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クラスの女神の恋愛相談
女神は初恋の執心中
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オレンジ色の光が窓から射し込む部室内。
平行線のようになっている陽の光は、舞っている埃を照らしていた。
掃除しないと、なんて思いつつ、とりあえず私は、向かい合わせにした机の上の埃を払いのけ、天崎さんを椅子に座らせた。
んで。私も、天崎さんの正面へと腰を下ろす。
これが、相談をする時のいつもの形。
ここから私が、相談を受けるっていうのが毎度の流れだけど……。
「と、とりあえず。相談部へようこそ」
と言っても聞こえるはずもなく。
天崎さんは、今ほどのホワイトボードにペンを走らせていた。
多分、筆談をしようってことなのだろうけど。
補聴器をつけているようだけど、一体どのくらい聞こえるのかも分からない。
けれど逆に言えば、補聴器を付けているから完全に聞こえないというわけではないのだろう。
私が持っている天崎さんの情報は、容姿端麗、頭脳明晰の女神様。
という情報だけだ。
そもそも彼女は、ここに何をしに来たのだろう。
考えてみれば、彼女のついては未知の事ばっかりだった。
「……」
と思案していたら。
天崎さんはペンの動きを止め。
ペンをキャップにカチッとしまい、ボードを机の上に垂直に立てた。
『ここは、恋愛の相談をする場所なんですよね!』
そのボードに書かれた文字は、彼女のクールな印象とは正反対の、活き活きとした女の子らしい文字だった。
角は丸みを帯びていて、文末にはびっくりマークを付けてる。
けれど、真顔である。
まるで人形の様だ。ちょっと怖い。
どこからその情報を仕入れたのか全く分からないが、
とりあえず頷く。
声を出しても聞こえないだろうし。
私の頷きを返す様に、天崎さんは大きく首を縦に振った。
と、次の瞬間には、書かれたその文字をボード用イレイザーでささっと消していき、手慣れた手つきで、またまたささっと何かを書いた。
『恋愛相談をしてもいいですか? 私の好きな人の』
ボードを目で追って、その文字を見て。
私はその見開いた目のまま、彼女の顔に目線を移した。
見れば、彼女は顔を若干の赤に染めていた。
今にも、このボードを隠したそうにして、もじもじしている。
「わぁ……まじか」
女神様も乙女だなと、そう思ったけど。
それと同時に、女神様が好きになる人がどんな人なのかも気になった。
私は、首をうんうんと縦に振って、続きを促す。
……これで伝わるかな。と心配しながら。
彼女は再びペンを手に取る。
どうやら伝わったらしい。
そして、どこか恥ずかしそうにしながらボードに書き込み、書き終えた後に少しの間を空け、書かれたボードをゆっくりと私に向けた。
『私の、好きな人の話をします』
それだけ見せて、数秒でさっと隠して、また次の文章を書き始めた。
『中学から憧れの存在でした』
『陸上部の大会で一位を取ったりしてて、かっこよかった』
女神様は、意外にもスポーツできる系の人が好きなのだろうか。
相談相手の好きな人が男、っていう恋愛相談を受けるのは、何気初めてかもしれない。
今までの相談は、この女子校内で完結しているものだったから。
『だけど』
『ずっと思い続けているうちに、胸がきゅーっとしまるような』
『そんな感覚に、襲われるようになって』
『その人のことを考えたら、なぜだか幸せな気持ちになるんです』
『けど。この気持ちが「恋」なのだと知りました』
書いては消し。書いては消しを繰り返している彼女の文字を、私は黙って見つめている。
『私は耳が悪いですから、中学はずっと特別教室に通っていて』
『高校は通信制のところに行く予定でした』
『でも。その人と一緒になりたくて』
『一緒の高校に行きたくて』
『その人を近くに感じたくて』
『その人と、同じ学校に行くことを決めたんです』
『職員室に忍び込んで、その人の志望校の書かれた紙を見て』
『その第一志望がこの学校だったんです』
……さらっと見せられたけど、ヤバイことやっているような。
『けれど。耳が悪いと授業に参加できないと、親や先生からは反対され』
『だから、毎日毎日、勉強を頑張って。ついに認められました』
『高校の勉強は、ほとんど完璧になりました』
『今は高校も、その人と同じです』
ここで気づく。
その相手は女子だということに。
『そして。高二の今、同じクラスになれました』
『ずっとずっと。いつこの想いを伝えるか悩んでいました』
『やっと、決心がつきました』
『今も。ずっと、見ています』
『私の席から、眺めています』
『伊奈さん』
『古賀伊奈さん』
『私は、あなたのことが好きです』
「え……」
……待って。
それ、恋愛相談じゃなくて、告白。
平行線のようになっている陽の光は、舞っている埃を照らしていた。
掃除しないと、なんて思いつつ、とりあえず私は、向かい合わせにした机の上の埃を払いのけ、天崎さんを椅子に座らせた。
んで。私も、天崎さんの正面へと腰を下ろす。
これが、相談をする時のいつもの形。
ここから私が、相談を受けるっていうのが毎度の流れだけど……。
「と、とりあえず。相談部へようこそ」
と言っても聞こえるはずもなく。
天崎さんは、今ほどのホワイトボードにペンを走らせていた。
多分、筆談をしようってことなのだろうけど。
補聴器をつけているようだけど、一体どのくらい聞こえるのかも分からない。
けれど逆に言えば、補聴器を付けているから完全に聞こえないというわけではないのだろう。
私が持っている天崎さんの情報は、容姿端麗、頭脳明晰の女神様。
という情報だけだ。
そもそも彼女は、ここに何をしに来たのだろう。
考えてみれば、彼女のついては未知の事ばっかりだった。
「……」
と思案していたら。
天崎さんはペンの動きを止め。
ペンをキャップにカチッとしまい、ボードを机の上に垂直に立てた。
『ここは、恋愛の相談をする場所なんですよね!』
そのボードに書かれた文字は、彼女のクールな印象とは正反対の、活き活きとした女の子らしい文字だった。
角は丸みを帯びていて、文末にはびっくりマークを付けてる。
けれど、真顔である。
まるで人形の様だ。ちょっと怖い。
どこからその情報を仕入れたのか全く分からないが、
とりあえず頷く。
声を出しても聞こえないだろうし。
私の頷きを返す様に、天崎さんは大きく首を縦に振った。
と、次の瞬間には、書かれたその文字をボード用イレイザーでささっと消していき、手慣れた手つきで、またまたささっと何かを書いた。
『恋愛相談をしてもいいですか? 私の好きな人の』
ボードを目で追って、その文字を見て。
私はその見開いた目のまま、彼女の顔に目線を移した。
見れば、彼女は顔を若干の赤に染めていた。
今にも、このボードを隠したそうにして、もじもじしている。
「わぁ……まじか」
女神様も乙女だなと、そう思ったけど。
それと同時に、女神様が好きになる人がどんな人なのかも気になった。
私は、首をうんうんと縦に振って、続きを促す。
……これで伝わるかな。と心配しながら。
彼女は再びペンを手に取る。
どうやら伝わったらしい。
そして、どこか恥ずかしそうにしながらボードに書き込み、書き終えた後に少しの間を空け、書かれたボードをゆっくりと私に向けた。
『私の、好きな人の話をします』
それだけ見せて、数秒でさっと隠して、また次の文章を書き始めた。
『中学から憧れの存在でした』
『陸上部の大会で一位を取ったりしてて、かっこよかった』
女神様は、意外にもスポーツできる系の人が好きなのだろうか。
相談相手の好きな人が男、っていう恋愛相談を受けるのは、何気初めてかもしれない。
今までの相談は、この女子校内で完結しているものだったから。
『だけど』
『ずっと思い続けているうちに、胸がきゅーっとしまるような』
『そんな感覚に、襲われるようになって』
『その人のことを考えたら、なぜだか幸せな気持ちになるんです』
『けど。この気持ちが「恋」なのだと知りました』
書いては消し。書いては消しを繰り返している彼女の文字を、私は黙って見つめている。
『私は耳が悪いですから、中学はずっと特別教室に通っていて』
『高校は通信制のところに行く予定でした』
『でも。その人と一緒になりたくて』
『一緒の高校に行きたくて』
『その人を近くに感じたくて』
『その人と、同じ学校に行くことを決めたんです』
『職員室に忍び込んで、その人の志望校の書かれた紙を見て』
『その第一志望がこの学校だったんです』
……さらっと見せられたけど、ヤバイことやっているような。
『けれど。耳が悪いと授業に参加できないと、親や先生からは反対され』
『だから、毎日毎日、勉強を頑張って。ついに認められました』
『高校の勉強は、ほとんど完璧になりました』
『今は高校も、その人と同じです』
ここで気づく。
その相手は女子だということに。
『そして。高二の今、同じクラスになれました』
『ずっとずっと。いつこの想いを伝えるか悩んでいました』
『やっと、決心がつきました』
『今も。ずっと、見ています』
『私の席から、眺めています』
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「え……」
……待って。
それ、恋愛相談じゃなくて、告白。
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