女神と共に、相談を!

沢谷 暖日

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仲良し少女の恋愛相談

部室の先客

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 放課後。
 いよいよ、心音と話せると、活き活きした気持ちになる。
 机の中の教材をいそいそとカバンにしまって、席を立つ。

 心音の席へと歩みを進め、私を一瞥した心音も、立ち上がりカバンを持つ。
 察しがいいなと思いながら、少し声量を大きく呼びかける。

「よし。じゃあ、行こっか」

 周りから若干浴びせられる視線を気にしながらも、私は心音の手を取り、教室を後にした。

 クラスの女神である心音に好意を抱いてる人は、結構いる。
 ので、私がこんな風に手をとってるのを、周りは嫌な気分で見るかもしれない。
 でも、いいよね。
 だって、心音が好きなのは私なのだから。


※※※※※※


 四階への階段は中々に長い。
 高二の教室は二階に位置しているけれど、部室の鍵を取りに、まずは一階の職員室にいかないといけない。
 私にとってこの階段は、毎日の憂鬱と言っても過言じゃ無い。
 心音と手を繋いでいる今、嬉しさと辛さが混同している複雑な心境。
 だが、あと数段でこの長い階段も終わりを迎えるので。
 ラストスパートで、少し駆け足で登りきった。

「疲れた~~」

 ため息と共に漏れ出る私の大袈裟な声。
 けれど。
 一方の心音は相変わらずの澄まし顔。
 試しにほっぺたをツンツンしてみたけど、表情一つ崩さない。
 だから。今、心音が何を考えているのか全くもって分からない。
 筆談しようにも、見るに今日はボードを持っていないみたいだし。
 廊下で堂々と、スマホを使うわけにもいかない。
 そんなにずっと真顔だと、私のことちゃんと好きなのかなって、謎の不安に駆られもする。
 だけど。部室に入れば、スマホ何かしら送ってくれるだろうし。
 もう少しの辛抱だ、と私は心音の手を引きながら部室のドアの鍵を──て。
 鍵を挿し、回したが。もう鍵はあいていた。

「……?」

 疑問を抱きつつもいつもの様に、部室に足を入れようと──。
 ……が。
 私は足を止める。
 なぜかって。

 部室内の違和感。
 見れば、そこには人がいて。
 その正体が、私には直ぐに分かる。

 久しく見ていなかった。
 窓に寄りかかり、黄昏ている一人の少女。

「あ! 伊奈ちゃん先輩!」

 嬉しそうにこちらを振り返り、彼女のボブが軽く揺れる。
 窓から入る日差しに照らされた、赤を帯びた緑の黒髪。

美結みゆちゃん! 今日はどうしたの?」

 白河しらかわ美結みゆ
 ご近所さんで幼馴染。
 加えて校内で唯一の、私より一つ下の
 その人が、嬉々とした表情で私を見る。

「恋愛相談! 前回の続き! ……やってもいいよね?」
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