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心音と共に、
待ちかねたキス
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放課後だ。
例によって、授業はあまり聞いていない。
頬杖をついて、窓の外と心音を見ていたら、いつの間にか終わっていた。
なんて素晴らしいことなのだろうか。
今日も部室に向かう。
今日は。心音とキスをするからだ。
そういう理由がなくても、一応部室には向かう予定だったのだけれど。
そういう明確すぎる理由が、今日はある。
何日ぶりかな。二日か、三日?
考えるのも意味ない気がして、私は席を立ち上がった。
「……心音」
荒れ狂う心と真逆に、私のボソボソという声。
さすがに補聴器はそれを拾わないと思ったが、普通に心音も立ち上がる。
こくりと頷くのを確認して、私は心音の手を取る。
いつもよりも、なんだか手汗の量が多い気がした。私の手汗がだ。
※
「ただいま。我が部室」
正確には学校の部室。
その場所へと足を踏み入れ、カバンをそそくさと端っこに置きに行く。
カバンからスマホを取り出して、また、心音もスマホを取り出す。
なんだか隠れてスマホを使っているこの状況は、なんだか不良らしい。
と言うよりスマホ中毒者?
少なくとも、ライン中毒になりつつあるのは事実だった。
『さてと。心音!』
『はい!』
呼びかけると心音から元気の良い返事が返ってくる。ラインだけど。
横を見れば、やっぱり真顔です。
けど。昨日は一応、笑顔を見せてくれたんだよなぁ。と思い返す。
私が美結ちゃんの家へと向かう時だ。
あの時は割と非常事態でそんなに意識していなかったけど。
心音の笑顔というものは非常に貴重なものだ。
もうちょっと頭に焼き付けておけばよかったなぁと。そう思う。
ダジャレとか言えば笑ってくれるのかな……。いや、笑うわけないな。
と、考えながら、私は心音へと送る文面も同時に考える。
『キスをいたしましょう!』
考えたって、これしかなかった。
美結ちゃんのことが頭をよぎったが、でも、私の相手は心音だ。
今、見るべきは心音。
『出た。今日は積極的なタイプの伊奈さんなんですね』
『そうですがなにかー!』
というか積極的なタイプの伊奈さんってなに。
ほのおタイプとか、みずタイプの私もいるのだろうか。
いません。
『そんなにキスがしたいんですか?』
『い、いや。これはですね。心音さんが、私とキスをしたいって言ったからですね……』
『あ。そうなんですね。そういう考えならしませんけど』
『うっそーーーー! 私がしたいんですーー!』
『へー。伊奈さんが。私と。キスを。したいって思っているんですねー。へー』
助けて。
これはなんて返せばいいのだろうか。
前にキスした時も、こういうやりとりがあった気がしなくもない。
ともかく。手の動くままに返信しよう。
『そうですがっ! じゃあ、心音さんはどうなんですかー?』
『したいです』
「うっ」
その即答に思わず口から漏れる。
私の心にこうかはばつぐん。
既に早かった心拍数が加速していっている感じがする。
『しないんですか? あと、十秒以内にしてくれなかったらしませんけど』
『します‼︎』
急かされて、私はスマホを速攻ポケットに突っ込んだ。
心音もいつの間にやらスマホをしまったらしく、私の方を向いていた。
キスを欲しがっている顔には見えなかった。
これじゃ、こんなに顔が熱くなっている私がバカみたいだけど。
それでも、私は、心音との距離を縮める。
部屋は少し暗い。
外は雨で、この部屋の電気も付けるのを忘れていたから。
心音と私の背丈は近い。だからしやすい。
今、何秒経ったかな。もう十秒は超えている。
いきなりすぎるキスで、私も若干困惑中だ。
まぁ。私からしようって言ったんだけど……。
「じゃ、じゃあ……」
心音の頬に手を当てて。
一本じゃ足りないので、両頬に。
耳に入る雨音と私の心音を意識しながら。
私は、ゆっくり。ゆっくりと。口を近づける。
心音は目を閉じた。
私は目を開けたまま。
外さないように、その口へと──。
「んぁっ……」
口を合わせた途端、心音のエロい声が耳を刺激した。
刹那、私の下半身が微かに震える。
その震えの正体を理解できない。
私は両頬を押さえたまま、少しだけ離れる。
舌で、私の乾いた唇に水分を含ませて、また心音の唇に戻る。
本能的にしたその行動で、心音の唇との密着度が上がった気がした。
けど。何かが物足りない。何がだろう。
キスをしているのに。もっともっとって。
私の中の何かが、私を掻き立てるのだ。
私は、心音をもっと引き寄せた。
こんなことをしていいのかと悩んだ。
けど、止まれずに。私は心音の口内に、舌を──。
これは流石にまずいと思ったけど、心音は。私に、舌を絡めてきた。
歯と歯も触れ合った。変な感触だ。
心音の手が、私の両腕を掴む。
「んっ……。はっ……ぁ」
苦しそうに声を漏らしている。
やっばい。ちょーかわいい。
例によって、授業はあまり聞いていない。
頬杖をついて、窓の外と心音を見ていたら、いつの間にか終わっていた。
なんて素晴らしいことなのだろうか。
今日も部室に向かう。
今日は。心音とキスをするからだ。
そういう理由がなくても、一応部室には向かう予定だったのだけれど。
そういう明確すぎる理由が、今日はある。
何日ぶりかな。二日か、三日?
考えるのも意味ない気がして、私は席を立ち上がった。
「……心音」
荒れ狂う心と真逆に、私のボソボソという声。
さすがに補聴器はそれを拾わないと思ったが、普通に心音も立ち上がる。
こくりと頷くのを確認して、私は心音の手を取る。
いつもよりも、なんだか手汗の量が多い気がした。私の手汗がだ。
※
「ただいま。我が部室」
正確には学校の部室。
その場所へと足を踏み入れ、カバンをそそくさと端っこに置きに行く。
カバンからスマホを取り出して、また、心音もスマホを取り出す。
なんだか隠れてスマホを使っているこの状況は、なんだか不良らしい。
と言うよりスマホ中毒者?
少なくとも、ライン中毒になりつつあるのは事実だった。
『さてと。心音!』
『はい!』
呼びかけると心音から元気の良い返事が返ってくる。ラインだけど。
横を見れば、やっぱり真顔です。
けど。昨日は一応、笑顔を見せてくれたんだよなぁ。と思い返す。
私が美結ちゃんの家へと向かう時だ。
あの時は割と非常事態でそんなに意識していなかったけど。
心音の笑顔というものは非常に貴重なものだ。
もうちょっと頭に焼き付けておけばよかったなぁと。そう思う。
ダジャレとか言えば笑ってくれるのかな……。いや、笑うわけないな。
と、考えながら、私は心音へと送る文面も同時に考える。
『キスをいたしましょう!』
考えたって、これしかなかった。
美結ちゃんのことが頭をよぎったが、でも、私の相手は心音だ。
今、見るべきは心音。
『出た。今日は積極的なタイプの伊奈さんなんですね』
『そうですがなにかー!』
というか積極的なタイプの伊奈さんってなに。
ほのおタイプとか、みずタイプの私もいるのだろうか。
いません。
『そんなにキスがしたいんですか?』
『い、いや。これはですね。心音さんが、私とキスをしたいって言ったからですね……』
『あ。そうなんですね。そういう考えならしませんけど』
『うっそーーーー! 私がしたいんですーー!』
『へー。伊奈さんが。私と。キスを。したいって思っているんですねー。へー』
助けて。
これはなんて返せばいいのだろうか。
前にキスした時も、こういうやりとりがあった気がしなくもない。
ともかく。手の動くままに返信しよう。
『そうですがっ! じゃあ、心音さんはどうなんですかー?』
『したいです』
「うっ」
その即答に思わず口から漏れる。
私の心にこうかはばつぐん。
既に早かった心拍数が加速していっている感じがする。
『しないんですか? あと、十秒以内にしてくれなかったらしませんけど』
『します‼︎』
急かされて、私はスマホを速攻ポケットに突っ込んだ。
心音もいつの間にやらスマホをしまったらしく、私の方を向いていた。
キスを欲しがっている顔には見えなかった。
これじゃ、こんなに顔が熱くなっている私がバカみたいだけど。
それでも、私は、心音との距離を縮める。
部屋は少し暗い。
外は雨で、この部屋の電気も付けるのを忘れていたから。
心音と私の背丈は近い。だからしやすい。
今、何秒経ったかな。もう十秒は超えている。
いきなりすぎるキスで、私も若干困惑中だ。
まぁ。私からしようって言ったんだけど……。
「じゃ、じゃあ……」
心音の頬に手を当てて。
一本じゃ足りないので、両頬に。
耳に入る雨音と私の心音を意識しながら。
私は、ゆっくり。ゆっくりと。口を近づける。
心音は目を閉じた。
私は目を開けたまま。
外さないように、その口へと──。
「んぁっ……」
口を合わせた途端、心音のエロい声が耳を刺激した。
刹那、私の下半身が微かに震える。
その震えの正体を理解できない。
私は両頬を押さえたまま、少しだけ離れる。
舌で、私の乾いた唇に水分を含ませて、また心音の唇に戻る。
本能的にしたその行動で、心音の唇との密着度が上がった気がした。
けど。何かが物足りない。何がだろう。
キスをしているのに。もっともっとって。
私の中の何かが、私を掻き立てるのだ。
私は、心音をもっと引き寄せた。
こんなことをしていいのかと悩んだ。
けど、止まれずに。私は心音の口内に、舌を──。
これは流石にまずいと思ったけど、心音は。私に、舌を絡めてきた。
歯と歯も触れ合った。変な感触だ。
心音の手が、私の両腕を掴む。
「んっ……。はっ……ぁ」
苦しそうに声を漏らしている。
やっばい。ちょーかわいい。
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