井等も信康を変えようと試みている模様であります。」

高坂昌信「しかし信康は改めようとしない?」

山県昌景「はい。とうとう全ての仕事を投げ打って出家した者も現れる始末。」

内藤昌豊「それでは信康は城中で孤立している?」

山県昌景「はい。」

馬場信春「しかしその情報は浜松に居る家康の下に届けられてはいないのか?それを家康が知れば行動を改めるよう信康を指導するであろうし、信康も家康の話なら耳を傾けるであろう。」

山県昌景「いえ。そうはなっていません。」

私(武田勝頼)「何故だ?」

山県昌景「家康も信康同様、大岡弥四郎の言葉を信じてしまっているからであります。大岡は自分の言葉で以て信康を制御出来るよう行動している所であります。」
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