怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0

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前章

まずは自己紹介をしておこう

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源が扉の中に足を踏み入れると、そこは狭い空間となっていて、正面にもう一つ扉があった。
「一旦そこで立ち止まってくれ」
 東雲は音響壁越しにそう言った。源が言われたままに部屋の真ん中で立ち止まると、微かな電子音がした。
「今のは金属探知だ。入室前の決まりだから覚えておくように」
 この電子音は金属探知機の音らしい。恐らく盗聴器や隠し武器を警戒してのことだろう。
「チェックが終わった。今度こそ入室してくれ」
 源はその声を聞いて目の前の扉に手のひらで触れた。すると、ガコっという音とともに扉が後ろにスライドした。源はそのまま扉の取っ手を掴み、重い扉を押し開けた。
「失礼します…」
 そう言って入った室内には、東雲を含めて5人班員がいた。東雲以外、部屋の横に整列している。
「へえ、この人が」
 と、そのうちの一人が言った。細身で色白で、学者の様に見えた。源を見る目はどこか哀れみや蔑みを含んで見えた。
「おいヤブ医者、初めての新入りだぞ?初っ端からカマかけてどうする」
 横に立っていた男が小声で注意している。生憎、すべて丸聞こえだ。
「ひどいな、コレは元々だろ?」
「それを抑えろって言ってるんだよ」
 注意した方はため息をついた。この二人の関係性が若干気になるところだ。更にその横には二人女性が立っていた。一人はどうやら立ったまま眠っているらしく、頭をうなだれている。そしてもう一人の方が肘で小突いて起こそうとしていた。中でも寝ていないほうは源と同世代に見えた。かなり整った顔をしていて、実用性重視で短く束ねたポニーテールと、キリっとした目元が実直さを醸し出していた。
 源は彼らを横目で見ながら東雲が立っている机の前に立った。恐らく執務机であろうが、とても綺麗に物が整理整頓されていて、全く使用感を感じさせなかった。
「よく来てくれた、源王城。今日からお前は正式にここ怪獣特殊処理班の一員だ。まずは自己紹介をしておこう。」
 東雲はそう言うと整列していた班員たちに目で合図した。源はそれに合わせて体の向きを変えた。まずは一番端の、小声で注意していた男からだ。男は前に進み出ると直立不動の姿勢をとった。源はそれを見て思わず息をのんだ。あまりにも動作が洗練されていたからだ。一切の筋肉を無駄にしない簡潔な動きはそれでいて一切隙を感じさせなかった。恐らく相当の人物なのだろう。今の米海兵隊でも通用しそうだ。
「副班長、赤本明石。班全体の護衛、監視を担当している。」
 赤本はそこで一呼吸置いた。
「もしその能力にかまけて班の足を引っ張るようだったら俺が許さない。くれぐれも日頃の訓練を怠らぬようにしろ」
 そう言って源のことを睨んだ。源は一瞬ひるんだが、表情は崩さなかった。
(ここでたじろぐようであれば、僕は信用してもらえないだろう)
 そう思って耐えた。
「じゃあ次は僕だ。僕は諏訪部蒼志、獣医兼生物学者で、ここだと生体解析を担当している。さっきのやくざみたいな副班長と違って、心優しい非戦闘員だから是非よろしく」
 後半の部分は赤本に睨みつけられていたが、諏訪部は全く動じていなかった。いつもあんな調子なのだろうか。
「私は白石燈、前の二人と違って一般の公務員上がりです。浄化を担当しています」
(まさかあの人も浄化を担当してるとは)
 源は若干驚いた。
(浄化は確か僕でも耐えられないほどひどい吐き気と倦怠感があったはずだ。体調は大丈夫なのだろうか)
「ちょっと、起きてください!」
 不意にそう囁く声が聞こえた。なんと今になっても白石の隣の女性は眠っていたのだ。
「ん、ああ。えっと、緑屋広葉です。解剖医です。経路確保を担当してます。」
 緑屋はそう言ってまた寝始めた。源はなぜそこまでして眠るのか気になってきた。
「最後に、以前軽く紹介したが、ここ怪獣特殊処理班班長の東雲侑だ。全体の統率を担当している。この通り普通では無い連中だが腕は一流だ。次の怪獣駆除までにこの班員たちに追いつけるよう励んでくれ」
「は、源王城、鍛錬に励みます」
 源は東雲に敬礼した。赤本の敬礼と比べれば子供の真似事のような敬礼だった。
「うむ、それで何か質問はあるか?」
 この時を待っていた。源は昨日から気になっていたことを早速聞いた。
「それでは一つだけ、ここ特殊処理班の具体的な業務内容を知りたいのですが…」
「そういえばまだ詳しく説明していなかったな、ではこれを見てくれ」
 東雲はそう言って机からウィンドウを出現させると、そこにホログラム映像を映し出した。
「我々の業務は、一重に怪獣のコアの完全な破壊だ。このように駆除された怪獣のコアを探し当て、そこの近くの臓器に侵入、浄化担当が直接コアに触れて浄化、つまり破壊する。もし仮にコアを完全に破壊しなければ、その中に宿る精神体が新たな素体を得て復活してしまう」
 映し出された映像には、灰色のコアに触れる班員と、次第に灰色から透明に変わるコアの様子が確認できた。何やら皆白い制服を着て作業に当たっていた。
「着ている服が気になるか?これは特殊処理班のみが着用できる専用の防護服だ。最新の強化繊維と機械類によって迅速に怪獣の体内を移動できる。もちろんお前にも支給されている。服が白いのは、当然知っていると思うが、怪獣の血が赤ではなく黒だからだ。怪獣の血は人間にとって毒となるから、こうしてその血が付着した場所を分かりやすくしている」
 そう言って東雲は服の全体が映った写真を見せた。どこかナチスドイツの兵士服を彷彿とさせる制服だった。そして皆ガスマスクとゴーグルをつけている。怪獣の死亡によって発生した有毒ガスから身を守るためだろう。そしてゴーグルは怪獣の黒い血液による視界不良を改善させるものに見えた。ヘルメットにも大きなヘッドライトがついている。
「そして、我々の業務はこれだけではない。」
 東雲はスライドをすべて消して、新たに一枚の写真を映し出した。昨日見た怪人と呼ばれていた人たちの写真だ。
「ごくまれにだがこのように怪人も現れる。そう言った場合においても浄化を行う」
それは昨日聞いた。問題は…
「ですが、この人たちにコアは」
「コアはある」
「そもそもコアというのは、ベースとなった生物の脳が変形してできるもので、それは人間も同じだ。」
 今度は東雲はスライドを出さなかった。余りにもその光景が凄惨だったのだろう。
「最後に言っておく。怪獣は紛れもなく我々の、人類の敵だ。怪人もそうだ。無意味な慈悲は持つな。お前の判断一つで日本が滅びる可能性もある。自分の職務の重みをよく考えて行動しろ。」
 東雲班長の言葉は重く、源は自分の認識を改めざるを得ないことに気づいたのだった。
「ではいったん解散だ。赤本、部屋を案内してやれ」
「はっ」
 東雲はそのまま椅子に腰かけた。それと入れ替わりに赤本がこちらに近づいてきた。
「ついてこい新入り、お前のロッカーまでは案内してやる」
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